【注目】空室目立つ古いアパートを改装→DIYで費用を抑えてコミュニティーの拠点に 建物の「再生」に新たな手法 福岡
こちらのアパート、一見すると何の変哲もない建物に見えますが、実は築40年が過ぎた物件をオーナー兄弟が自分たちの手で改築したものです。住人だけでなく地域を巻き込んだリノベーションを通じて、今では地域の交流の場となりつつあります。古い建物の「再生」の新たな手法が注目されています。
■阿部まみフィールドキャスター
「久留米市の櫛原駅からすぐ近くのこの辺り、ファミリー層が多い住宅街です。右手に見えるこの建物、一見アパートなのですが、1階に飲食店も入っています。」
久留米市東櫛原町にある築42年の「ハンダアパート」です。管理・運営しているのは、半田啓祐さん(46)と満さん(44)の兄弟です。
16年前に両親からアパートを受け継ぎましたが、老朽化が進んでいて当初は空室も目立っていました。
経営を立て直そうと、兄の啓祐さんは不動産業を学び、建築士である満さんとともに10年ほど前から自分たちで改築を始めました。
■半田啓祐さん(46)
「結構しっかりお金をかけると家賃をあげないといけない。そうすると高くなるので。必要な清潔感・設備は整えて、最低限の中で工夫して作った部屋です。」
こちらはもともと畳の和室ですが、一部をフロリーングに改装しました。DIY=自分たちの手で改築することで、改築費用は通常の3分の1に抑えることができました。
1階部分にはパン店やコーヒースタンド、さらに入居者や近所の住人が使える共有スペースもあります。
■半田啓祐さん
「もともとは2DKの普通の住居だった部屋。10年前くらいに自分たちでDIYで改装して、今は週末、カレー店がランチ営業して、地域の方もここに立ち寄れるスペースとして活用しています。」
こちらもDIYで改装しました。半田兄弟の呼びかけで、アパートの住人だけではなく、近所の子どもたちも改築に参加しました。
■半田啓祐さん
「みんなで金づちを打ちながら。小学生も参加してもらって。参加してもらうと完成した時にまた来てくれたりとか、参加した方が口コミでこの場所を広めてくれる。」
■買い物客
「楽しみが増えていいと思う。」
「お友達ができそう。」
「出会いの場になるかもしれないですね。」
「ハンダアパート」は今や、地域のコミュニティーの拠点となっています。
空き家問題…「休眠不動産」の活用できる?
こうした老朽化したビルや空き家の有効活用を後押ししているのが、半田さんたちも参加しているNPO法人「福岡ビルストック研究会」です。
4日、半田さん兄弟たち研究会のメンバーは、久留米市の原口新五市長を表敬訪問しました。
研究会には、福岡・熊本・長崎・鹿児島から24の団体が参加していて、毎年、久留米市や大牟田市で有効活用に向けたシンポジウムを開いています。
取り組みが評価され、ことし、国土交通省の「地域価値を共創する不動産アワード大賞」を受賞しました。
■NPO法人福岡ビルストック研究会・吉原勝己 理事長
「自分たちの好きな町は自分たちでつくろうという合言葉で集まり活動しています。自分事として頑張れるかということ。」
全国的にも問題となっている空き家。久留米市でも増加傾向にあり、去年、市が調査したとろ、40年以上放置された一戸建ての空き家は1800戸あったといいます。
■久留米市 住宅政策課・大宝宗徳さん
「空き家が増えると、防犯、環境、衛生、保安上、倒壊、空き家が管理されずに放置される害は多方面である。」
ただ、多くの建物は個人の資産で、行政だけでは処理できず、半田さんたちのような民間の協力は欠かせません。
半田さんたちのアパートは現在も改築が進められていて、コミュニティーの場としてさらなる発展を目指しています。
■半田啓祐さん
「多くの人が物件に来てくれる。住みたいという人が増えるような、町のシンボル、人が集まる拠点にしていきたい。」
古い建物が地域のシンボルとして生まれ変わる。「休眠不動産」の新たな活用の形として注目されています。
※FBS福岡放送めんたいワイド2024年6月4日午後5時すぎ放送