まもなく休館の帝国劇場 約60年前から変わらぬ内装…ステンドグラスに込められた意味
59年前に2代目として建てられた現在の帝国劇場は、周辺の再開発に伴うビルの建て替えのため、今月末で一時休館することが決まっています。
まもなく見納めとなるその内装に込められているのは、世界一を目指した建築家たちのさまざまなこだわりです。20年以上前から帝国劇場に通っているという佐藤真知子アナウンサーが取材しました。
今回お話を聞いたのは劇場建築に詳しく、新しい帝国劇場の建設に向けて劇場コンサルタントとしても携わる小林徹也さんです。
佐藤真知子アナウンサー
「中に入るとまた気持ちもこう…雰囲気がガラッと変わりますよね」
劇場コンサルタント 小林徹也さん
「丸の内はビジネス街ですから、(観劇へ)気持ちを切り替えられる場所になるようなことを計画していたということだと思いますね」
現在の帝国劇場が建設された1966年は高度経済成長期のさなかで、ビートルズが来日した年でもありました。
総工費は約60億円。
劇作家の菊田一夫さんが指揮をとり、赤坂の東宮御所などを手がけた建築家・谷口吉郎さんと共に“普段着で見られる世界最高の劇場”を目指したといいます。
中でもまず目にするロビーには、さまざまなこだわりが。
劇場コンサルタント 小林徹也さん
「(劇場は)非日常の華やかな空間であるというところで、それを演出するためにアートの力を借りてお祭りの空間みたいなことを建築家の谷口さんがおっしゃっていたんですけれども、そういったものを演出していると」
イメージしたというのは華やかな祝祭空間。日本の伝統芸能や舞台につながるようなアート作品がロビーを彩っているんです。
佐藤真知子アナウンサー
「中でもひときわ目を引くのが、このステンドグラスですよね」
こちらは日本のお祭りや舞台を表現したというステンドグラス「律動」。
劇場コンサルタント 小林徹也さん
「光が入ってきて、神聖な雰囲気を醸し出す演出をするという意味で、日常とは違うぞという雰囲気を演出してるんじゃないかなと思いますね」
ステンドグラスの下にはドラマチックな思考を暗示する喜怒哀楽の仮面や、はにわの色や質感をイメージして陶芸家が手がけたタイルの壁も。
佐藤真知子アナウンサー
「あちらには大きなオブジェが置いてありますが…」
劇場コンサルタント 小林徹也さん
「これはオブジェじゃないんですよ。本当は、照明器具という扱いで設計されていたようです」
かつて芝居小屋にご祝儀として送られた熨斗(のし)を表現したさりげない照明は、シャンデリアとしてつくられたものなんだそうです。
非日常感のある光の使い方は階段の手すりにも。
劇場コンサルタント 小林徹也さん
「少しお客さんを照らすような照明だったりするので。晴れの場で主役になれるような階段なんじゃないかなと思います」
うすく切った木材から透ける淡い光は、まるで自分が舞台に立ったかのような高揚感を感じられるといいます。
そして客席には…。
佐藤真知子アナウンサー
「こちらが帝国劇場の客席ですね」
劇場コンサルタント 小林徹也さん
「客席の中に関しては、よりシンプルなデザインであるということですね。」
佐藤真知子アナウンサー
「この壁のデザインというのは?」
劇場コンサルタント 小林徹也さん
「音の拡散というのを踏まえて、板をランダムに配置してるというのもありますね」
ロビーとは違って装飾は少なくするなど、より作品に集中できる空間が広がります。
あと1週間で幕を閉じる2代目の帝国劇場。ロビーに飾られているアート作品は、新しい劇場などへの引き継ぎを検討しているといいます。
帝国劇場 中山周支配人
「皆さんに愛されたこの劇場がなくなるということ自体が、我々従業員にとってもすごく寂しい気持ちでいっぱいです。またこの帝劇が丸の内に戻ってくることを楽しみにしていただければと思っております」
3代目となる新たな帝国劇場は、2030年度の開場を予定しているということです。
(2月21日『Oha!4 NEWS LIVE』より)