【解説】山際氏“更迭”その裏側は… 首相周辺「自分から辞表出す形に」
山際経済再生担当相が突然辞任したことで、大きな衝撃が走りました。舞台裏では何が起きていたのでしょうか。
◇先週末に“更迭”の決断
◇最悪のタイミング
◇「辞任ドミノ」は?
以上の3点について詳しくお伝えします。
24日、山際大臣本人が語った「辞任の理由」とは次のようなものです。
辞任した山際経済再生相(54)
「このタイミングで、国会審議にさわらないようにするべきではないかと、自分自身で考えてきたんですけど、このタイミングを逃すわけにはいかないかなと思って」
――何が一番問題だったか?
辞任した山際経済再生相(54)
「外部から指摘をされることによって、それを説明するという“後追い”の説明という形になってしまった。結果として、それが政権に対してもご迷惑をおかけすることになったと」
山際氏は、24日の取材では、世界平和統一家庭連合、いわゆる“統一教会”との関係について、「何か深い関係があったわけじゃないので説明できなかった」と述べました。そして、「20年間の政治活動の中で数千、数万の会合に出ていて、それを全部覚えていることの方が自然ではない」とも話しました。
また、「国会議員として、何か法に触れるようなことをやってきたわけではない」として、大臣は辞任しましたが、議員辞職は否定しました。
岸田首相は24日午後2時ごろの国会で、野党議員から“山際経済再生相の交代”について質問され、「そういったことは、全くありません」とはっきり否定していました。
ところが、午後5時に始まる自民党の役員会を岸田首相が突然欠席し、さらに、午後5時45分から山際大臣の出席が予定されていた経済財政諮問会議が突如、取りやめになりました。そして、午後7時ごろには、山際大臣が自ら、辞任を表明するという急展開になりました。
山際大臣は、「もちろん、自分の決断です」と強調しましたが、首相周辺は、「実際は更迭だ」と語っていて、やはり、事実上の更迭ということのようです。
辞任の舞台裏について、首相周辺によると、「山際経済再生相が辞表を持ってくるまでは言えなかった」ということですが、実は、岸田首相は先週末には、山際氏の更迭を決断していたということです。
そもそも、この臨時国会が始まる前には、山際大臣が首相に対して、「しっかり説明するから大丈夫です」と言ったため、首相も、「それなら様子を見てみよう」として続投させたといういきさつがあったそうです。
ところが、ふたを開けてみると、この国会で山際大臣は野党から激しい追及を受け、“瀬戸際大臣”と呼ばれます。特に問題となったのは、今から3年前の2019年10月に愛知県名古屋市で撮影された写真です。いわゆる“統一教会”の韓鶴子(ハン・ハクチャ)総裁の隣に山際大臣が写っています。
これを追及されると山際経済再生相は、「このことそのものは覚えておらず、定かではない」などと発言しました。しかし、写真が撮影されたこの日には教団の会議があったそうですが、山際経済再生相は、「会議には出席しておりません」と答えていました。つまり、「総裁との写真は覚えていないが、会議に出席していないことははっきり覚えている」と答弁したわけです。
さらに24日には「2019年の時には、おそらく、ただ写真を撮っただけだと思いますよ。写真を撮るという行為は、ごく普通に毎日、毎日行われているものだと。先生だって、どこかの方に、『一緒に写真撮りませんか』と撮ることいっぱいあるんじゃないですか」との“開き直り”ともとれる発言もありました。
こうした山際大臣の説明に関して、首相周辺は「『2019年に撮影した写真の記憶がないというのは、さすがに国民が納得しない』と岸田首相も思っていた」と日本テレビの取材に語っています。
「しっかり説明するから大丈夫」と言っていた山際大臣ですが、岸田首相は、「国会での説明が不十分だ」と“事実上の更迭”を判断したというわけです。
ただ、この辞任、28日に閣議決定を予定している経済対策の発表直前という“最悪のタイミング”で、担当大臣を更迭せざるを得ない状況に追い込まれたといえます。
与党内からは、「岸田首相の決断が遅すぎる」、「行き当たりばったりだ」などと厳しい指摘が相次いでいます。さらに、与党内からは、閣僚や自民党幹部の辞任が続く、“辞任ドミノ”を警戒する声が上がっています。
首相周辺は、「山際大臣を教団との関係があったことで更迭したら、今後、ほかの大臣に波及してしまう。だから、あくまで山際大臣が自分から辞表を出す形にした」と説明しています。
今、野党は寺田総務相や秋葉復興相の「政治と金」の問題を厳しく追及していますが、辞任ドミノに発展するかは、2人の大臣が、国民が納得できる説明ができるのか。また、教団との関係を指摘された閣僚や党幹部が今後、きちんと説明をできるかにかかっていると言えます。
首相は起用の理由について「政治経験の豊富さ」、「説明能力の高さ」、「経済社会の変革に向けての情熱」を挙げて、“即戦力”と説明しました。
また、後藤氏は、教団との関係について、厚生労働相時代の今年7月に、「団体の会合に行ったり、呼ばれたり、挨拶したり、また、選挙応援をしていただいているという認識は全くありません」と説明しています。
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山際大臣は、教団との関係について、結局、説明責任を十分に果たさないまま、辞任となりました。しかし、政界と教団とのつながりについて、これで幕引きとなってはいけません。国民からの信頼を取り戻すために、政治家は教団との関係についてしっかりと説明すること、被害者救済につなげていくことが求められています。
(2022年10月25日午後4時半ごろ放送 news every. 「知りたいッ!」より)