人口10万人あたり交通事故死者数が全国ワースト3位…2024年愛媛で発生した事故の特徴は
1887件。今年、先月末までに県内で発生した人身事故の件数です。去年の同じ時期と比べて43件減少しています。一方で亡くなった方は46人。去年より11人増えていて、とても深刻な状況です。
実はこの“46人”、四国ではとびぬけて多い数字で、人口10万人あたりの交通事故死者数は3.56人と、全国でもワースト3位となっています。
1件でも悲惨な事故をなくしたい。来年こそ“事故0”を目指すべく、県内で発生した事故のポイントを読み解きます。
歪んだタイヤに、へこんだカゴ…9月。松山市内の交差点で軽自動車と自転車が衝突。自転車に乗っていた高齢男性が死亡しました。県内ではことし自転車の事故で7人が亡くなっていて、3人だった去年のおよそ2.3倍に。誰もが乗れる身近で手軽な乗り物である一方、れっきとした“車両”でもある自転車。
今年、その自転車のルールに大きな変化が。11月、全国で施行された自転車の『ながらスマホ』と『酒気帯び運転』の罰則強化です。ながらスマホは『6か月以下の懲役または10万円以下の罰金』。14歳以上が検挙の対象となっています。
身近な乗り物の罰則強化に街の人は…
高校生:
「えっ?!10万…」
「ちょっと厳しいなと思います。重い…」
女性:
「厳しいですけど違反しなくなる糧になるかなと思いますね」
また、『酒気帯び運転』に対しては呼気1リットルあたり0.15ミリグラム以上のアルコールの保有で、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。
法改正後、県内では先月末までに自転車で酒気帯び運転やながら運転をしたとして7人が検挙されています。
一方で、嬉しいニュースも。2位の大分県に20ポイント以上差をつけ、愛媛が2年連続で全国1位となったのは…“自転車のヘルメット着用率”です。
細かく見ると、中高生が100%近い着用率だったのに対し、高齢者が32%、成人が42%と低い数字に。「大人」の着用率アップが課題です。
建設マネジメント四国 松山営業所 山田久男副所長:
「5名とも(ヘルメット)。100パーセントの着用率。社内規定の中で」
松山市のこの会社では、去年1月以降、自転車で通勤するスタッフのヘルメット着用と自転車損害賠償責任保険への加入を社内ルール化しました。
スタッフ:
「被らないと乗ったらいかんという感覚。今は」
スタッフ:
「(自分が被っているの見て)義務化になったからと、親は『被らなきゃ』って」
県警バイシクルユニット隊 井上貴志警部:
「(自転車事故で)半分近くの方が頭を打ってしまったことが原因で亡くなっているという統計もありますので、頭を守るということでヘルメットの着用を訴えていきたいと思っております」
県警によると、自転車乗車中に亡くなった7人のうち、ヘルメットを着用していた人は1人でした。
今年、交通事故で46人が亡くなった愛媛。中でも…
今治警察署 交通課 堀田大樹警部:
「車両の単独事故がかなり多いというところがあります」
県内では22人が“車両の単独事故”で亡くなっていて、前の年の同じ時期と比べると2倍に増えています。要因の一つと考えられているのが…スピードの出しすぎです。
県警は今年、県内全域でスピード違反の取り締まりを強化しました。
事故の発生率を高めると同時に、重大化の原因にもなる『スピードの出し過ぎ』。
危険が及ぶのはドライバーに限らず…
県警交通企画課 塩見浩二警部:
「令和5年中の県内の交通事故の 衝突前の平均速度は約25キロなんですが、死亡事故ではこれが約50キロと2倍のひらきがあります」
こちらは、去年1年間に県内で発生した車と歩行者の衝突事故における致死率を速度別にまとめたグラフです。
20キロ台では5.7%ですが、30キロ台ではおよそ倍の11.1%に上昇。50キロを超えると、一気に60%へ跳ね上がります。
普段からスピードを抑止する工夫も導入されています。大洲市菅田地区の生活道路に整備された“ゾーン30プラス”。
警察が全国で進める最高速度・時速30キロの区域規制「ゾーン30」と、ハンプなどの設置物を組み合わせ、生活道路をより安全な通行空間にすることを目指す取り組みです。
エリア内にはハンプや段差舗装など主に4つの対策が施されています。
再来年の秋には、生活道路の法定速度を時速60キロから30キロに引き下げられることが閣議決定された今年。多くの人が日常的に利用する生活道路でのより慎重な運転が、ドライバーに求められます。
4月、宇和島市内に設置した情報カメラがとらえたひき逃げ事件の瞬間。画面左下の横断歩道を自転車で渡る男性に、左折してきた白い車が衝突。運転者は、近くに車を停め、いったんは現場に戻ってきたもののおよそ3分後、再び車に乗り込みその場を立ち去りました。車を運転していたのは高齢の男性でした。
県内では、先月末までに高齢ドライバーが過失の大きい第一当事者となった事故件数は514件。事故全体の、およそ3割を占めています。
そんな中、高齢者自身、そして家族が考えるのが…
酒井喜義さん:
「返納…」
Q.しようかと?
「はい…もう(運転は)無理だろうと思って決めた」
この秋、運転免許の自主返納を決めた西予市城川町遊子川地区の酒井喜義さん、95歳。
「医者に行ってももう何年も前からもうやめないけんぞと言われていて」
ドライバー歴60年近くの喜義さん。免許の返納を決断した今も、気持ちは複雑です。
酒井さん:
「やっぱここが車がなくなったら生活が難しくなるので一番それが心配」
人口245人のうち、65歳以上がおよそ60%を占める遊子川地区。近くにスーパーや病院はなく、定期バスもありません。免許返納後は息子の孝志さんが両親の生活をサポートします。
息子・孝志さん:
「拠点は私松山に住んでいるが(遊子川)も半分、平日帰ってきて土日松山の自宅に帰るとか」
一方、人口およそ2300人の今治市大三島・上浦町では、2年前に会員制の乗合タクシー「チョイソコおおみしま」が誕生しています。今治市と地元のタクシー会社などが協力して毎日運行。移動手段が限られている高齢者を支えています。
80代の女性:
「私は大助かり。もうお父さん(旦那)も90歳に近いからバイク辞めないといけない」
Q免許返納した後は?
「これ乗りますよ」
停留所はスーパーや病院など、島内に、およそ120か所。運賃は大人が一律400円で、65歳以上や、免許の自主返納者などは半額の200円で利用できます。
すでに車の免許を返納して、チョイソコを利用する人も。
80代女性:
「便利ですよこの車はね。このように(チョイソコの)お兄さんの車が十分間に合うので、免許がないのに不自由なことは全然ない」
交通事故の被害者、そして加害者とならないため、いま私たちができること…チャンネル4が今年取材した交通事故ゼロを願う人からのメッセージです。
物流会社の所長:
「何の為に安全運転するかというのは、会社のためでもなく自分のためということを認識してもらったら、おのずと安全運転することができると思います」
サイクルガイドの女性:
「心の中ではね、どうぞケガしないように、事故にならないように、朝はほんと自動車にしても何にしても通勤時間帯はけっこうスピードが出てますのでね、事故だけが心配です」
津田中学校PTA会長:
「小さなことの積み重ねでしか子どもたちの安全って守っていけないんだろうなと思って。ちょっとずつ優しさをもうひとつ前に出していただいて、周りを見ていただくと子どもたちも安心できるし、交通事故も減るんじゃないかなと思ったりするんですけどね」
チャンネル4は来年も、皆さんと一緒に愛媛の交通事故を考えます。