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【キャッチ】割れた器を修復する「金継ぎ」 大切な思い出もよみがえらせる職人の思い 福岡

2024年1月24日 18:05
【キャッチ】割れた器を修復する「金継ぎ」 大切な思い出もよみがえらせる職人の思い 福岡
割れた器を修復する「金継ぎ」職人
特集キャッチです。壊れた陶磁器を修復する伝統的な「金継ぎ」の技術で、年間400件の依頼を受けている女性が福岡県にいます。陶磁器と、それにまつわる思い出を修復する女性の技術を、FBSのカメラマンが追いました。

「割れたお皿を眺めることしかできなくて。気持ちが張り裂けそうで。」
「大事な思い出のものをよみがえらせることができる。傷跡もより美しくなる。」

思い出をよみがえらせるその工房は、福岡県太宰府市にありました。

金継ぎ師の樋口麻耶さん(42)です。

金継ぎは、木の樹液で出来た"漆"を使い、欠けたり割れたりした陶磁器を修復する伝統的な技法で、樋口さんは15年以上この仕事に携わっています。

■漆と金継ぎ さらは 代表・金継ぎ師・樋口麻耶さん
「同じような割れに見えて一つ一つ違う。素材も違うし、割れ方も違う。」

金継ぎの依頼は年に400件、ていねいな仕事に定評があります。

■樋口さん
「割れてしまってそこで終わりとういうのが、もう一度よみがえるという感じ。直したことによって、より大事にしたいという心が芽生える。」

この日、工房に届いたのは割れてしまったお皿です。

■樋口さん
「バラバラに割れていますね。厚みもあって難しそう。」

手紙も添えられていました。「大切にしたい物です。」

金継ぎを依頼した岡本誠司さん(52)です。

約半年前に手を滑らせて割ってしまったのは、大切な思い出のお皿でした。

■岡本誠司さん
「娘が小学3・4年生の頃、父の日に作ってくれた。」

岡本さんが男手ひとつで育てた娘の一花さんが、10歳のときに絵付けをしてプレゼントしてくれたといいます。

一花さんが成長し東京に巣立ってからも、岡本さんはこのお皿を大切に使い続けていました。

■岡本さん
「どんな高価なお皿に盛るよりも、娘が作ったお皿で料理を盛って食べるのが、料理がよりおいしくなったり、楽しい気分になる。」

かけがえのない思い出の修復が樋口さんの腕の見せどころです。

■樋口さん
「子どもの絵が一番大事なので、金があまり主張しないように花を添えるような感じで直したい。」
「すべて天然のものでできる。ナチュラルな物だけで完結するというのが、金継ぎのすごいところだと思う。」

思い出の絵を邪魔しないよう継ぎ目は極力細く、樋口さんの思いが筆先に宿ります。

■樋口さん
「割れた器をくっつけて仕上がるのに2・3か月かかるんですよ。接着剤であればすぐにできるものを丁寧に丁寧に育て上げる。何でもスピーディーなこの時代とは逆行しているんですけど、そこが好きです。」
「普通は隠してしまいたいところをあえて金で見せることで、傷痕の美しさが際立つ気がして。」

金継ぎを依頼してから2か月後、岡本さんの元にお皿が戻ってきました。

10歳の一花さんが描いたお皿いっぱいの絵が、金色の華を添えてよみがえりました。

■岡本さん
「すごく感動しています。娘との思い出ですね。それを感じられるのは言い表せない気持ちになりますよね。」

■岡本さん
「素敵なお皿に変わったよ。」
■娘の一花さん
「きれいに引っ付くんやね。」
■岡本さん
「割れた時のショックから立ち直ったって感じ。」

■樋口さん
「割れたことで終わってしまわずに、さらに直してその器を手に取った時に、今までの思い出がよみがえって、次に続いていく。その途中が金継ぎかなと思います。」

樋口さんの金継ぎが、器が欠けたり割れたりした時の悲しみを新たな愛情に変え、生まれ変わったお皿は大切な思い出とともに受け継がれます。
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