【解説】「陸の警固断層帯」による地震リスクとは 死亡1183人・ケガ2万2508人・全壊1万7967棟を想定【福岡県西方沖地震から20年】
福岡県西方沖地震の発生から20日で20年です。福岡県で、次の地震への警戒を高めるべきと指摘する専門家は少なくありません。特に警戒が必要とされているのが「警固断層帯」です。
■中村安里アナウンサー
「こちらは地震の揺れを体験できるコーナーです。かなり大きな音を立てて左右に揺れています。」
2005年の福岡県西方沖地震の記憶と経験を風化させず、次の災害への備えを進めるため、福岡市は毎年3月20日を「市民防災の日」と定めています。
福岡市早良区の市民防災センターでは、地震への備えを学ぶイベントが開かれました。参加者は、地震に関するクイズに挑戦したり、西方沖地震の最大震度と同じ震度6弱の揺れを体験したりしました。
■小学1年生
「ちょっと怖かった。」
Q西方沖地震を知っていますか。
「うん。本で見たのもあるし、テレビで見たのもある。」
■母
「災害はいつあるか分からないので、自分の身を守る術を学んでほしい。」
■訪れた人
「熊本県から来たのですが、熊本地震を思い出しました。怖い思いをしたというのが伝わって、天災に備えてほしい。」
福岡県内で、次の地震が起きる恐れは高まっているのでしょうか。
今後、地震を起こす恐れのある全国の活断層を調査している、国の研究機関の宮下由香里さんは、ある活断層に注目しています。
■宮下さん
「2005年の段階では警固断層というのは陸にしかないと考えられていて、実際に地震を起こしたのは海の中の警固断層だったので、当時の知見でいうと未知の活断層が地震を起こしたととらえられました。」
玄界灘の海底の下で発生した西方沖地震はその後の調査で、警固断層の北側の活断層で発生したことが分かりました。
宮下さんたちは詳しい分析の結果、西方沖地震を起こした活断層と警固断層は、同じ断層帯「警固断層帯」に属すると結論付けました。
さらに、警固断層帯の陸側では、地震発生の恐れが高まっていると分析しています。
■宮下さん
「陸の警固断層は2005年の地震では全く動いていなかった。海の警固断層が地震を起こしたことによって、ひずみが再分配されて、陸の警固断層が今度は地震を起こしやくすなったと計算されています。」
宮下さんたちは、警固断層帯の地震はおよそ4000年の周期で繰り返し発生していて、前回の地震の発生からすでに4000年近くが経過しているとみています。つまり、いつ地震が発生してもおかしくない状態の活断層に、西方沖地震によって新たなひずみが加わったと考えています。
警固断層帯による地震のリスクも分かってきています。その一つが、断層面の真上のリスクです。過去に、警固断層帯では断層が縦方向に数メートルずれたとみられていて、実際に発生すればビルが倒壊する危険もあります。
さらに、警固断層帯の東側は地下の深い所まで軟弱な地盤で、大きな揺れが長い時間続くとみられています。
また、福岡管区気象台は別のリスクを指摘します。
■福岡管区気象台・伊藤邦敏地震津波防災官
「仮に震源が浅いところで発生した場合、緊急地震速報よりも揺れが早く到達する可能性もあります。身を守る行動は変わりませんので、普段からの備え、どういった行動がとれるかを確認することが一番重要だと思います。」
断層に近い福岡都市圏などでは、緊急地震速報よりも先に強い揺れが始まる恐れがあるというのです。
福岡県が予測した陸側の警固断層帯の地震による被害は、最大で死者1183人、ケガ人は2万2508人、建物の全壊1万7967棟などと想定されています。
福岡県内には警固断層帯以外にも、強い揺れを起こす恐れのある活断層が確認されています。どこも絶対に安全とは言えません。
家の中のものの転倒や落下防止など、日頃からの地震への備えはもちろん、いざという時に学校や職場、家庭などでどう行動するか、普段からイメージしておくことが必要です。
警固断層帯で直下型地震が発生した場合、博多と天神地区では、およそ3万8000人が帰宅困難となることが予想されています。
地震直後は、建物の倒壊や落下物などでケガをする恐れがあるほか、公共交通機関が止まることで混雑も予想されます。
緊急車両が通行できず、救助活動の妨げになる恐れもあるため、福岡市は、むやみに移動を始めず、まずは近くにある公園や広場など、安全が確保できる場所に避難するよう呼びかけています。
その後、帰宅困難者を一時的に受け入れる「一時滞在施設」を利用できます。例えば、天神地区では、市役所のロビーや天神ビジネスセンター、福岡大名ガーデンシティなど14か所です。
施設そのものが被害を受けている恐れもあるため、自治体からの情報を確認してから落ち着いて移動するようにしてください。