介護業界の人材不足を救いたい!! 人と組織が抱える「葛藤」を可能性に変える
今回のゲストは、Blanket代表取締役の秋本可愛さん。介護が、自分を、他者を、世界を好きになっていくプロセスになることをかかげる取り組みの魅力に“1分間で社会を知る動画”を掲げる「RICE MEDIA」のトムさんが迫りました。
変わってきた介護の現状
秋本さん「介護人材不足は、現状として6割近い事業者さんが人手不足を訴えています。
実は介護人材は、介護保険ができた2000年では55万人ほどだったんですけど、そこから現在では215万人と4倍に増えています。
一方で人材の増加よりもハイペースで需要が伸びています。そういう意味では、人手不足なんです。
介護保険について簡単に整理しますと、例えば病院に行ったときに3割ぐらいの負担で診療を受けることができると思います。
その介護版が“介護保険”です。私たちは40歳から介護保険料を納める必要があり、介護のサービスを利用する時に、費用の一部を国側が負担してくれます。
1〜5段階のレベルで要介護認定を受けたら、介護保険でサービスを利用することができて、基本的には1割の負担でサービスを利用することができます。
一時期は介護職は離職率が高い時期もあったのですが、現在は国や企業も働き方を変えようとしていて離職率も一般的なお仕事と同じくらいになりました。
ただ、まだまだ介護業界がこのような形で変わってきているということが伝わっていないと感じています。
そういった変化をしっかり伝えて介護人材を増やしていくこともBlanketの役割だと思っています」
どういうビジネスモデル?…Blanketの3つの取り組み
秋本さん「大きく3つの取り組みをBlanketでは取り組んでいます。
1つ目は、介護福祉事業をやっている人たちの取り組みを一緒に発信するという『介護HR(介護人材)』的な役割をしています。
自社での直接応募ができるような支援をすることで定着率やコスト削減を実現したり、新卒採用の人数が倍になったりといったお手伝いをしています。
大学生のころからやっているKAIGO LEADERSという取り組みが2つ目の取り組みです。介護に携わる人たちが横のつながりで交流を持ち、全国の介護事業者の取り組みを共有することが可能なコミュニティを創出しています。
3つ目は、自治体と連携して福祉の仕事の魅力発信をしています。直近では東京都やハローキティとコラボして介護の魅力を伝える機会を作りました。
特徴としては、自治体とのコラボで行う事業などがかなり多くなっています」
介護の面白さや、やりがい
秋本さん「直接利用者の方から『ありがとう』と伝えられることはまずあると思います。また自分たちの関わりによって、利用者さんに前向きな変化がおきることをやりがいに感じている介護関係者の方が多いです。
例えば、自分で歩けるようになる、口から食べられるようになるといったような変化です。
介護には“やってあげる” ”お世話してあげる”みたいなイメージがあるかと思います。介護の基本的な考えとして自立支援という考え方があり、その人が出来ることは引き続きできる環境を作るというものがあります。
例えば、認知症の症状がある方にも地域の清掃活動に参加する機会を作り、地域の方からありがとうと伝えられるような活動の機会を作っています。
介護が必要になると、社会とのつながりが薄れてしまっていったり、誰かのためになる機会が減っていったりしてしまうので、そういった機会を作っていくこともやりがいの1つだと思います」
ナゼ介護で起業?興味をもったきっかけ
秋本さん「実は介護には全く興味がありませんでした。大学生のころに起業サークルに入っていて、その時に一緒だったメンバーがたまたま介護をテーマに掲げたことが介護との最初の接点でした。
活動を続けていくうちに、もっと認知症や介護について知りたいなと思い、大学3年生の時に介護の現場でのアルバイトを始めました。介護の現状を知っていくにつれて、問題意識がどんどん大きくなったと思います。
これから深刻化していくと言われている介護業界に、若い人たちの関心がないということが気になり、それを変えたいと思ってBlanketのような取り組みを行っていきたいと思いました」
トムさん「起業サークルに入ったということだったのですが、もとからゼロイチで生み出すことが好きだったのですか?」
秋本さん「起業がしたいというよりは成長したいという思いで入りました。ただ何かを企画するということは好きでした。
当時は自分が現場で働き続けるということより、さらに多くの介護関係者の方が幸せになるにはどうしたらいいのだろうという思いが強かったです。
当時、従妹が20歳でなくなったこともあり、キャリア設計を長期的な視点でするというより、『目の前の気になる課題をどう解決するか?』ということに重きをおいた結果として起業を選んだのかなと思います」
介護業界の今後とBlanketの思い
秋本さん「介護業界はこれから深刻化していくことが多くなるかと思います。2025年問題を簡単に説明すると、日本人口の中で一番人口の多い団塊世代の方々が2025年に75歳を迎えることで起きる課題の総称です。
75歳になると20〜30%ほどの人が介護が必要になると言われているので、需要が一気に伸びていきます。
そして地域差はあるのですが、2040年は日本の死亡者数がピークになる年で、ここまでの間は介護需要が伸び続けていく状態が予想されます。
国の試算では2040年には、医療、介護、福祉に従事する人材が69万人ほど足りないと言われています。
今が踏ん張り時で人材不足を解決していかなきゃ、将来的に介護を受けられない人が出てきてしまうと考えています。
仕事をしながら家族の介護をしなければならないビジネスケアラーという課題も出てきています。なので、家族がどう介護に携わっていくかということも重要な視点だと考えています。
育児と仕事が明るいトークテーマとして話されることが増えてきた中で、“介護と仕事”の両立ももっと前向きに議論したり、準備したりできるような社会を実現できないかと考えています。
介護は人生の中で、誰にでもある1ページになってきていると思っています。
なので私たちは介護が自分や他者や、世界を好きになっていくプロセスになっていくことを目指しています」
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本記事は、日テレNEWS NNN YouTubeチャンネルメンバーシップ開設記念番組「the SOCIAL season1」の発言をもとに作成されています。