“多摩地域のみ”ガイドブック「異例の売り上げ」 東京編の3倍を記録…人気のワケ
今、東京・西部にある多摩地域の人気が高まっています。今年3月、多摩地域に特化したガイドブックを発売したところ、海外旅行版の売り上げが9割減という厳しい状況が続いている中、異例の売り上げを記録したということです。多摩地域にはどのような魅力があるのか取材しました。
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東京都心から約1時間半、山道を15分ほど歩くと、都内で唯一「日本の滝百選」に選ばれた檜原村の「払沢の滝」が目の前に現れました。
癒やしを求め、朝から多くの人が訪れていました。
八王子からの観光客
「東京でこんなに素晴らしい滝が見られるのは、ここしかない」
実は、50以上の滝が点在しているという東京・檜原村には、季節によって表情を変える滝を見に訪れる人が多いといいます。
中には、「地球の歩き方」という本を見たという人もいました。「地球の歩き方」は、海外旅行のガイドブックとして知られています。
2020年に発売した初の国内版「東京編」では23区がメインで、檜原村などを含む多摩地域は、ほとんど掲載されていませんでした。
ところが、読者から「多摩の情報をもっと知りたい」という声が寄せられました。
地球の歩き方多摩編 編集担当 斉藤麻理さん
「『多摩の情報が足りない』という声をたくさんいただきまして、いっそ多摩だけで1冊つくってしまおうかということで企画した本になります」
なんと、今年3月多摩地域だけでガイドブックを作ったのです。
そもそも、多摩地域とは、東京23区の西側・30の市町村からなるエリアのことです。ここまでエリアを絞ってしまうと、売り上げが心配です。
しかし――
斉藤麻理さん
「東京編を上回る約3倍の売り上げを記録。ちょっと、社内が騒然とした雰囲気だった」
「海外旅行版の売り上げが9割減」と厳しい状況が続いていた中、ガイドブックとしては異例の売り上げを記録したということです。エリアを絞ったことで、ディープなスポットも紹介できるようになりました。
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東京・檜原村にある兜家旅館は、木々に囲まれた茅葺き屋根の合掌造りの建物です。古民家を活用した旅館で、室内は広々とした和室になっています。囲炉裏で提供される地元の食材などを使った料理の数々や、大自然を眺める浴室など、都会の喧噪を忘れる空間です。
兜家旅館 岡部ゆみこ女将
「これから旅行に行こうと思う方が、本屋さんで『地球の歩き方』を手にとって、私どもを知っていただくいい機会になると思います」
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多摩地域の真ん中辺りにある福生市のページで紹介されているのは、横田基地のすぐそばにある商店街です。
色鮮やかなカップケーキや、アメリカンなワッフルが味わえる「THE MINT MOTEL」では、なんとドル払いが可能です。なかなか海外に行けない中、東京都内でちょっとした旅行気分が味わえます。
さらに、オーナー自らアメリカで買い付けたアンティーク雑貨を扱う店では、東京にいながらアメリカ土産を買うこともできます。
立川市民
「海外に全然行けないので、歩いていると、ちょっと海外の気分が味わえて楽しかった」
実際に、ガイドブックを見て訪れる人も多いといいます。
福生武蔵野商店街振興組合 竹内由紀さん
「一回来ていただいて、またより深い福生を見ていただきたいなと思います」
近い存在だからこそ、気づかなかった地域の魅力の再発見につながりそうです。