【解説】秋の魚と食中毒 実は「10月が最多」アニサキス被害 煮ても焼いても食べられない“原因物質”も…
秋の味覚が楽しみな季節になりましたが、秋に増える魚の食中毒があります。
・秋もアニサキス
・旬のサンマに注意
・防ぐには
以上のポイントを中心に詳しく解説します。
秋といえば、サンマやサケ、サバ、カツオ、ブリなどおいしい魚がたくさんあります。ただ、一歩間違えてしまうと、食中毒になるおそれがあります。
今月、群馬では、30代女性が食中毒になりました。原因は、前日に訪れた館林市内の寿司店での食事でした。
女性はこの寿司店でカンパチ、カツオ、アジ、スズキ、タイなどを食べており、こうした魚についていた寄生虫「アニサキス」による食中毒だったということです。
アニサキスの幼虫は長さ2~3センチで、この幼虫が寄生している魚介類を生で食べてしまうと胃や腸の壁に入り込んでしまいます。そうなると、激しい腹痛、嘔吐などの症状が出ます。群馬の女性も腹痛で医療機関を受診しましたが、入院はせずに済みました。
このアニサキス食中毒、実は今の時期に最も注意が必要なのです。
厚生労働省によると、アニサキス食中毒は去年までの3年間の累計でみると、10月が最多となっています。なぜなのでしょうか…。アニサキスの幼虫は、サンマ、サバ、アジ、カツオなどに寄生していますが、こうした魚介類が秋に旬を迎え食べる人が増えることも理由としてあるということです。
東京都健康安全研究センター・微生物部病原細菌研究科の鈴木淳科長は10月に多い理由について、「年にもよるが、サンマの『生食』でアニサキスによる食中毒が増加するためと思われる」と分析しています。確かに近年は輸送手段が発達したことで、水揚げされた場所から離れた東京などでもサンマの刺身を食べることができるようになりました。
アニサキスによる食中毒を防ぐために、次のような対策があります。
・鮮度
新鮮な魚を選び、丸ごと1匹購入した場合はすぐに内臓を取り除きます。内臓を生で食べないようにしてください。
・冷凍
-20℃で24時間以上冷凍します。
・加熱
中心温度60℃で1分以上加熱することが必要だといいます。生焼けにならないように、中心部までしっかり火を通すことが大事です。
また、酢や醤油・わさびなどでアニサキスの幼虫は死にません。例えば、シメサバでのアニサキス食中毒の発生事例も多く、国産水産物流通促進センターはサバを酢で締める前か後に冷凍することを推奨しています。
もちろん、幼虫が見えたら取り除くことも大事です。例えばサバの開きでは黄色の丸のところの、内臓部分のくるっと丸くなっているところや筋肉部分の黒くなっているところにアニサキスの幼虫がついています。素人が見つけるのはなかなか難しいですが、厚労省は「見つけたらピンセットなどで取り除いて」と呼びかけています。
一方で、加熱しても防げない食中毒もあります。
長野県では、ブリの照り焼きで食中毒が発生しました。しかも、十分に加熱しても防ぎようのないものでした。
今月7日、長野・上田市の保育園で、給食のブリの照り焼きを食べた76人中5人の園児に発疹などの症状が出ました。保健所の検査の結果、原因は「ヒスタミン」だとわかりました。ヒスタミンは寄生虫ではなく化学物質で、生魚などを常温で放置すると作られてしまうということです。
ヒスタミンを多く含む魚などを食べると、1時間以内に顔が赤くなったり、発疹、頭痛、吐き気などのアレルギーのような症状が出たりすることがあるといいます。この保育園の場合、園に冷蔵でブリが届きましたが、焼くまでの約2時間、常温で置かれていたそうで、長野県はそれが原因とみています。
ヒスタミン食中毒の原因となりやすい魚は、マグロ、カツオ、サンマ、ブリなどで、アニサキスが寄生する魚と共通です。ただ、アニサキスと違うのは、ヒスタミンは十分加熱しても除去できないことです。一度ヒスタミンが作られると、煮ても焼いても食べられない状態になります。
つまり、対策には、ヒスタミンが作られないようにするしかありません。
魚は死んだ瞬間から消費者の口に入るまで、「一貫した温度管理」が重要です。とにかく、常温で放置しないこと、すみやかに冷蔵庫で保管することが大切です。信頼できる業者から仕入れることも重要です。
・鮮度のいいものを選ぶ
・丸ごと1匹買ったらなるべく早く内臓を除去
・効果的なヒスタミン対策は「常温で放置しない」
・効果的なアニサキス対策は「冷凍・加熱を一定程度する」
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食欲の秋、旬を迎えた魚をたくさん楽しめる季節ですが、食中毒にならないように鮮度や取り扱いには十分に気をつけて、安心安全に秋の味覚を楽しみたいものです。
(2022年9月13日午後4時半ごろ放送 news every. 「知りたいッ!」より)