2019年・与党の展望 憲法改正は…
悲願の憲法改正に道筋をつけることができるのか。2019年は安倍首相にとって正念場の1年となる。
先月、臨時国会閉会を受けた記者会見で安倍首相は、2020年を新しい憲法が施行される年にしたいという考えに変わりがないことを強調する一方、「スケジュールは国会次第で予断を持つことはできない」とも述べた。
背景には、憲法改正の議論が臨時国会でまったく前に進まなかったことがある。当初、自民党が描いていたシナリオでは、臨時国会で、まず国民投票法改正案を成立させた上で、自民党の4項目の憲法改正案をたたき台として国会に提示し、憲法改正に前向きな勢力が3分の2を占める状況が続く参院選までに発議する、というものだった。
そのため、秋の人事では「改憲シフト」の布陣を組んだ。党の憲法改正推進本部の本部長には首相側近の下村博文氏を起用し、衆議院の憲法審査会で野党側との調整を担う筆頭幹事にも、首相に近い新藤義孝氏をあてた。
しかし、この人事が“裏目”に出てしまった。議論に応じようとしない野党を、下村氏が「職場放棄」と批判したことなどで、与野党の溝はさらに深まり、議論は暗礁に乗り上げた形となった。
では、自民党は2019年、どのような憲法改正のシナリオを描くのか。ある党幹部は「4項目のたたき台をいっぺんに出さない方法もある」と話す。つまり、「憲法9条への自衛隊明記」、「緊急事態条項の創設」、「参院選の『合区』解消」、「教育の充実」の4項目を同時に議論するのではなく、例えば「合区の解消」や「教育の充実」から先に議論を始めてハードルを下げようという戦略。
しかし、今年夏に予定されている参議院選挙への影響を避けたい与党・公明党からは慎重な声が上がっている。公明党の山口代表は講演で、「(2019年は)政治課題がめじろ押し。改憲について合意を熟成する政治的余裕は見いだしにくい」と述べ、憲法改正に向けた国会発議は2019年には困難との見方を示した。公明党幹部は「参院選までに自民党案を示すのは厳しいだろう」と話している。
厳しい戦いも予想される参院選を前に、憲法改正での消耗戦は避けたいという思惑が見え隠れしている。また、憲法改正案を発議したとしても実現には国民投票という最後の関門があり、世論の賛同が不可欠。
自民党の下村憲法改正推進本部長は憲法改正の機運を高めようと、全国を飛び回って講演活動を続けている。しかし、NNNと読売新聞が12月に行った世論調査では、憲法改正と2020年の施行を目指す安倍首相の方針に、47%が「反対」と回答。憲法改正の機運が高まっているとは言い難いのが実情だ。
安倍首相に近い議員は「首相は現実的に考えている。無理をしても、国民投票を乗り越えられなければ意味がない」と話し、強硬に憲法改正に突き進むことはないとの見方を示している。
また、ある自民党関係者は2つの戦略を描いている。まず、今月下旬召集の通常国会で野党が議論のテーブルに着かなかった場合、「憲法改正でダブルを打つ」つまり、衆参同日選挙に踏み切るというカードをちらつかせる戦略。2つ目は、通常国会から議論を始められれば、来年の通常国会で発議し、東京五輪を挟んで国民投票を行うという戦略。
野党も巻き込んで憲法議論を前に進めるための有効な手立てが見いだせない中、安倍首相と自民党の次の一手が2019年の大きな焦点だ。