【解説】「暑さ負債」に注意 “弱い部分”に症状 免疫力の低下…秋は食中毒も増加
もう9月に入ろうとしていますが、厳しい残暑に全く終わりが見えません。記録的な暑さが続いていることにより、9月以降も体には“暑さ負債”と呼ばれるものがたまっているそうです。
●体にたまった“暑さ負債”
●残暑で増える食中毒
以上のポイントを中心に詳しく解説します。
8月31日は新潟・新津で39.4℃、秋田・横手市で39.2℃と観測史上最高の40℃に迫る危険な暑さとなりました。普段はお盆が終わると暑さも収まってくる年が多いですが、今年はそうはいかないようです。
東京都心では8月、全ての日で最高気温が30℃以上となりました。8月が全て真夏日というのは、「観測史上初」ということです。9月に入っても1週間は35℃前後の季節外れの暑さが続く見込みです。
9月1日も30℃以上になると58日連続の真夏日ということになり、連続記録をさらに更新することになります。とにかく、9月も記録的な暑さが続くということです。
気象庁は、今年の9月と10月は全国的に気温が高い日が多く、残暑が厳しくなる見通しで、引き続き熱中症に注意が必要と呼びかけています。
この残暑が続くと体に悪影響が出てくるといいます。いとう王子神谷内科外科クリニックの伊藤博道院長に聞きました。
8月下旬から9月1週目、まさに今の時期はいわゆる“暑さ負債”とされるものがたまっている時期だというのです。「負債」は経済でよく使われますが、企業にとっては借金が増えていく厳しい状況です。つまり、猛暑がこれだけ続いているため、体の中にストレスや疲れなど、体に悪いものがたまってしまった状態のことを指す言葉です。
暑さ負債がたまると「頭痛がひどくなる」「めまい」「吐き気・嘔吐」「手足のしびれ」「咳が止まらない」など、特に各自の弱い部分に症状が出て、受診をする人が増えているそうです。
この暑さ負債がたまると免疫力が低下するため、新型コロナウイルスなどの感染症にもかかりやすくなるといいます。
この時期に暑さにより免疫が落ちてしまうことで気をつけたいのが食中毒です。
去年1年間の食中毒の発生件数を月別に見ると、梅雨時の6月に増えて、真夏にかけやや減って、今の時期から10月にむけてどんどん増えていきます。暑い時期がメインだと思っている人には、意外な結果かもしれません。
秋は、サンマやサバ、カツオ、ブリなど旬を迎えるおいしい魚も多いです。食べる機会が増える中で、きちんと管理されていない魚を生で食べた時などに、寄生虫のアニサキスで食中毒になってしまうケースや、キノコがおいしい季節なので山で採集したものなど毒キノコで食中毒になるケースも増えています。
今年はすでに、食中毒による死者も出てしまいました。
和歌山県は8月30日、白浜町にある飲食店が提供した弁当を食べた32人が食中毒の症状を訴え、80代の男性が死亡したことを発表しました。弁当は8月19日と20日に提供されたもので、症状が出た7人から「サルモネラ属菌」が検出されたということです。
亡くなった男性は、20日に購入した弁当を自宅で食べ、2日後に下痢などの症状を発症。救急搬送されましたが、26日に亡くなったということです。
また、広島・廿日市市の旅館でも26日に宿泊し、旅館の料理を食べた8人が腹痛や下痢の症状を訴えていたことがわかりました。患者から細菌の「腸炎ビブリオ」が検出されたことから、保健所は食中毒と判断しました。重症者はいないということです。
こうした食中毒を予防するためには、生の卵、肉、魚介類などに触ったらよく手を洗うこと、加熱が必要な食品は中心まで十分に加熱することなどが有効だといいます。
対策としては、秋で涼しくなったから安心と思わずに、出先に持っていくこともある総菜や弁当などは1度加熱してあっても、食べる前にもう一度温めるといったことを実施してほしいといいます。
伊藤院長は、たまってしまった暑さ負債を解消するには、ゆっくりとした生活リズムにして、十分な睡眠をとり栄養の質を高める。そして今の時期、日々の忙しい時間に1度ブレーキをかけてみることもオススメと話していました。
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9月に入ると、あっという間に年末が見えてきます。忙しい秋を元気に乗り切るためにも、疲れやストレスをためない工夫をしたいです。
(2023年8月31日午後4時半ごろ放送 news every. 「知りたいッ!」より)