「1時間22分の人生を生ききった」亡き息子とともに生きる女性の新たな挑戦
生まれる前に赤ちゃんが亡くなる死産は50人に1人、流産を経験しているとされる母親は6人に1人という統計があります。合志市で暮らす女性は、生まれて1時間あまりで我が子を亡くしました。亡き赤ちゃんとともに生きる中、始めた挑戦を追いました。
合志市に住む澤野典子さん(36)と夫の史憲さん(51)、息子の翔空くん(1)。翔空くん歯も生えて、自分でごはんを食べられるようになりました。澤野さんたちにはもう1人、家族がいます。長男の蒼空くん。生まれてすぐに亡くなりました。
蒼空くんは、3年ほどの不妊治療を経て授かりました。しかし、妊娠5か月(16週)で染色体の異常が見つかりました。出産予定日1か月前の34週に自宅で破水。蒼空くんは1時間22分の人生を全うしました。
■澤野典子さん
「手をつないだその時は、ありがとうばっかり。9割ありがとう、ごめんねの一言と、大好きだよって。今しかないと思っていたのかわからないけど、なんかありがとうだった」
生きていれば、蒼空くんは3歳。澤野さんは今も赤ちゃんを亡くした家族が集う場をつくり、同じような経験をした人のサポートを続けています。
■参加者
「思い出すきっかけになるし、子どもの大切さをさらに心に刻むことができる時間でした」
■澤野典子さん
「笑顔で過ごせる時間があるのはうれしい。今の私ががんばれるペースでがんばりたい。楽しんでいきたい」
今を自分らしく生きるために…踏み出した新たな一歩
亡き命とともに生きる中、「今の自分」で人生を楽しみたい。澤野さんは一歩を踏み出しました。それは、SDGsをテーマに内面からの美しさを目指すコンテスト、「ミズエシカリンクジャパン」への出場です。
コンテストで問われるのは、いかに自分の思いを伝えられるか。与えられるスピーチの時間はわずか30秒です。
■澤野典子さん
「日常生活が続く中で、今の自分として新しい挑戦をしたかった。もちろん、自分もそういう(子どもを亡くす)経験者というのは入れたいですよね。その会場の中にもいるかもしれないし」
7月14日。福岡市で開かれた九州地区のファイナリスト10人が福岡に集まりました。ファイナリストの中には澤野さんの姿も。