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【飯塚事件】第2次再審請求の行方③DNA型鑑定 一部を切り取った鑑定写真 証拠能力を事実上否定 福岡

2024年6月3日 19:42
【飯塚事件】第2次再審請求の行方③DNA型鑑定 一部を切り取った鑑定写真 証拠能力を事実上否定 福岡
DNA型鑑定
32年前 福岡県飯塚市の女の子2人が殺害された飯塚事件。殺人の罪などで死刑が執行された久間三千年(くま・みちとし)元死刑囚の再審=裁判のやり直しを認めるかどうか、福岡地裁の判断が6月5日、示されます。飯塚事件の再審請求をめぐり、裁判所はどのような判断を示してきたのか。主要な争点について改めてお伝えします。

福岡県・朝倉市の八丁峠で1992年2月、登校途中の女の子2人が何者かに誘拐・殺害され、峠道の脇で遺体で見つかるという痛ましい事件。警察は、事件から2年7か月後の1994年9月、久間三千年 元死刑囚を逮捕しました。

1999年9月、福岡地裁は死刑を言い渡します。そして、最高裁は2006年9月、久間氏の上告を棄却し死刑判決が確定。死刑確定から2年後、死刑が執行されました。

■久間 三千年 元死刑囚
「アリバイ以上のものを持っている。100%関係ないということをあんたたちが即信じるわ。やっていないものをやったと思われたことだけは、これは白黒必ずつける。」

久間氏は任意で事情を聴かれている段階から、一貫して犯行を否認。裁判でも無罪を主張しました。

自白も、犯行を裏付ける直接証拠もない中、1審判決は複数の「状況証拠」を積み重ねて有罪を導きます。

▽犯人の血液のDNA型が久間氏の型と一致したとされたこと

▽女児の遺留品が発見された現場で、久間氏の車によく似た「紺色ワゴン車」を見たという目撃証言

▽事件当日に女児の通学路の三差路でも「紺色ワゴン車」が目撃されたこと

▽久間氏の車の中から血痕と尿反応

▽女児の着衣に付いた繊維片が、久間氏の車のシートのものとほぼ一致したとされたこと

▽久間氏に土地勘があり、アリバイがないこと

■1審判決より
「個々の状況証拠も、単独では被告人を犯人と断定することはできないものの、これを総合すれば、被告人が犯人であることについては、合理的な疑いを超えて認定できる。」

そして2008年10月28日、死刑が執行されました。

■富永大介記者
「死刑が執行されて1年目の命日となるきょう、弁護団は裁判のやり直しを求めて福岡地裁に入ります。」

久間氏の妻は、再審請求=裁判のやり直しを求める訴えを福岡地裁に起こしました。弁護団が状況証拠を突き崩すうえで重視したのは、DNA型鑑定と目撃証言です。

■飯塚事件弁護団・德田靖之弁護士
「結局、柱としてのDNA型鑑定があり、車両の目撃証言がある。この2つの柱があるので、繊維が一致したとか、車内で尿痕だとか血痕らしきものがあったっていう証拠が意味を持つんです。」

そのころ、DNA型鑑定を取り巻く状況は変わり始めていました。きっかけは「足利事件」です。

■呼びかけ
「菅家さん、釈放おめでとうございます。」

DNA型鑑定によって犯人とされた菅家利和さん。しかし、そのDNA型鑑定は初期のもので、その技術に疑問が生じていました。そこで、最新の方法で鑑定をやり直したところ、DNA型が一致せず、当時の鑑定の誤りが明らかになったのです。

■菅家利和さん
「無実の私が足利事件の犯人にされたのは、科警研の間違ったDNA鑑定のためであり、絶対に許さないと思いました。なぜなら私と同じ間違ったDNA鑑定で、飯塚事件の久間三千年さんの死刑を執行されてしまったからです。」

足利事件と飯塚事件。2つのDNA型鑑定は、警察庁科学警察研究所の同じ技官が、同じMCT118型鑑定で行っていたのです。

さらに、新たな事実が明らかになりました。

これはDNA型鑑定の実験結果の写真です。科警研は、これらが犯人の型で、この型が久間氏と一致するとしていました。ところが、弁護団がこの写真の元のフィルムを調べると、裁判で使われた鑑定写真は一部を切り取ったものだと分かったのです。そして、隠されていた部分には、久間氏のものとは違う型、つまり真犯人の可能性がある型が出ていたといいます。

■德田弁護士
「私たちはこの点を追及したところ、検察側は科警研はどういう説明をしたか。不規則に出てきたエラーですと。だからこれはエラーなのでカットしましたと。エラーであることは実験して確認しましたと、こう言ったんです。じゃあ、その実験のデータを出してくれと言うと、その実験のデータ、写真、実験ノートは廃棄されてありませんと言ったんです。そういうことを一切見せたくないので、カットしたり暗くしたりして見えなくした。」

再審請求を申し立てて4年余り。

■生野真吾記者(2014年3月)
「請求は棄却です。請求は棄却されました。死刑執行後としては初となるケースとして注目を集めた今回の決定、請求は棄却です。」

福岡地裁は裁判のやり直しはしないと決定。最高裁でも再審請求は棄却されます。ところが、福岡地裁の決定には、驚くべき判断が記されていました。

■第1次再審請求での福岡地裁の決定より
「MCT118型鑑定については(略)その証明力を、確定判決の当時よりも慎重に検討すべき状況に至っている。」

重要な状況証拠の1つが事実上、除外されたのです。それでも、裁判所が裁判のやり直しを認めなかった理由は何だったのでしょうか。

■第1次再審請求での福岡地裁の決定より
「その他の証拠で、久間氏が犯人であることは高度に立証されている。」

ではDNA型鑑定以外の「その他の証拠」とはどういうものなのでしょうか。

弁護団によりますと、繊維鑑定は久間氏のワゴン車のシート繊維だけを調べたもので、他の車の繊維は調べてはいません。そのため、別の車のシートと一致する可能性もあります。また、車内から見つかったという血痕については、久間氏の家族とも一致する血液型だといいます。

結局、車内から見つかった証拠は、目撃された「紺色ワゴン車」が久間氏のものであることが前提で、目撃証言が崩れればすべて意味を失うといいます。

では、死刑判決を支える「紺色ワゴン車」の目撃証言について、弁護団は。

■德田弁護士
「もう一つの柱である車両に関する目撃証言については、極めて疑わしい。」

シリーズでお伝えしている「飯塚事件」第2次再審請求の行方、次回4回目は、その信用性が争点となっている状況証拠のもう一つの柱、「紺色ワゴン車」の目撃証言についてお伝えします。

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