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【廃油を燃料に】岐阜県恵那市の企業がモルディブを救おうと奔走 リゾート地で大量に排出される廃油を資源に

2024年11月10日 0:00
【廃油を燃料に】岐阜県恵那市の企業がモルディブを救おうと奔走  リゾート地で大量に排出される廃油を資源に
使用済み油をバイオディーゼルに
岐阜県恵那市の廃棄物処理会社「ケイナンクリーン」が、インド洋上のモルディブを救おうと奔走しています。今回、リゾート地で大量に排出される廃油を再び燃料として活用するための活動に密着しました。
廃油の再利用は、名古屋名物「みそかつ」を調理する際に出る多量の使用済みの油にも資源活用の道を開くといいます。

名古屋名物「みそかつ」の調理で大量に排出される使用済み油に、“再利用”の道が


名古屋の名物グルメの一つといえば……。揚げたてのとんかつに赤味噌だれをたっぷりかけた「みそかつ」。名古屋市に本社のある「矢場とん」をはじめ、名古屋市内の多くの飲食店が提供しています。

「おいしいよね」
「うん。おいしい」

みそかつを口にする人たちは、笑顔が止まりません。みそかつにたっぷりかけられた味噌だれが、食欲をそそります。


ただ、今回注目したのはこのとんかつではなく、揚げ油です。
とんかつを揚げるために使った油が、実は“あるモノ”に生まれ変わるというのです。
     


そこで、矢場とんを訪れた人たちに、使用済みの揚げ油がどうなると思うか聞いてみました。
「使用済みの油がどうなるか? 考えたことないです」
「普通に捨てるのかと思ってました」


矢場とん広報部の片山武士さん:
「揚げ終わった油は、なんとトラックの燃料になります」


使い終わって“廃食油”となった油は、捨てられてしまうのではなく、回収されて工場へ送られます。
    


“廃食油”に薬品を入れて化学反応で成分を分離させ精製すると、軽油の代替燃料となる「バイオディーゼル」に生まれ変わるというのです。
    
リサイクル計画が始まったのは2年前。当初は、使用済みの油が燃料になるとは半信半疑だったといいます。


矢場とんの担当者である田中翔大さん:
「うそだろって思いましたね、そんなばかなって。だって油だよってね。でも、世間的にSDGs(エスディージーズ:持続可能な開発目標)という言葉が普及し始めたころ、矢場とんも何かしなきゃいけないよね、というところから使用済みの油の再利用が始まりました」


その後、“廃食油”は「矢場とん」の社用トラックの燃料に使えるように何度も改良が重ねられ、来年1月から実用化される予定ということです。

岐阜県恵那市の企業が、リゾート地モルディブの廃油の再活用の道に乗り出す


“廃食油”は、飛行機の燃料や塗料、洗剤などにも生まれ変わることができる資源として、いま注目されています。
    
そんな“廃食油”をめぐるビッグプロジェクトが、岐阜県恵那市の会社に舞い込みました。
    


20年前から、使用済みの油である“廃食油”をバイオディーゼルに加工し精製する活動に取り組んできたのは、廃棄物処理業「ケイナンクリーン」の近江則明社長。

去年、意外なところから電話がかかってきた、と振り返ります。

近江社長:
「モルディブの大使館から、ココナッツオイルでバイオディーゼルを作れないかとのお問い合わせをいただいて……」
 
なんとモルディブ大使館から直々に「母国の環境問題を解決してほしい」と相談を受けたのです。


マリンブルーの海にコテージが連なる世界有数のリゾート地「モルディブ」。
    
このリゾート地でいったい何が起きているのでしょうか。
今年8月、視察に向かった近江社長に現地の様子を撮影してきてもらいました。


近江社長:   
「空港を出てすぐにフェリー乗り場があるんですけど、そこの海を覗いたときはプラスチックのごみがたくさん浮いていて、とてもきれいとは思えない状態でしたね」
 
華やかなリゾート地の影で起きている深刻な環境汚染。それを象徴するような衝撃的な光景が眼前に広がります。
    

 近江社長:
「マレ(首都)の港から船で20分ぐらい行くんですけど、何キロも手前からごみのにおいがしてきて……。(モルディブは)山がないんですけどそこだけは山があります。近づいていくと、ごみだと分かります」
   
この山のすべてが、ごみ。ティラフシ島と呼ばれるこの島の別名は「ごみの島」。
リゾート施設や飲食店などから出たごみが集められ、野積みされていたのです。


近江社長:
「山のようなごみが処理されることなく蓄積されています。雨が降ると海に流れ出してしまうような状況です」
 
そのような状況で、“廃食油”は、下水に流されるか、回収され集められたとしてもそのまま放置されていました。

近江社長はゴミ処理に関わる機関を回り、「私たちが行けばリサイクルして燃料にできる。その燃料を使って二酸化炭素(CO2)の削減ができるので、ぜひ取り組まないといけないな」と、
現地では前代未聞だった“廃食油のリサイクル”に挑むことを決意しました。


帰国後、近江社長が向かったのは鹿児島県!
    
使用済みの油である“廃食油”からバイオディーゼルが作れるか、専門家に検証を依頼したのです。


ちなみに、においをかぐとけっこう臭い。
鹿児島大学大学院理工学研究科の木下英二教授は「腐敗臭がすると思います」と指摘します。
  
ココナッツオイルのほか、ヒマワリ油などさまざまな油が含まれているモルディブの“廃食油”。果たしてバイオディーゼルの精製は可能なのでしょうか。


木下教授: 
「かなり白濁したと思います。もう化学反応が始まっています」
  
近江社長が見守る中、待つことおよそ1時間。

実験の結果は・・・。


木下教授:
「(バイオディーゼルに)精製できるかというと十分できると思います」
    
モルディブの“廃食油”からバイオディーゼルを作ることが可能だとわかりました。


近江社長:
「実際にモルディブの油がバイオディーゼルに変化したところを見て安心しました。この先の事業展開が期待できると確信が持てました」
    
モルディブの現地でもバイオディーゼルを作ることができれば、国内の発電機や船舶の燃料として使用できる可能性を期待できます。


近江社長:
「人々の行動変容を起こせればいいかなと思っているんですね。そのきっかけとして使用済み油のリサイクルを提案しています。使用済みの資源をリサイクルすることによって、モルディブの観光資源である海のきれいさを取り戻せるんじゃないでしょうか」
    
これまで捨てられてきた「油」。その再利用がモルディブの未来を救うカギになりそうです。

最終更新日:2024年11月12日 11:13
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