【残業減でも収入UP】減らした残業代がボーナスに IT業界大手で実現した“奇跡の休み方改革”

ハードな働き方が蔓延しているIT業界。そんなイメージとは裏腹に、休み方改革で残業が激減、しかも社員の収入アップを実現したのが、業界大手の株式会社SCSKだ。実際の施策をもとに、生産性を上げつつ、休み方改革を進めるヒントを考えた。
■残業は減らしたい。しかし・・・・・・?
システム開発やITインフラ構築など、様々なITサービスを提供する株式会社SCSK。社員数1万4550人、取引企業約8000社を誇る業界大手企業が、休み方改革で注目を集めている。大胆な改革で社員の残業が激減。さらには、社員の収入アップという”奇跡”を起こしたのだ。
SCSK人事・総務本部ライフサポート推進部長の杉岡孝祐さんによると、元々はほかのIT業界と同じく、「不夜城」と呼ばれるほど長時間労働が当たり前だったという。
「私たちが提供する情報システムは24時間365日動いて当たり前のものです。ゆえに、システムを守るために長時間労働が蔓延し、休まず働く人を評価する風潮がありました。オフィスに寝袋があるのも当たり前の光景でしたね」
この状態のままではいけない。危機感をあらわにしたのが、当時の経営トップだった。「システムエンジニアは機械のように働くのではなく、クリエイティブな仕事であるべき。過酷な労働環境では、いいアイデアが出るわけがない。一度リセットして、働き方を見直さなければいけない」と考えたのだ。まだまだ「働き方改革」という言葉すら浸透していない2012年のことだった。
そこでSCSKは、まず残業が特に多い部署において、残業を半減させるトライアルを実施。一度は残業時間が大幅に減少したものの、すぐに元通りに戻ってしまった。その理由のひとつが、社員から、「残業代をあてにしていたのに」という不満の声が出たことだ。
企業の働き方事情に詳しい株式会社リクルートHR統括編集長の藤井薫さんは、どの会社でも起こりうる声だが、本音は別にあるという。
「社員らは、当然ローンも返したいし、稼ぎたいと思っています。しかし本音を聞いていくと、無駄な残業をしたいと思っている人はいません。残業が減れば、給料が下がるというシステム自体をアップデートできないと、解決できないと思います」