なぜ?後を絶たない飲酒運転の事故…検挙され「全てを失った」M氏の証言
愛媛県内では、検挙者が1年で48人増加するなど「飲酒運転」による事故が後を絶ちません。どうして飲酒運転をしてしまうのか。4年前に飲酒運転で検挙されたMさんの証言です。
杉本記者:
こちら、今年に入って県内で発生した事故の様子を表した図です。
松岡キャスター:
場所は、松山市内のスーパーの駐車場と交差点ですね。
杉本記者:
まずは、スーパーの駐車場。今月18日の日中、バックで駐車しようとしていた軽四に、普通乗用車が衝突しました。
そして、先週24日の早朝には赤信号で信号待ちをしていた軽四に、普通乗用車が後ろから追突。そのまま、対向車線にはみ出し信号機の柱に衝突しました。
この2つの事故、共通していたのは、赤い方の車の運転手が『飲酒運転』をしていたということです。県内の飲酒運転は新型コロナが流行した時期は減少傾向だったものの、直近3年連続で増加していて…
去年、「飲酒運転」で検挙された人は275人と、おととしと比べ48人増加しました。厳しい罰則と行政処分があるにも関わらず、なぜ、飲酒運転は後を絶たないのでしょうか。
愛媛県警の交通機動隊で日々、飲酒運転の取り締まりにあたっている太田警部補です。
太田警部補:
「こちらの管に差し込んで、これを引いてロックすることで2分間測って…」
杉本記者:
「アルコールが含まれているとしたら」
太田警部補:
「このオレンジ色が白に変わっていきます」
杉本記者:
「0.15…この数字が」
太田警部補:
「そこを超えると検挙の対象となってきます」
道路交通法では、呼気1リットル中0.15ミリグラム以上のアルコールが検出されると、『酒気帯び運転』として3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられるほか、免許停止や取り消しの行政処分があります。
また、まっすぐ歩けないなど‟正常な運転ができない恐れがある状態”とみなすと『酒酔い運転』となり、この場合免許は取り消し、5年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられます。
飲酒運転にはどんな危険性があるのか?
杉本記者:
「ほわんわんっていう物が二重に見えるというか、ふらつく感じ。すごく再現されてますね」
酩酊、いわゆる‟酒酔い”状態を疑似体験することができるゴーグルをつけて、教習所の運転シミュレーターを体験させてもらいました。
杉本記者:
「距離感、持つ物の距離感が全くさっきと違います。遠く感じたり、逆にすごい近くに感じたりしてて、 もう今から怖いです。さ…(シフトレバー掴めず)今これほんとにわざとじゃないんですよ。ここの距離感がつかめない!ドライブに入ったかも分からない」
運転してみると…視界が揺らぎ、距離感がつかみにくくなるため車線をはみ出し…
杉本記者;
「あー、もう距離がつかめないんですよね。線を越えちゃう右側」
コントロールで精いっぱいになり、脚に力が入るため、スピードを出しすぎてしまいました。
石原自動車教習所 指導課長 穐岡文夫さん:
「実際にもしお酒を飲んで運転してるって考えたら気も大きくなるし、自信過剰で走るのでスピードも更に出やすいだろうし、通常なら止まるかなと思う所も、行ってしまえという判断になるかもしれない」
厳罰化が進み、職を失うなど社会的制裁を受けることがあるにも関わらず、なぜ、飲酒運転をしてしまうのか。飲酒運転をした人の多くが「理由」をこう語ると言います。
愛媛県警 交通機動隊 太田幸児警部補:
「短い距離だから大丈夫だと思ったとか、お酒を飲んだけど 酔ってないから大丈夫とか、警察官に捕まることはないだろう、と言う感じの理由ですかね」
こちらは去年南海放送アプリで実施した、飲酒運転に関する視聴者アンケートです。
「Q.飲酒運転は、なぜ無くならないと思うか?」という質問に対し、最も多い70%の人が「自分は大丈夫と思っている」「少量ならいいだろう」など『運転手本人の意識の問題』ではないかと回答しました。
アンケートで『すべてを失った』と回答した、東温市に住む40代のMさんです。
Mさん:
「警察に見つからなければいい、と思ってる考えは、たぶん警察に捕まるまで分からないと思います」
4年前、酒気帯び運転の疑いで検挙され、有罪判決を受けました。
「夫婦喧嘩をして、カッカしてお酒に手を出して運転したって感じ」
妻とケンカした翌朝、体に酒が残っていると自覚しつつも、朝7時頃からミニバンを運転。その途中、コンビニでストロング系の酎ハイを2本購入し…
「運転して、その場所行って飲んで、また運転して、またその場所行って飲んでって感じ。駐車場に車を停めようと思って、その駐車場が狭かったんで、何回も切り返しをしてたら、ちょうどパトロール中のパトカーが通りがかって」
巡回していた警察官に呼び止められ検査をすると、基準値のおよそ5倍のアルコールが検出され、「酒気帯び運転」の疑いで検挙されました。
「人生終わった、っていうような感じでした」
検挙されるのは初めてでしたが、運転免許は取り消しとなり、懲役6か月、執行猶予3年の有罪判決を受けました。
「報道等はされてないんですけど、やっぱり誰にも言えなくなって。一緒に住んでる家族しか知らないって感じなんで、外にも出れない感じで」
当時勤務していた会社からは退職を促され、「自己都合」として退職。妻とは離婚し、家に引きこもる生活が続きました。
Q.当時罪の意識はあった?
Mさん:
「お酒を飲んで、自分じゃない状態になってたので、ほんとに警察に捕まるまでは分からなかったと思います。コロナ前までは、会社での飲み会、飲み会が好きで、その時はまだ楽しいお酒、飲酒運転はしなくて、公共交通機関を使ったり家族に迎え頼んだりして、そういうことはなかったんですけど」
‟楽しいお酒”が変わったきっかけは、新型コロナだったと振り返ります。
「会社関係の飲み会が一切なくなって、自宅で飲むようになった。あと、夫婦間での不仲ですかね」
好きだった飲み会が減ったこと、妻との不仲など、ストレスが重なり、酒を飲む量が増加。
「焼酎の飲む量が増えていって、もう最後自分がどんくらい飲んだかも分からなくなるくらい」
検挙から1年後、病院で『アルコール依存症』と診断されました。
「カレンダーに書いていってるんですけど、自分がお酒を飲んでない日。それが400日過ぎたところです」
2回の入院生活を経て、現在、週2回自助グループの「断酒会」に通っています。検挙前と比べると収入は半分以下に減ったものの知り合いの仕事を手伝いながら、子どもを育てています。
「今も(飲酒をして)車走ってる人って、何人かはいると思うんです。見つからんかったらいいやろうという感じの人。普通に考えたら悪いと思うんですけど、逆に事故も起こしてないし、人に迷惑…家族や親にはかけてますけど、 人に何かを与えてはなかったんで、その状態で検挙されたことはよかったと思っています」
杉本記者:
こちらは、去年厚生労働省が公開した「アルコールウォッチ」というツールなんですが、飲んだお酒のイラストを選ぶと…アルコールを分解する目安時間を計算し、運転を控えるべき時間が分かります。
また、Mさんの話にもあった、アルコール依存症。本人が自覚しづらいことが多いそうです。依存症の相談に応じている愛媛県心と体の健康センターによると、「自分のアルコールの飲み方に悩んでいる」「家族など周りに生活に支障が出て心配な人がいる」場合は、1人で抱え込まず気軽に相談してほしいということです。