“死刑のハンコ”失言めぐり…葉梨法相“更迭” 岸田首相が異例の対応も
「法務大臣は死刑のはんこを押した時だけニュースになる地味な役職だ」などと発言した葉梨法相が11日、岸田首相に辞表を提出しました。岸田首相は、ASEAN(=東南アジア諸国連合)首脳会議などへの出発を遅らせて対応するなど、異例の事態となっています。
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11日午後5時前、渦中の葉梨法相が首相官邸に現れました。記者の問いかけには――
葉梨法相
「まだです。お疲れさま」
葉梨法相は岸田首相に面会した後、記者団の質問に答えました。
葉梨法相
「ただいま岸田総理に国務大臣の辞表を提出させていただきました。国民の皆様にもおわびをして、一から政治活動をやりなおす」
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事実上の更迭とみられていますが、その原因となったのが、パーティーでの発言でした。
葉梨康弘法相
「法務大臣になりまして3か月になるんですけれども、大体、法務大臣というのは、朝、死刑のハンコを押しまして、それで昼のニュースのトップになるのは、そういうときだけという地味な役職なんですが」
葉梨法相は“法務大臣は死刑のハンコを押したときだけニュースになる地味な役職”と発言したのです。葉梨法相は10日、謝罪し発言を撤回しました。岸田首相も続投させる意向でした。
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こうした中、11日朝に閣議が行われ、その後の記者会見で、葉梨法相は別のパーティーでも同様の発言をしていたことを明らかにし、謝罪しました。一方、野党側は国会で追及しました。
立憲民主党 米山隆一議員
「毎回、毎回、5回も6回も笑いのネタにしてきた。しかも、並み居る自民党議員がそれを一緒に笑って黙っていた。そうなんですよ。自民党はそういう政党なんです」
葉梨法相
「政治資金パーティーでは4回と記憶をしています。そして、そのことについて、私自身が出席者等にどういう印象をもっているか、しっかり確認しなかったということ。このことは、本当に足りなかったところだなと」
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岸田首相も出席した11日の参議院本会議では――
立憲民主党 川田龍平議員
「葉梨大臣は、法務大臣としての資質を決定的に欠いています。即刻辞めるべきです。総理の見解をお聞きします」
岸田首相
「(葉梨法相には)改めてその職責の重さを自覚し、説明責任を徹底的に果たしてもらわなければなりません。誤解を招くことがないように、発言はくれぐれも丁寧に慎重に行ってもらわなければならないと考えております」
岸田首相は、野党からの更迭要求を否定しました。
立憲民主党 川田龍平議員
「葉梨大臣、これだけ批判を浴びてもなお、大臣を辞めるつもりはないのか」
葉梨法相
「引き続き、説明責任を徹底的に果たし、国民のお役に立つことができるよう職務に全力をつくして参りたいと考えております」
葉梨法相も辞任を否定しましたが、議場は「辞めなさいよ」などのヤジで騒然となり、岸田首相は硬い表情に。官邸に戻ってから、事実上の更迭に向けた動きが加速しました。
岸田首相は11日午後3時ごろ、ASEAN首脳会議などに出席するため、羽田空港から出発する予定でした。ところが、11日の出発は急きょ取りやめになりました。空港には同行する記者団が集まりましたが、外務省から「いったん記者団を解散するように」という指示があり、各社困惑している状況でした。こうしたことによる日程変更は、極めて異例のことです。
岸田首相は葉梨法相の後任に、斎藤健元農水相を起用する意向を固めました。岸田首相は「法務大臣の発言によって、重要施策の審議などに遅滞が生じることを考慮し、辞任の申し出を認めました」と述べました。
山際氏の辞任からわずか18日、再び閣僚の更迭に追い込まれ、政権にとって大きな打撃となります。