“伊勢の神殿”に迫るイマドキ試練 伝統を守るための救世主「ススキ」を育てる? 三重で新たな挑戦
3月、三重県南伊勢町の山の中の畑で、ちょっと変わった植物の栽培が始まりました。
細長い茎が集まったイネのような植物。茅(カヤ)とも呼ばれるススキ。その株を細かく分けて、土の中へ丁寧に植えていきます。
秋になると白い穂をつけるススキ。でも、ススキというと、道ばたや空き地、さらには畑の周りにも勝手に生えている、いわば“雑草”のはず。
職人:「どうしてもいるものだからね」
Qなくなったら?「大変なことですよ」
雑草がないと大変!?
実は「伊勢の神殿」と呼ばれる伝統工芸を守るためにはススキが欠かせないのです。
伊勢宮忠の川西英二さん。毎年、冬になるとススキ集めに奔走しています。
伊勢宮忠 川西英二さん:
「休耕地っぽいところを見つけ出して、作物育てていなくて雑草が生えていそうなところにポイントを立てて…」
まずは、航空写真を使ってススキが生えていそうな場所を地道に探索。
土地の所有者から許可を得ると、刈り取り部隊が現地に向かいます。
乾燥した状態で刈り取るため、作業は毎年、冬の2か月間だけ。
「伊勢の神殿」のためには、その2か月で1トンものススキを集める必要があるといいます。
その捜索範囲は県内にとどまらず、SNSで情報提供を呼びかけたことも。
伊勢宮忠 川西弘志さん:
「一番遠いところだと、和歌山県の方まで行ったことがあります。片道2時間半だそうです」
その距離100キロ以上!倉庫をススキでいっぱいにするまで、県内外を駆け回っています。
刈り取り場所は20か所ほどあるといいますが、詳しい場所はトップシークレット。
伊勢宮忠 川西英二さん:
「社外秘なので詳しい場所は言えないんですけど、場所が特定されるとまずいので」
そこまでしてススキが必要な「伊勢の神殿」とは…。
伊勢宮忠 川西英二さん:
「こちらが弊社が作る、『かやぶき神棚』です」
切りそろえられたかやぶき屋根が美しい“神棚”。
伊勢神宮の神殿を模した造りで、三重県の伝統工芸品にも指定されています。