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首相が県外全面移設断念、沖縄訪問の真意は

2010年5月5日 2:59
首相が県外全面移設断念、沖縄訪問の真意は

 沖縄県を訪れた鳩山首相は4日、仲井真県知事と会談し、アメリカ軍普天間基地(宜野湾市)の県外への全面移設を断念する考えを伝えた。また、会談後、記者団に対し、基地の移設先として、沖縄県内と鹿児島・徳之島を想定していることを明らかにした。沖縄訪問の真意はどこにあるのか。また、普天間基地移設問題は今後、どうなるのか。

 鳩山首相は今回、「国外、最低でも県外」という発言を撤回した。当初から県外移設は相当困難とみられる中、撤回までに結局8か月を要したことになる。そして、この間、県民の期待は高まった。

 一方で、日米関係はぎくしゃくした。鳩山首相は4日、県外への全面移設を断念した理由について、海兵隊が沖縄に駐留することの抑止力を挙げ、首相就任前は「抑止力は海兵隊が沖縄に存在しなければならない理由にはならないと思っていた」と、自らの認識不足を認めた。8か月の迷走は何だったのかと思わざるを得ない。

 今回の沖縄訪問の真意はどこにあるのか。県民からは、鳩山首相に対して厳しい声が投げかけられていた。首相側近は、抗議は想定の範囲内で、「自ら沖縄に行って直接話を聞くことが大事だった」と話している。5月末の期限に向けて、鳩山首相が普天間基地移設問題に真剣に向き合っている姿勢を示すことが大事だという。しかし、4日も「辺野古の海を汚さない」ことや、滑走路建設や徳之島への分散移転を前提に沖縄の負担軽減などを約束している。自ら話せば自らを追い込むことにもなるわけだ。

 鳩山首相は7日、徳之島の3町長と会談する予定。しかし、3人とも反対の立場を取っている。徳之島がすぐに分散移設の受け入れを認めるシナリオは現実的ではない。また、徳之島移設にはアメリカ政府も難色を示している。しかし、普天間基地機能の徳之島への分散がなければ、鳩山首相が描いている移設案が大きく崩れることになる。

 鳩山首相が目指す「5月末までの決着」は絶望的で、妙案は見つからない状況だ。そんな中、首相周辺からは決着を先送りする案も浮上している。しかし、「5月末に沖縄、アメリカ、連立与党3者の合意を得て決着させる」と言い切ってきたのは鳩山首相自身だ。先送りとなれば、鳩山首相の言葉の信頼性をさらに大きく損なうことになる。