若い女性の「痩せ」に警鐘 「小さく生まれてきた赤ちゃんは大人になった時の成人病のリスクが上がる」若年世代対象の「プレコンセプションケア」の動き
2022年に不妊治療の保険の適用が始まり、年々関心が高まっています。
不妊とは「妊娠を望む男女が1年程度夫婦生活をしても妊娠できないこと」を指します。
治療のステップは、タイミング法から人工授精、体外受精という順番に進み、人工授精の費用は1回あたり平均1万円、体外受精が平均15万円です。(ともに保険適用後の費用)
保険に加えて県から補助もありますが、保険適用に関しては女性の年齢が42歳までの制限が設けられています。
2024年3月に発表された厚生労働省のデータによると、不妊を心配したことがある夫婦はおよそ2.6組に1組。
また不妊の検査や治療の経験がある、またはしているという夫婦は、およそ4.4組に 1組という割合になっています。
県産婦人科医会の川越靖之会長は、年齢を重ねると妊娠する可能性は下がるので早めに治療を始めることが大切だと話します。
不妊治療を経験した方の体験談
■現在第2子を妊娠中の27歳の女性
1人目を妊娠したときに不妊治療を行いました。
1年以上妊娠できず、夫婦間の雰囲気が悪くなり落ち込んで「このままずっと授かれなかったらどうしよう」という先が見えない不安を感じていました。
24歳の時に病院で検査を受けたところ、排卵しづらい「多嚢胞性卵巣症候群」であることがわかり、原因が分かり治療が進んだことで逆に安心感を得たといいます。
その後、タイミング法と排卵誘発法の治療をすることによって第一子の妊娠・出産することができました。
「病院に行くことで前に進めるというのがわかったので、悩んでいることがあれば不妊治療にぜひ行ってほしいなと思う」と話します。
■県議会議員の下沖篤史さん
37歳の時に3つ年上の妻と結婚。あと1年で保険適用にはならないという中で踏み切った不妊治療では、体外受精のため妻の卵子を6回採取。しかし、うまくいきませんでした。
「治療での痛みを乗り越えても、着床しなかったり分裂が止まったりとうまくいかず、妻がつらい思いをしているのを見るのがつらかった」と話します。その後、一旦治療に区切りをつけました。下沖さんは、不妊に悩む前から早めに検査をしてほしいと話します。
また、不妊治療にはハードルがあるといった意見が多く寄せられています。
- 【話:高鍋町・30代女性】
「去年からクリニックに通っています。内診、採血、ホルモン注射、自己注射という身体的苦痛に合わせ、頑張っても結果が出ない、お金と時間をかけても必ずしも妊娠できるとは限らないなどの精神的苦痛もあります。また生理が始まるまで、次の受診日が決まらないこと、クリニックまで片道1時間近くかかることから仕事との両立に毎月苦労しています。」 - 【話:延岡市・50代女性】
「病院に頻繁に行かなくてはならない時期があり、上司に休みをもらうため相談すると『休んでもいいが、君の席はないものと思え』と言われた。」 - 【話:宮崎市・30代女性】
「仕事はシフト制だったので夜の勤務は外してもらいましたが、周りの方から『子どももいないのになんで夜のシフト外すの?』と言われ、精神的につらかったです。」
宮崎県には不妊症の高度な治療とされる体外受精ができる病院が6つあります。
妊娠には卵子の元となる卵胞の発育や子宮の状態をチェックしないといけないので、週1、2回程度は通わないといけないときもあります。
今や、治療で妊娠して出産した赤ちゃんが 14人に1人という時代になっています。
企業が積極的に治療のための時間を提供するなど、少子化対策の一環として取り組むことが必要です。
「プレコンセプションケア」とは
諸外国では、妊娠前の男女の健康をきちんとケアし、安心安全な妊娠・出産につなげようという概念があります。
特に、医療サイドから若年世代を対象に体重管理・栄養管理・妊娠限界などの情報を積極的に提供するのがプレコンセプションケアです。
最近問題となっているのが、若い女性の「痩せ」。
現在、20代女性の5人に1人が痩せすぎと言われています。
そのため、最近では生まれてきた赤ちゃんの体重が軽くなってきています。
小さく生まれてきた赤ちゃんは、将来大人になった時の成人病のリスクが上がると言われています。
妊娠は、新たな人生の出発点。母親の妊娠前の健康管理は非常に大切です。
県産婦人科医会の川越靖之会長は「男女とも妊娠出産に関する知識を身につけて、早めに自分のライフプランを立ててほしい。今後産婦人科医会でもこのような情報提供に努めていきたい」と話します。
妊娠や不妊治療について、世代や性別に関係なく理解を行動で示せる社会になっていくことが大切です。