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アパレルゴミから生まれた「人工ダイヤモンド」が名古屋初展示!“アートでスラム街に雇用創出”美術家・長坂真護の個展が開催 名古屋・中村区

2025年3月19日 16:50
アパレルゴミから生まれた「人工ダイヤモンド」が名古屋初展示!“アートでスラム街に雇用創出”美術家・長坂真護の個展が開催 名古屋・中村区

『名鉄商店』で開催中の長坂真護展「still A BLACK STAR 灰とダイヤモンド」にて、アパレルゴミから生成された“人工ダイヤモンド”が名古屋初お披露目。なぜ、長坂さんはアパレルゴミから人工ダイヤモンドを生成しようと思ったのでしょうか。そこには、先進国の善意によって大量発生した、“新たなゴミ”の存在がありました。

経済成長と環境保護を両立する“新たな資本主義”

世界を舞台に活躍する美術家、長坂真護さん。ガーナのスラム街に投棄された、電子廃棄物を活用したアート作品を制作しています。その売り上げから生まれた資金で、現地にリサイクル工場を建設。さらに、環境を汚染しない農業やEVなどさまざま事業を行っています。

また、ガーナにMAGO MOTORS LTDを設立し、77名の現地雇用に成功。その9割はスラム街の出身者だといいます。寄付による一時的な貢献より、持続的な経済活動を貢献することで、現地の雇用創出に尽力。2028年に1000人雇用を目指し、“スラム街撲滅”という目標に向けて日々活動しています。

そんな長坂さんが提唱するのは、経済成長と環境保護の両立を目指す資本主義の新たな形、“サステナブル・キャピタリズム”。スラム街のゴミからアートを作り、それで得たお金をスラム街に還元し、ゴミを減らして経済性に貢献する。そんな仕組みを根幹とする数々の活動のなかで生まれたのが、今回名古屋で初お披露目となる「人工ダイヤモンド」なのです。

名古屋市中村区にある『名鉄商店』で行われている、長坂真護展「still A BLACK STAR 灰とダイヤモンド」。会場内には、電子廃棄物を活用した長坂さんのアート作品が、100点以上も展示されています。

そのなかで、ひときわ注目を集めているのが、炭化したアパレルゴミから生まれた「人工ダイヤモンド」。リングの宝石として加工されたその輝きは、訪れた人々の心を惹きつけます。

“世界最大級の電子機器の墓場”と言われるガーナ・アグボクブロシーを訪れたことを機に、現在の活動を始めた長坂さん。なぜ、電子廃棄物ではなく、アパレルゴミを活用した取り組みにも活動の幅を広げることになったのでしょうか。

そこには、先進国からの“寄付”によって引き起こされた、ガーナの新たな環境問題の存在がありました。

善意によって生まれた、新たな環境汚染。今年2月、『STATION Ai』で行われた講演会にて、その要因と人工ダイヤモンド生成の経緯について、長坂さんが語っていました。

同講演では、「MAGO MOTORS JAPAN」取締役・木村太一さんが、ガーナの抱える環境課題を説明。電子機器の野焼きで発生した毒ガスによる影響から労働者たちが亡くなっていること、そんな環境下で飼育された家畜の肉が食事を通して現地の人々の口に入っていること、廃棄物などで黒く染まった川がガーナの海に押し流されていること。

会場に集まった約120名の参加者たちは、木村さんの口から語られる環境汚染の現状を真剣に聞き入っていました。

さまざまな社会問題に直面しているガーナ。そのひとつが、ビーチにある“アパレルの墓場”。会場に映し出されたガーナのビーチの写真には、砂浜を覆い隠すほどの衣服がゴミとして捨てられていました。

しかしなぜ、後進国のガーナで大量のアパレルゴミが捨てられているのでしょうか。実はこれらすべては、先進国から寄付された衣服。ガーナだけで毎週1500万点ほど届くと言われており、あまりにも多すぎることから、結果的に現地の人々によって廃棄され、ゴミとなり、ガーナのビーチを覆い隠していたのです。

長坂さん率いるMAGO MOTORS JAPANは、“アパレルの墓場”の問題解決にも着手。地道にアパレルゴミの回収作業を行い、2022年には砂浜の土が見えるほどまでの回収に成功しました。しかし今度は、MAGO MOTORS JAPANの倉庫が、回収した2,000トンものアパレルゴミでいっぱいになるという問題が発生。

この問題を解決する力となったのが、日本企業の技術力でした。長坂さんはさまざまな日本企業と連携し、「低温熱分解炉」を導入。アパレル重量を200分の1に圧縮させ、その灰を60%使用した建材ブロックを開発することに成功しました。

現在、その建材ブロックで新たなショールームの建設を実施。その建材ブロックの説明を展示会で行っているなか、『炭化したアパレルゴミで、ダイヤモンドも作れるのではないか…?』と、人工ダイヤモンドの生成をひらめいたことを明かしました。

成功まで約1年かかったという、人工ダイヤモンドの生成。長坂さんはこれまでの経緯を振り返り、「たくさんの方々の協力を得て、気が付いたら、こんなに“輝くもの(=人工ダイヤモンド)”が出来ていました」と話し、実際にアパレルゴミから生まれた人工ダイヤモンドを高く掲げました。

アートで目指す、スラム撲滅と1万人雇用

ゴミから生まれたダイヤの輝きは、本個展のタイトル「still A BLACK STAR」とも深い由縁がありました。

その意味を知るために見ておきたいのが、中央に黒い星が描かれたガーナの国旗。現地の人々から「独立は社会上したけれど、まだ我々の“星”は輝けていない」という話を耳にしていた長坂さん。「いち人間として、いちアーティストとして、この星(ガーナの国旗の黒い星)を輝かせたいという想いが沸き上がってきました」と、当時の心境を明かしました。

そんな熱量から生まれた言葉が、“still A BLACK STAR”。長坂さんは「“still A BLACK STAR”のあの星も、努力すれば、僕らの汗や努力が結晶化して、この人工ダイヤモンド同様に輝くはず」と力強く話し、“絶対に諦めないこと”の大切さを強く発信しました。

実は今年1月、ガーナのスラムで活動中、ウイルスが肩に入り、神経麻痺を患ってしまった長坂さん。右腕に痛みと麻痺が残っており、握力のない状態がしばらく続くことを明かしました。

美術家にとって、命ともいえる“手”の不調。しかし、「もしウイルスが僕の聞き手に回ってきても、僕は口で絵を描く。命ある限り、それ以外はかすり傷だなって思うんです。僕の魂は、手は麻痺していても、心はめげていない。絶対に、“スラム、一万人雇用”を必ず実現します」と明るい表情で宣言しました。

また、長坂真護展「still A BLACK STAR 灰とダイヤモンド」については、「(個展で)長坂が手が麻痺して、苦しんでいた時代にしか書けなかった絵画シリーズっていう発表しますんで。どんなことも使ってやろうと思っています(笑)」と冗談交じりに話し、講演を締めくくりました。

経済成長と環境保護を両立させた“新たな資本主義”の形成に挑む、美術家・長坂真護さん。その心と生き様は、やはりアートで色濃く感じることができます。

長坂真護展「still A BLACK STAR 灰とダイヤモンド」では、電子廃棄物を活用したアート作品や人工ダイヤモンドのほか、ガーナの抱える環境問題を知ることができるパネルも多数展示。入場料は無料で、『名鉄商店』にて3月23日(日)まで開催中です。

最終更新日:2025年3月19日 16:50
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