西日本豪雨から6年…甚大な被害受けた“肱川流域”で進む復興まちづくりと災害への備え
愛媛で33人が犠牲となった西日本豪雨から7日、6年を迎えました。各地で氾濫による甚大な浸水被害があった肱川では、堤防をかさ上げするなど大規模な改修工事が行われ、ことし節目を迎えました。
5日午前11時。肱川が流れる西予市野村町では…
僧侶:
「当たり前の日常を突然に奪われし怒り、くやしさ悲しさ戸惑い、苦しみ。6年を経ても なお癒えることやあらん」
肱川沿いに建設中の復興公園「どすこいパーク」の復興記念碑の前で、法要が営まれました。
6年前の7月7日、野村町では中心部を流れる肱川が氾濫し、浸水被害によって5人が亡くなりました。法要には県内の僧侶11人が集まり、お経を読み上げて犠牲者の冥福を祈りました。
四国八十八ヶ所霊場 第42番札所 仏木寺 松本明慧住職::
「命を呈して私たちに教えてくださった防災の学びを しっかりと受け継ぎながら、今後来るかもしれない災害に備えていきたいと思っております」
その、すぐそばでは…
語り部:
「倒木と言うか木が倒れて…橋の欄干に突き刺さって。川の水が、そこでまたせき止められて(川の水が)それを越えてグーンと…」
地元の小学生が町を歩きながら、豪雨の被害を伝承する語り部から避難の重要性や命の大切さを学んでました。災害の記憶を次の世代に引き継ごうと、野村小学校が毎年この時期に行う「命の日」特別授業です。
語り部:
「あそこに黒い点々となっているんですけど、そのふたを開けるとトイレになるというマンホールトイレ。 こういう物が作ってあるの知ってましたか?」
街歩きの後は、「災害伝承展示室」がある乙亥会館へ。
語り部:
「今、川を渡ってみたけれど、そんなにあふれるような川には見えないでしょう?災害は、思ってないけど、急に起こるというものだということを、そして命の大切さということを知っておいてください」
女子児童:
「どすこいパークの近くで5メートル近く水がきていたって説明されたところが、とても大変だったんだろうなと思いました。避難リュックとかを用意しておこうと思いました」
女子児童:
「公園には、防災用のご飯を作るところやトイレまでちゃんと整備されていたのですごいなと思いました」
男子児童:
「怖いけど、ちゃんと対策すれば被害がそんなに出ないので真剣に取り組んだほうがいい。災害から6年しか経っていないのに、小学校もすごく楽しくて、他の町とは違う面白さを感じています。みんなが、知らない人でも一緒に『おはようございます』って言える、とても楽しいまちになったらいい」
肱川周辺では住民らによる復興まちづくりが進んでいます。三島神社の周辺では菜園や緑に触れられる広場を建設中。野村大橋の周辺では河川改修工事も行っています。
野村町よりも下流にある肱川の支流 河辺川です。
山鳥坂ダム工事事務所 弘田真一副所長:
「まさしくここにダムができる。山鳥坂ダムの主な目的は洪水調節。それから流水の正常な機能の維持」
新しいダム建設のための工事が進められていました。
弘田さん:
「あそこに見えますが一番上に黒と白の表示板があるが上のところがダムの高さになる」
2032年度の完成を目指す「山鳥坂ダム」。建設中の今しか見られない3つの空間を案内してもらいました。
最初に向かったのは、河辺川のすぐ近くまで降りた場所にある、長さおよそ90メートルの真っ暗な洞窟。
弘田さん:
「今入ってきて15メートルくらい。ここから奥の強い岩盤の上にダムを建設する」
周辺の100か所以上で地質調査を行っている山鳥坂ダム。その時に掘られた横穴のひとつが、この洞窟のような空間なんです。
弘田さん:
「大きい構造物が岩盤の上に乗るわけですからそれに耐えれる岩盤でなければいけない。岩盤の強度を確認する」
ダムを建設するときには埋めてしまうので今しか見られない舞台裏です。
続いては現在工事中の長ーいトンネル。
弘田さん:
「これがコンクリートを打ち付ける作業。ここは特に橋とのつなぎの部分になるので鉄筋で沈まないように」
ダムによって河辺地区に向かう県道の一部が水没するため、新しい県道が作られています。
現在は一車線の県道。今回の工事を機に二車線を進め、より安全な県道として生まれ変わります。来年度には2つのトンネルも開通し、鹿野川地区からおよそ4キロの区間が新しい道に切り替わるということです。
最後は。
弘田さん:
「これが仮排水トンネル河辺川の水を下流に流すためのトンネル」
河辺川を迂回させるための全長670メートルのトンネルです。
「締め切りをするものが必要になる。ここを締め切ると川がこっちに流れなくなり、このトンネルを通って下流に抜けていく」
今後、建設工事が本格化する山鳥坂ダム。
弘田さん:
「一日でも早くダムが完成して治水効果、それからさきほどの付替え道路が一日も早くできて、住民の利便性が上がることを目標に進めていきたい」
場所は変わって野村ダムです。
肱川ダム統合管理事務所 多田寛管理課長:
「下をのぞいてもらうと青い四角があるが、あそこにゲートができるようになる」
こちらでは、既存のダムに穴を開けて新しい放流設備を取り付けるための工事が進んでいます。
現在新しい設備の基礎を建設中で、2027年度完成予定です。
このほか、東大洲地区では都谷川などの内水氾濫を防ぐため常設の排水施設を建設したり、より踏み込んだ流域治水プロジェクトを進め、官民が連携して治水能力の向上を目指していくということです。
肱川の近くでいちご園を20年営む川本英男さんです。
川本さん:
「平成30年の西日本豪雨ではこのハウスの屋根の上、4メートル以上の濁流に飲まれたっていうのがありましてハウスの中の設備っていうのがかなりぐちゃぐちゃにやられました」
西日本豪雨に限らず、これまでに幾度となく浸水被害にあってきたこの場所。そのたびに川本さんは懸命に立ち上がってきたといいます。
川本さん:
「よっぽどの大雨でない限り洪水も起きないという安心感が出来ましたんで」
新たな堤防の完成後も万が一に備え、機材の移動方法などを考えているという川本さん。これからも肱川のほとりでイチゴを育てます。
肱川に隣接する大洲市の小学校では。参観日に合わせて小学4年生と保護者が一緒に災害への備えを考える授業が行われていました。
大洲河川国道事務所 堀本隆一水防企画係長:
「肱川ではどのような災害や被害があったのか書きましょう」
肱川の特徴や6年前の西日本豪雨でどんな被害があったのか。親子で話し合いながら地域の災害や必要な備えについて学んでいきます。
堀本さん:
「災害が起こった時のためにいろんな情報を調べておくということも大事な備えのひとつです。今日帰って家庭の方でどんなことができるか話してもらったら」
堤防が完成してもなくなることはない災害。流域全体で防災意識を高めていくことが次の災害で被害を減らすためにも重要です。
児童:
「肱川でなぜ洪水が起きるのかよくわかってよかった」
保護者:
「安心して暮らせるようになったと言われているが、自然のことなのでどんな大雨が降るかわかりませんので備えというのは大事」
児童:
「いつも警戒しておかなければいけないんだなと思いました」
保護者:
「何か起きたときにいつも備えはきちんとしておかなくちゃと思っているが、いざやるとなるとあとでいいかとなっているので、こういう機会のたびにきちんと備えをしておかないといけない」