【特集】アジア人女性初の「プリンシパル」に 新潟市出身・バレエダンサー横山瑠華 「チャンスが少ない新潟で公平にチャンスを」故郷で実現したかったこと プロとしての挑戦 《新潟》
世界を舞台に活躍する新潟出身のバレエダンサーが、ことし8月、地元の子供たちに向けてイベントを開きました。
海外で活躍してきた彼女が抱いてきた苦労や葛藤、そして未来のバレエダンサーに向けて伝えたいこととは。
表情豊かな演技で会場を魅了する1人の女性。
新潟出身のバレエダンサー横山瑠華(るいか)さんです
≪横山瑠華さん≫
「自分の価値を作り上げるのもこの職業あってのことだと思うので、やっぱりバレエとどれだけちゃんと向き合えるのかによって自分の人生も変わってくると思うので」
15歳で海外へ進出し世界を舞台に活躍するプロのバレエダンサーに。
そんな彼女の魅力を共演者は?
≪共演者≫
「むっちゃ飛ぶし、むっちゃ回るし、荒くないというか、女性的ですごい上半身とか美しくて横で舞台に立っているときずっと見すぎて、やばい自分の出番だ!ってなるくらいすごい人です」
2023年までジョージア国立バレエ団に所属、バレエダンサーで最高の階級である「プリンシパル」に上り詰めました。
ふるさとで開いたワークショップ
そんな彼女がことし8月地元新潟で開催したイベント「バレエガラ・ザ・トークショー」
≪横山瑠華さん≫
「今日は私がずっとプロになってから新潟でやりたかった子どもたちの未来をつなげるためのイベントです」
今回、世界の著名な劇団で経験を積んだプロのバレエダンサー11人が新潟に集まり公演やワークショップを実施しました。
≪男性バレエダンサー≫
「ワークショップと公演が一緒になっているっていうのは初めてですかね、人生で。少し地方とかになるとあんまりないので頑張ってほしいです」
プロの技から学びたいと集まった子供たちの目は真剣そのもの。
≪参加した子ども≫
「体の使い方とかそういう難しくて細かいところを知りたいです」
今回のイベントはこれまで海外を見てきた瑠華さんが地元・新潟で実現したかった挑戦の一つでした。
母校の中学校を訪ねる
学生時代は活発で体を動かすことが好きな女の子。体育祭では副団長も務めました。
瑠華さんが中学校生活3年間を過ごした思い出の場所、新潟市秋葉区にある新津第二中学校。
久しぶりに母校を訪ねました。
≪横山瑠華さん≫
「だいぶきれいに変わってる!」
「私が最後3年生の時に学んでいた教室です。懐かし過ぎる。でも(教室の椅子や机が)思っていたよりちっちゃい」
Q)席はどの辺でした?
「席替えでいろいろなところに座っていたんですけど記憶が強いのはやっぱりここら辺?後ろだと遊べますから」
この場所から瑠華さんは世界へと羽ばたいていきました。
1997年、旧新津市(現新潟市秋葉区)の生まれ。バレエとの出会いは4歳の時でした。
≪横山瑠華さん≫
「体がもともと柔らかかい子だったみたいで母がバレエスタジオに連れて行ってくれた」
娘のポテンシャルを見抜いた母の勘は、的中。瑠華さんは中学生でコンクールに入賞しました。
そこでもらったのは賞だけではなく、ポルトガルへのバレエ留学の切符でした。
≪横山瑠華さん≫
「(高校)受験シーズンになった時に同級生が受験に向けてギアを入れた時に私はどうするのか?そこでちょうどいただいた入学許可だったので迷うことなく、行きますと」
親元を離れ海外に身を置く決意をした瑠華さん。
バレエダンサーの卵だった15歳は初めて“世界”を知ることに。
≪横山瑠華さん≫
「日本と共通していることが一個もないみたいな感じでしたバレエでもこんなに違うのかっていう、もちろん体型から、それこそ流派も違いますし違いしかなかったですね」
言語も文化も違うポルトガルで一生懸命送った学生生活。
音楽学校を卒業後、ジョージア国立バレエ団に就職。芸術監督ニーナ・アナニアシヴィリの元、プロとしての道を歩み始めました。
そして、20歳の時に転機が。
チャイコフスキー作曲の「眠れる森の美女」ではじめて主役に抜擢されたのです。
ジョージア国立バレエ団でアジア人女性初のプリンシパルです。
≪横山瑠華さん≫
「そこからバレエと初めて向き合った感じで、初めてバレエのスイッチがしっかり押されたって感じで、主役っていうのは役柄でもそうですけど主役のために舞台が動いているので、そこで初めてこんなにも責任のあるものなんだと」
主役を務めるプレッシャーと戦っていた瑠華さん。それでも日々高みを目指そうとひたむきに役と向き合ってきました。
それから数年後、ダンサーの階級では最高位で60人以上いる劇団員の中でたった4人、カンパニーの顔ともいえるポジション「プリンシパル」に昇格。
ジョージア国立バレエ団ではアジア人女性として初めての快挙でした。
≪横山瑠華さん≫
「嬉しいのはもちろんですけど、嬉しいよりももっと頑張らなきゃって感じでしたね。バレエをやっている人は一番上のプリンシパルを目指しますから。アジア人の方が体形的にも恵まれていないことが多いし自分も一番上の階級にしてもらって日本人を代表してちゃんと責任をもって頑張っていかないとなって感じでしたね」
去年、およそ7年務めた劇団を退団
現在はイタリアを拠点にフリーで活動する傍らワークショップを通じて子供たちにバレエを教える活動をしています。
新潟市でのワークショップ。
この日子どもたちが教わっていたのはバレエの基礎となる部分。
1人1人の動きをプロの目で見極めます。
もちろん瑠華さんも……。
≪横山瑠華さん≫
「手の置いている位置とか使い方によっても動かし方も変わってくるしこれは間違いだよ、やると自分が大変だよとか教える感じで」
瑠華さんが地元新潟でイベントを開催したわけは……。
≪横山瑠華さん≫
「こんな踊り方があるんだ、こんな考え方があるんだ、こんな生き方があるんだっていうちょっとした新しいを届けることで、色々な発見だったりとかあると思うし、チャンスが少ない分あえて新潟で公平に(私が)チャンスが与えられるといいなって思ってます」
未来のバレエダンサーたちに少しでも世界レベルのバレエを体感し、学んでほしい。バレエダンサーとして瑠華さんができる地元への恩返しです。
≪受講生≫
「すごい技術のダンサーとかと一緒の場所で踊れて、いつも客席からしか見られないので同じレッスンをすることでそのジャンプの仕方だったりなんかそういうのを近くで感じられて自分にも刺激になったし貴重な経験になったなって思います」
開演までもう少し。
プロの演技を一目見ようと多くのお客さんが訪れました。
主催者であり、出演者でもある瑠華さん、まもなくはじまる出番に向けて気持ちを整えます。
≪横山瑠華さん≫
「化粧しているときが精神統一するみたいな時間なので結構大事にしてますね、この時間」
この日演じるのは悪役。顔つきとともに役に自分を染めていきます。
プロとして地元への凱旋となる瑠華さんのステージが幕を開けます。
チャイコフスキー作曲の名曲「白鳥の湖」の1幕、男女ペアで踊る「黒鳥のグラン・パ・ド・ドゥ」
瑠華さんは白鳥に扮して王子を誘惑してだます、黒鳥の役。
妖艶かつ不気味さが求められます。
ステージを終えて控室に戻ってきた瑠華さん。
≪横山瑠華さん≫
「いやーちょっと思ったよりは良くなかったけど、でもなんとかカバーをしながら、失敗という風には見せなかったと思うので、なんとか終わりました」
パフォーマンスには悔しさをにじませつつも出番を終え安堵の表情。
2日間にわたる地元・新潟で開催した初めてのバレエイベント。
プロのダンサーとして、そして、未来のバレエダンサーを育てるため、瑠華さんは挑戦を続けます。
≪横山瑠華さん≫
「追求することはやめたくないって思うしそういう姿勢をたくさんの子供たちに見せていきたいとも思うし、新しいことに挑戦しながらダンサーとして深みだったり色味だったり付けていきながらあんな人になりたいって思ってもらえるようなダンサーになっていきたいと思います」