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「挫折してもゆっくり歩けば大丈夫」心の病を抱える人たちの社会復帰を支援する施設に密着

2024年6月17日 19:33
「挫折してもゆっくり歩けば大丈夫」心の病を抱える人たちの社会復帰を支援する施設に密着
100年ボンド代表・泉俊雄さん

うつ病や依存症などの精神疾患がある人は今、日本に419万人いるといわれます。心の病を抱える人たちを支援する熊本市のある施設を取材しました。

熊本市西区にある障害者自立訓練施設「100年ボンド」。熊本市から委託を受け、うつ病や精神疾患、引きこもりを経験した人などの社会復帰を後押ししています。施設の代表を務めるのは泉俊雄さん(54)。施設を作った背景には、自らの辛い経験がありました。
■100年ボンド代表 泉俊雄さん
「自分が30歳の時に、ジストニアっていう病気になり、目が開かなくなって仕事が続けられなくなった」

20代の頃からホームページを作成する会社を経営していた泉さん。仕事を始めて3年後、多忙によるストレスで突然、両目が開かなくなる病気になりました。通院を続けたものの、治る兆しが見えず、廃業することにして故郷の菊池市に帰ってきました。

その後、豊かな自然に囲まれ、母の手料理を食べる生活を続けた結果、自然に病気が治ったといいます。
■100年ボンド代表 泉俊雄さん
「自分みたいな人を救いたいという思いで、福祉の仕事をしたいと思って100年ボンドを立ち上げた」

2023年度、熊本県内の支援団体に寄せられた引きこもりの相談件数は約3500件。「100年続く仕事と仲間に出会ってほしい」と名付けられた100年ボンド。開設して3年が経ち、今は16人が施設を利用しています。

(ディレクター)
「今、何をされているんですか?」
(施設の利用者)
「カエルとっています」
(ディレクター)
「カエル?カエルをとってどうするんですか?」
(施設の利用者)
「いや別にどうもしないですけど…どうもしないですけど、とっているんですよ。暇だから。ほら、カエル」
(ディレクター)
「おぉ、デカっ!!」

■施設の利用者
「大学を辞めてから、なんか外に出たくなくなっちゃって。それで引きこもっちゃったていう感じですかね」
■施設の利用者
「仕事が忙しくて、倒れちゃって。うつ病になったりした」

施設の利用者は、野菜や薬草を育てながら自然と触れ合い、心身の健康を取り戻そうとしています。泉さんは農作業のほかにも、興味を持ったことは、どんどんチャレンジするよう利用者を促します。
(施設の利用者)
「パソコンの練習をします」「ネギ栽培の動画を見て、栽培の勉強します」「水出しコーヒーを作るので、水出しコーヒー用の焙煎を作ってみます」

コーヒー豆の焙煎をする山下龍二さん。100年ボンドではコーヒー豆の販売もしています。
■山下龍二さん
「焙煎も難しい面もあるんですが、一番難しいのは、ブレンドが一番難しいです。あっ、いい感じだ。あっ、いい香り」
Qきょうの出来はどうですか?
「いつものことですけど、最高です」

コーヒーの話になると自然と笑顔になる山下さん。山下さんが100年ボンドを利用するようになったのは、10年前の出来事がきっかけでした。
■山下龍二さん
「うつ病を発生して、コミュニケーションを取るのが難しくなって、それで引きこもるようになって…」

当時、電気工事や内装の仕事をしていた山下さん。短期間で次々に現場が変わり、その度に新たな人間関係を構築しなければいけないことがストレスに変わり、うつ病を発症しました。

山下さんは今、グループホームで暮らしています。身寄りのない人や刑期を終えた元受刑者など13人と一緒に生活しています。10年前、うつ病となった山下さんは仕事ができなくなり、収入もゼロに。その結果…。

■山下龍二さん
「仕事もしていないもんですから、 アパート代も払えないような状態になって、結局万引きをして。2回目の裁判の時に、うつだから、あなたは病気だから、キチっと療養をして、生活を整えて、二度と罪を犯さないようにして下さいということで執行猶予を頂いて出てきたんです」

罪を犯したことをきっかけに、初めて自らの病気と向き合えたという山下さん。自慢のコーヒーを100年ボンドの仲間にふるまいます。

(施設の利用者と会話する山下さん)
「カフェに行くと、そこ独特の焙煎のやり方、温度の出し方、粉の挽き方っていうのがあって、だから店員に聞くと、勉強になるよ」
「色々ね、カフェにも行って」

山下さんは、100年ボンドに通うようになり、前向きな気持ちになったと話します。
■山下龍二さん
「ここにいろんな人がいるんですね。同じ職種じゃないし、違う人がいるし、年齢も別々で刺激も頂けますし、冗談も言い合える安らげる場所ですね」

山下さんは今、再就職に向け自動車免許の取得にも挑戦中です。

■100年ボンド代表 泉俊雄さん
「山下さんはまだ60代なので。これからもう一回チャレンジしたいという夢があって、それを実現してほしいと思って応援したいと思っています」

心を病んで挫折したとしても、ゆっくり歩いていけば大丈夫。100年ボンドの存在が、通う人たちの背中をそっと後押ししています。

【スタジオ】
山下さんは、無事に普通自動車免許を取得し、早ければ7月中に就職活動をするそうです。そして山下さんの最終的な目標は、山を購入してカフェを開き、たくさんの人々が集まる場所を作ること。その夢がかなったら、県外に住む息子さんやお孫さんに会いに行きたいと話していました。

100年ボンド代表の泉さんは、全国にこういった自立支援施設を増やしていきたいと話しています。

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