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男性バレエダンサーへの“偏見”を考える 「パンツどうすんの」「気持ち悪い」傷ついた言葉

2022年4月23日 2:44
男性バレエダンサーへの“偏見”を考える 「パンツどうすんの」「気持ち悪い」傷ついた言葉
クレジット:アフロ

「バレエ」と聞いて思い浮かべるのはなんでしょうか?キラキラと光るティアラや衣装?トゥ・シューズでくるくると回るダンサー?バレエには、男性のダンサーの活躍も欠かせません。しかし、男性ダンサーたちは差別や偏見と戦ってきました。“男らしさ”とは何なのか――。男性ダンサーをめぐる差別や偏見について考えました。

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最近、男性のバレエダンサーが注目されています。今年4月には、男性ダンサーが主人公のマンガ「ダンス・ダンス・ダンスール」のアニメ化も始まるなど注目が集まっています。一方で、「男らしくない」などの理由の差別や偏見も感じるという男性バレエダンサーの世界を取材しました。

■バレエの男性ダンサー どんな役?

クラシックバレエの古典作品で最大の見せ場となるのは、男女がペアで踊る「グラン・パ・ド・ドゥ」。この時、男性ダンサーは女性ダンサーを、時には片手でリフトするなど、重要な役割を果たします。さらに、高くダイナミックなジャンプなど男性ダンサーならではの大きな見せ場もたくさんあります。

しかし、男性ダンサーは“偏見”と戦ってきました。

2000年に公開された映画「リトル・ダンサー」では、バレエダンサーを目指す男の子が「男らしくあれ」「バレエは女の子がやるものだ」などの偏見と闘う様が描かれています。公開から20年以上がたった今、男性ダンサーへの差別や偏見はどうなったのでしょうか?

■「パンツどうすんの」「気持ち悪い」傷ついた同級生の言葉

創立70年を超える名門バレエ団「谷桃子バレエ団」のプリンシパル(最高位のダンサー)三木雄馬さんに話を聞きました。

ーー子どもたちへ指導もされていますが、男女比はどうでしょうか?

圧倒的に女の子が多いと思います。男の子は女の子の10分の1、あるいは15分の1くらいかもしれません。

ーー男の子が少ないのは、「バレエは女の子がやるもの」など“偏見”が関係しているんでしょうか?相談を受けたりした経験はありますか?

私がバレエを始めた子どもの頃と比べると、小さい時から男の子もバレエを始める人も多くなってきているので、より身近になってきているのかも知れません。

しかし、中高生になると、学校の友達に「放課後に遊びに行こう」と誘われたときに、バレエのレッスンがあって遊びにいけない場合、バレエをやっていることを友達に打ち明けるのをためらうという声も聞かれます。

また、「バレエ専用のアンダーウェアを履くのが恥ずかしい。スポーツ用のジャージなどで代用できないか。」という相談を受けることもあります。

理解は進んでいるものの男性がバレエをすることに対して、まだまだ学校などで、からかいなどの対象になっているのかも知れません。

ーー三木さんご自身、子どもの頃、バレエを習っていることでいじめや差別的なことをされた経験はありますか。

小学生の頃は、「オカマ」と呼ばれたり無視をされたりと辛い時期が長かったです。徳島県ではバレエをしている男の子は僕しかいなくて、風当たりが強かったです。

たまに長く話をしてくれる子がいても「パンツどうすんの」「タイツほんとに履くの」といった興味本位の話から始まり、最後は決まって「気持ち悪い」と言われて会話が終わりました。

忘れられないのは、学校の教師にニヤニヤしながら「ここで踊ってみろ」と言われ、廊下で踊らされて、挙げ句には「よくわからんけど下手くそやな」と罵られたことです。今の教育現場では考えられないです。

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