【解説】患者急増で小児科ひっ迫 感染症の猛威…「RSウイルス」「ヘルパンギーナ」 カギは“免疫アップ”
子供たちの間で、風邪のような症状がみられる感染症が流行しています。まずは、じわりと拡大している新型コロナウイルスの感染状況についてです。
2日までの1週間に全国の定点医療機関が報告した全国の新たな感染者は、1つの医療機関あたり平均7.24人と、前の週の約1.18倍でした。特に沖縄県は第8波のピークを超えていて、前の週の1.23倍となる48.39人でした。
このところの感染状況について日本医師会は「9波になっていると判断するのが妥当」との見解を示しています。
そして、新型コロナウイルスとともに感染者が急増している感染症があります。
加藤厚生労働大臣(7日午前)
「『RSウイルス感染症』あるいは『ヘルパンギーナ』の報告数は現在増加傾向。特に『RSウイルス感染症』については新生児や基礎疾患のある子供さんが重症化しやすいため注意が必要」
「RSウイルス感染症」そして「ヘルパンギーナ」。どのような感染症で、どのように対策するとよいのでしょうか。
●ウイルス猛威 小児科ひっ迫
●感染症の夏 乗り切るには
以上の2点について詳しくお伝えします。
国立感染症研究所がとりまとめた「RSウイルス」の報告者数は、5月上旬ごろから急増し始め、6月19~25日の1週間には9936人と急増しています。季節による流行かというと、そうでもないようです。去年の同じ時期(6月20~26日)の1861人と比較すると、約5倍に増えています。
さらに「ヘルパンギーナ」も5月の上旬から急に増えていて、最新の報告者数は1万8176人(6月19~25日)となりました。去年の同じ時期(6月20~26日)の451人と比較すると、なんと約40倍です。
ヘルパンギーナが身近で流行していると感じる人も多いかもしれません。どのような感染症なのでしょうか。
RSウイルス感染症もヘルパンギーナも、乳幼児を中心に流行する感染症です。
RSウイルスを発症すると、発熱や鼻水、せきなどの呼吸器症状があらわれます。基礎疾患がなくても重症化する場合があるので、注意が必要です。一方、ヘルパンギーナは発熱のほか、のどが赤く腫れて発疹が出るのが特徴です。直接ウイルスを倒す薬はないので、対症療法となります。
医療の現場がどのような状況になっているのかというと、東京都立小児総合医療センターでは現在、小児集中治療室にいる患者の約半数がRSウイルス感染症だといいます。酸素投与などのために入院が必要なケースもありますが、現在は満床の状態が続いているそうです。
そもそもなぜ、2つの感染症が流行しているのでしょうか。小児科医に聞きました。
東京小児科医会理事・クリニックばんびぃに 時田章史院長は「コロナ禍の感染対策によって風邪などにかからず、感染症への免疫を持っていない子供が増えている。もうしばらくはこの状況が続くのではないか」と話していました。
では、感染症の夏を乗り切るには、どうすればよいでしょうか。
RSウイルスもヘルパンギーナも飛まつ・接触で感染するので、症状がみられる場合は“マスクをつける”、“石けんで十分に手を洗う”、そして“換気をする”。これは、コロナウイルスへの対策と一緒です。
一方で、免疫力を高める方法はないのでしょうか。体の免疫機能などを研究している、ハーバード大学医学部客員教授で医師の根来秀行先生に話を聞きました。
免疫機能を回復するには、副交感神経がポイントです。呼吸の維持など体の機能を働かせる「自律神経」には、活動する時に働く「交感神経」とリラックスした時に働く「副交感神経」があります。「副交感神経」が優位になると、全身に血液が流れやすくなり、体の隅々まで免疫細胞が届けられやすくなり、免疫力アップにつながるといいます。
副交感神経が働きやすい睡眠を質の高いものにするためには、次のような生活習慣は見直す必要があります。
◇朝食を抜くなど3食をとらない
◇夜更かしをして土日遅くまで寝ている
◇寝る直前までスマホを見ている
◇運動不足
運動不足の対策として根来先生は、“1日1万歩”歩くことや、血流をよくする有酸素運動が大事になってくると話していました。現代人のストレスの多い生活習慣を改めることが、質の高い睡眠につながり、風邪をひきにくくするそうです。さらに副交感神経を働かせるためには「腹式呼吸」をすることも効果的だそうです。
■夜間や休日は「#8000」でアドバイスを…
まずは感染しないことが大事ですが、夜間や休日に子供の体調が悪化した時、特に親は不安になるものです。そんな時は「こども医療でんわ相談 #8000」に電話すると、小児科医や看護師から、対処の仕方やアドバイスをもらうことができます。ぜひ活用してみてください。
(2023年7月7日午後4時半ごろ放送 news every. 「知りたいッ!」より)