「年金改革法案」可決 与野党議論すれ違い
年金支給額の上昇を抑えるための「年金制度改革法案」は29日、衆議院本会議で与党などの賛成多数で可決され、参議院に送られた。私たちの暮らしにも深く関わる法案だが、議論は深まったのだろうか。
1か月にわたる衆議院の審議では、与野党の議論はすれ違いの場面が目立った。民進党など野党側は「高齢者を苦しめるものだ」などと批判してきた。しかし民進党も年金制度を維持するためにはどうするべきなのか対案を示せず、党内からも「物足りない」と批判の声が上がった。
一方、政府・与党はアベノミクスを前進させることで賃金は下がらず、従って年金も下がらない様にすると強調してきた。ただ、アベノミクスの成果が実感できないという指摘がある中でどうやって年金制度を維持するか、説得力はなかった。
そうした中、与党側がこの国会で成立させたい理由は何なのか。与党側は、審議は深まっていると主張している。しかし野党側は厳しい年金の実態が国民に理解されないうちに与党側が成立させたいとみている。
委員会審議の終盤には安倍首相が「こんな議論を何時間やっても同じだ」と野党の議論を批判した。しかし野党側は、安倍首相が解散・総選挙のタイミングを探る上で逆風にもなりかねない年金改革法案の審議を早く切り上げたいのだろうとみている。
参議院に論戦の舞台は移るが、年金の制度設計に関わる本格的な論戦が期待される。