今週が卒業式だったという方も多かったのではないでしょうか？

諏訪市の中学校では巣立ちの時を迎えた卒業生たちに特別授業が行われました。

全身が動かせないという難病と闘う元教師から、15歳へ「贈る言葉」です。

特別授業
「人が人と接するときに最も大切な礼儀は笑顔であること。筋肉がなくなり笑顔をだんだん喪ってよくよく分かったことです。」

卒業式を2日後に控えた３月17日。諏訪市の諏訪南中学校で、卒業生151人に向けた特別授業が行われました。

特別授業
「病気になることはとても悲運なことではあるが、人生に活かせる気付きや学びは必ずあります。いつの日か病気になってよかったと言い切りますよ」

授業を行ったのは、佐久市の元教師、有坂栄康（ひでやす）さん。全身が動かなくなっていく難病、ALSを9年前に発症し、喋ることも、立つことも、息をすることすら、自力ではできません。気持ちを伝えるのは目の動きです。

「こっちですか？肘ですか？」

体の自由は奪われても、頭は元気。視線を読み取る装置がついたパソコンを駆使して、この日は、特別授業で使うスライド作っていました。

有坂さん
「巣立つ中学生に応援メッセージかな」

有坂さんは2年前から、かつての教え子たちに手と声を借りて、『命の授業』という講演を、学校や研修会などで行っています。

今回の特別授業で、有坂さんに代わってスライドを読むクレイトン美保さん。有坂さんが初めて担任を持った小学校の教え子で、講演活動を最初から支える一人です。彼女は小学校卒業のとき有坂さんからもらった色紙を、今も大切にしています。

クレイトン美保さん
「先生が一人一人にメッセージを書いて卒業式の日に渡してくれた色紙。生きてくうえでのモットーみたいになって思い出して日々過ごしてます」

巣立っていく教え子を20年以上見守り、一人ずつそれぞれに言葉を贈ってきた有坂さん。元教師として、ALSの患者として、諏訪南中の卒業生に語りかけます。

特別授業
「逃げ出したっていい。何度でも仕切り直して夢や目標 挑戦には向き合えるから。後ろ向きだっていいんだよ。心が折れないように休んでいいんだよ。不思議と生きる力が湧いてきて上がっていく自分を何度も経験したからね」

「私の命を生ききる」と、講演のたびに話す今でもまだ、病気を恨む日はある。それでも、不思議とまた気持ちは復活するという、闘病生活で得た実感です。

特別授業
「2年間で6千人。教え子たちと命の授業を届けた人数です。ここまでくると病気になったことには意味があると強く思いたい。生きる時間は無限ではない。人生は有限で一度きりだということと何のために生まれて何をして生きるのかと少し意識して一日一日を丁寧に謙虚に生ききってほしいと思います」

自分自身も奮い立たせるように、15歳へエールを送ります。

特別授業「こんなに闘病を頑張っているのになぜ分かってくれないんだと心を乱し、自分に足りないところがあると思えず責任転嫁をし、不満や不服を相手に突き立てる。逆に生きているだけで足りている、生きているだけで充分と思えた時 、感謝にあふれました。ALSに多くを奪われましたが、失ったことで当たり前の身の周りにあることが、どれだけ尊いか、人は支えられて生きているということに気づけ、深い感謝が湧きました。病気はこれまで気づかなかったとっても大事な、私を幸せにする感謝の心を教えてくれたんです。人生には悲しいこと辛いことがあります。それに押し潰されそうになる時があります。そんな時、きょうの命の授業を少し思い出し、前に踏み出してくれたら嬉しいです。ご卒業おめでとう。きょうはありがとうございました。

生徒は
「人は人生でするべき事を持って生まれて来てるって仰ってたので、高校生活とかの中で自分の好きなところとかをはっきり見つけたり、何をするために生まれてきたのかなっていうのを考えながら一日一日を大切にして過ごしていきたいなって思いました。」

「全てのことが当たり前じゃなくて、周りの人がいる事も体が動く事も命がある事も当たり前じゃないんだなってことを感じることができました。周りの人間とか本当に大切だなって思いました。」

「生徒会活動の中でありがとうを伝え合おうっていう企画を行ったのですが、周りへの感謝だったり笑顔を忘れずっていう言葉が自分が今までやって来た事とも重なって無駄じゃないみたいな言葉もあって、それとも重なったのがとても嬉しかったです」

有坂さんから卒業生へ最後に一言。

有坂さん
「自分を好きになって自分らしく生きて幸せになって。人生はそのためにあるんだよ」