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自衛隊を派遣「南スーダン」とは?記者解説

2016年10月25日 18:29
自衛隊を派遣「南スーダン」とは?記者解説

 政府は南スーダンに派遣される部隊に、新たな任務を与える方向で最終調整しているが、現地では治安の悪化が懸念されている。南スーダンとはどんな国なのだろうか。独立前のスーダンを取材したこともある政治部・矢岡亮一郎記者が解説する。

――南スーダン、そもそもなぜこんな争いになっているのか。

 南スーダンは、5年前に世界193番目の国家として、独立したばかりの最も新しい国連加盟国だ。独立前は北にある国「スーダン」の一部だった。実は11年前、独立前のスーダンに取材に行ったことがある。当時の南部スーダン(現在の南スーダン)のリーダーが事故死したことをめぐって、北部の勢力による暗殺説が飛び交って、南部の住民数千人が暴動を起こした。

――独立前も激しい対立があった?

 そうです。北部はイスラム教徒が多いアラブ人勢力、南部スーダンはキリスト教徒が多い非アラブの黒人勢力。対立の要因のひとつは、中間地点にあるこの油田の石油利権をめぐる争いだった。

 その後、南部は「南スーダン」として独立を果たすが、実はこの油田の周りだけ、現在も国境が引かれていない。

――どちらも手放したくないということか。

 そうです。そして、いまの南スーダンの混乱は、この油田の争いを引きずっている。現在の混乱の実態は、キール大統領と、マシャール前副大統領の争いだ。これも石油利権をめぐる対立が発端とされている。

 さらに「部族間対立」という構図も出てきている。南スーダンには、大統領の出身部族である「ディンカ族」、前副大統領の「ヌエル族」、北部などを拠点とする「シルク族」という三大部族含め、60以上の部族がいる。これに加えて、各地で正体不明の武装勢力による凶悪犯罪も増えている。要は、対立軸は単純ではなく混沌としている。

――自衛隊が活動する首都ジュバはどうなのか。

 ジュバにも数多くの部族が混在して暮らしている。現在は政府軍がコントロールして、稲田防衛相は「落ち着いている」と話しているが、実際体験してみると、治安というものは、想像以上に急速に悪化する。

 新たな任務の付与にあたっては、常に最悪のケースを想定した慎重な判断が求められる。