何が?“乱れに乱れた”岸田首相の日程…首脳会談に「異例の徒歩移動」も
アメリカ・サンフランシスコで厳戒態勢の中で行われたAPEC首脳会議。中国・韓国との首脳会談に臨んだ岸田首相だったが、移動は「異例の徒歩移動」。滞在中“乱れに乱れた”という首相のスケジュール。一体何が?
(同行記者:政治部官邸キャップ平本典昭)
■なぜ?会談会場へ徒歩移動…「尹大統領を待たせられない…」
APECを機に16日に行われた日韓首脳会談。首相一行は焦っていた。というのも「会談時間が近づくというのに、車が渋滞で動かない…」(同行筋)というのだ。「もう、徒歩で行くしかない、尹大統領を待たせられない…」。首相一行は、車を降り徒歩で会場へと向かった。会場に20分ほど遅刻して首相は到着。尹大統領に会うなり「遅刻して申し訳ありません」と英語でお詫びした。
それから、約7時間後。首相の「異例の徒歩移動」をカメラが捉えた。中国・習近平国家主席との首脳会談は現地時間午後5時40分スタートだった。その数分前、厳戒態勢の会談会場となる習主席の宿泊ホテル前。カメラが首相の車列の到着を待っていると、なんと現れたのは車列ではなく、徒歩で会場に向かう岸田首相チームの面々。カメラの前では普段、ゆっくり歩く首相だが、この時ばかりは「小走り」で会場へと向かっていった。
■乱れに乱れた首相スケジュール…記者会見も「30分」遅れ
APEC期間中、首相のスケジュールは乱れた。「こんな首相のスケジュールが狂うことはめったにない」(政府関係者)。筆者も首相同行を数多く経験してきたが、海外では現地警察の「護衛」付き「車列」での移動が多く、分刻みのスケジュールをこなしていく事が多い。しかし、今回は違った。最終日の記者会見も、交通渋滞が原因で30分遅れのスタート。ある外務省関係者は「首脳会談に首相が走って向かうなんて聞いた事がない」と漏らした。一体、首相一行に何が起きていたのか?
■習主席の6年ぶりの訪米…米が“威信”をかけた「超厳戒態勢」
アメリカ・サンフランシスコ。APEC首脳会議には、主催者である米バイデン大統領に加えて、中国から習近平国家主席など、世界中から首脳が集結していた。国際会議に何度も参加している外務省関係者は「今回はバイデン大統領だけでなく、中国から習主席が参加しているからか、アメリカが“威信”をかけた“超”厳戒態勢を敷いているのだろう」と話していた。
6年ぶりのアメリカ訪問となる習主席。両国の緊張関係が続く中、「習主席に不測の事態が起きることは許されない」(同行筋)というワケだ。バイデン大統領や習主席が車で移動する時間帯は、周辺一帯の道路が封鎖された。筆者も中継リポートに立つポイントがあるメディアセンターに向かおうと、いつもよりも更に余裕をもってホテルを出たのに、バイデン大統領の移動に重なってしまい、40分ほど足止めを食らい、「やばい、中継に間に合わない」とヒヤヒヤする場面もあった…
■一般人だけでなく岸田首相も…厳戒態勢で“足止め”
この厳戒態勢に、筆者含めた一般人だけでなく、岸田首相までもが巻き込まれてしまったのだ。日韓首脳会談の前は「バイデン大統領の移動と重なり、車が全く動かなかった」(首相同行筋)。日中首脳会談の前に至っては「交通規制でギリギリになったため、最後は走って向かった」(政府関係者)という。
安全上の観点からは「首相が外国で徒歩で移動することはあり得ない」という声や、「米中両首脳が集まったとしても、日本の警察だったら他のVIPにもしっかり対応できる」などと、アメリカ警察の交通整理の“力不足”を指摘する声も(いずれも政府関係者)。
一方で、もっとも多く聞いたのは「バイデン大統領、習主席が同じ場所に集まってしまった以上は、岸田首相といえどもガマンするほか仕方ない」という声だった。
サンフランシスコでの岸田首相の日程は乱れに乱れたが、日本に戻る政府専用機は“ほぼ予定通り”離陸した。同じルートには、バイデン大統領や習主席の乗った飛行機もいないはず。岸田首相も筆者も予定時刻に日本に着陸できるはず、だ。