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刑務所のアイドルが“塀の中”でコンサート「元気だせよ」やり直す“心のスイッチ”を押したい 受刑者「家族のことを考えた」佐賀

2024年3月22日 18:29
刑務所のアイドルが“塀の中”でコンサート「元気だせよ」やり直す“心のスイッチ”を押したい 受刑者「家族のことを考えた」佐賀
刑務所で歌い「心のスイッチを押したい」

ことし2月、女性デュオのコンサートが佐賀県鳥栖市で開かれました。会場となったのは、九州で唯一の女性刑務所です。塀の中を舞台に歌い手、そして、罪を犯した女性たちの思いに迫ります。

ステージの上で笑顔を見せる女性デュオに声援を送るのは、罪を犯した受刑者たちです。

塀の中の会場ではさまざまな思いが交錯します。

■朝の点呼
「7室番号!」
「1、2、3、4、5、6、7。」
「7名!」

佐賀県鳥栖市にある「麓刑務所」、九州で唯一の女性刑務所です。20代から80代までのおよそ160人が収容されています。(2024年3月中旬時点)

犯した罪は、窃盗、覚醒剤使用、殺人と、さまざまです。

■刑期18年・ひとみさん(仮名・60代)
「60代です。18年の刑期です。」

ひとみさんは15年前からこの刑務所に収容されています。犯した罪は明かせないといいます。

■ひとみさん
「周りの人にどれだけの影響を与えたのかを考えたら、最初は本当に、自分が生きる資格があるんだろうかと考えた。ここに入って時間を与えられているので、その間に自分の罪と向き合うことを考えない時はない。」

朝の6時半に起床し、掃除、身の回りの点検、刑務作業など、スケジュールは分刻みです。

■ひとみさん
「ここで規律を守らなければ、外に出ても結局同じだと思う。」

罪と向き合い更生につなげるため、受刑者には規則正しい生活が求められます。

規律を重んじる生活の中で唯一、自由に体を動かせる時間が、1日30分の運動の時間です。

♪(歌詞)「元気だせよ。」

受刑者を励ますような歌詞のBGMは、この刑務所の受刑者にとって定番の曲です。

その曲を歌うのが、女性デュオ『Pai×2(ぺぺ)』のMegumiさんとManamiさんです。

■Pai×2・Manamiさん
「2つ(の曲調)が重なっちゃうから、1個こういうのがあっても良いかなと思った。」

この日は、1時間後に開かれるコンサートに向けて、ギリギリまで準備に追われていました。

会場となるのは、麓刑務所です。

『Pai×2』は24年間にわたって全国の刑務所や少年院などで500回以上のコンサートを行ってきました。“刑務所のアイドル”と呼ばれています。

■Manamiさん
「最初は楽しんでもらうためにやっていた。ただ回数を重ねて周りが見えた時に、被害者の方や遺族の方がいるから塀の中に人がいるんだと思って。ちゃんとお互いが考えられる場を作っていかなきゃいけない。」

受刑者が人生をやり直すきっかけになる、心のスイッチを押したい。そんな思いで歌声を届けています。

■麓刑務所コンサート会場
「『Pai×2』さーん!」

麓刑務所では10年ぶりとなるコンサート。受刑者たちはこの日だけ特別に、手を上げ、声援を送ることができます。

♪(歌詞)「元気だせよ。」

コンサートでは、ある受刑者の家族から届いた手紙も朗読されました。

■Manamiさん(朗読)
「面会室の父は笑顔で迎えてくれましたが、『元気か』と言ったきり、何も言わずに泣いていました。」

受刑者の娘が塀の中にいる父親に面会した時の思いをつづった手紙です。

■Manamiさん(朗読)
「たった1人の父が間違いを犯してしまい、被害者の気持ちを考えると決して許される事ではありませんが、家族としてその罪を一緒に背負っていかなければならないと思っています。」

受刑者の家族が背負う苦しみ。

■ひとみさん
「家族のことや周りの人のことを考えさせられた。ちょっと落ち込んだ時や悩んだ時も、すぐに変わることではないが、やっぱり前向きに生活できて、出所までの間に自分がどうすべきかを考えていきたいと思った。」

受刑者の半数が再び罪を犯していて、出所後の更生は決して簡単なことではありません。

会場に響くのは、困難な道のりに勇気を与えてくれる応援歌です。

♪(歌詞)「元気だせよ!」

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