熊本の木が大阪・関西万博の制服に!木材から作る「木糸」とは?
熊本の企業も携わる「環境にやさしい“服”づくり」をお伝えします。熊本生まれの意外なものが使われていました。
4月、大阪・関西万博の開催まで1年を切る中、医療用スタッフの制服がお披露目されました。この服を織る糸に熊本産のあるものが使われています。それは、天草ヒノキや小国杉など熊本の木材です(熊本以外にも大阪、長野、徳島の木材を使用)。
森林を守るために間引きされた間伐材をチップ状にして麻などと混ぜ、できあがった和紙を細く切ってより合わせた「木糸(もくいと)」が使われています。
今回の医療用スタッフの制服は、木を扱う国内の4社でつくる共同事業体が提案しました。
共同事業体の一つ、天草に本社を置くサーキュライフを訪れました。
■サーキュライフ 川原剛代表
「こちらに並べてあるのが、木糸を使ったそれぞれの商品です」
サーキュライフでは熊本産の木糸で衣類やハンカチなどの生活雑貨を作っていて、最近は地元の団体の制服なども手がけるようになりました。
木糸の制服を提案した理由は?
■サーキュライフ 川原剛代表
「アパレルは、生産する時、使用する時、破棄する時、それぞれ環境負荷が高い。木糸は環境に配慮したという部分は大きいので、多くの方に知ってもらいたいというのが提案した大きな理由です」
国連の補助機関、国連貿易開発会議の調べでは、アパレル産業は世界第2位の環境汚染産業とされています。理由の一つは、大量の水や石油が必要な化学繊維でつくる服の存在です。一方、木糸の原料は木材です。国土の約7割が森林の日本には各地に木糸の資源があり、環境への負荷を減らすことができると川原さんは考えたのです。
ただ、木糸で作った布には天然繊維ならではの特徴が…。
■J.H.FACTORY(木糸の縫製会社) 陣内隆春代表
「木糸だと、ある方向にカールしてくるんです。だから、またあわせる、はぎ合わせるのが大変」
水分量が変わると木糸の布は伸び縮みするため、化学繊維に比べ縫製が難しい面も。しかし、環境への負荷は大きく減らすことができます。SDGsを意識した運営を目指している万博側は。
■2025年日本国際博覧会協会 垣屋知里さん
「国産の間伐材が原料である木糸は、自然環境で分解されやすくて環境に優しく、大阪・関西万博が目指すものと合致していたので使わせていただくことになりました」
実際に木糸の制服を手に取った感想は?
■2025年日本国際博覧会協会 垣屋知里さん
「実際に着てみると、思ったより軽くて驚きました。触り心地はとてもサラサラしていて、他の布にはない温かみと独特な風合いがあるなと感じました。万博が開催される暑い時期にも、気持ちよく着ていただけるユニフォームだと思います」
環境にやさしい取り組みを進める中で、サーキュライフの川原さんは新しい挑戦を始めています。それは「草木染め」。染める材料には、天草産の柑橘「不知火」や、熊本城の桜など地域らしさを取り入れます。
さらに、今までよりも低い温度、短時間で染めることができる独自の染料を開発。CO2排出削減にも取り組んでいます。
全ての置き換えは難しくても、環境を考える「初めの一歩」へ。川原さんは、万博の制服はそのきっかけになると考えています。
■サーキュライフ 川原剛代表
「万博はいろんな国の方もいらっしゃると思うので、そういった意味で一つの日本の新しいマテリアル(素材)として木糸というものがあると。選択肢の一つになればいいと思っています」