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【全文】岸田首相 施政方針演説(前編)

2023年1月23日 15:02
【全文】岸田首相 施政方針演説(前編)

【前編】※この記事はこちらです
1はじめに
2歴史の転換点
3防衛力の抜本的強化
4新しい資本主義

【後編】
5こども・子育て政策
6包摂的な経済社会づくり
7災害対応・復興支援
8新型コロナ
9外交・安全保障
10憲法改正
11政治の信頼
12おわりに

■1はじめに

第211回国会の開会にあたり、国政に臨む所信の一端を申し述べます。

先日の欧州・北米訪問の際、ある首脳から、「なぜ日本では、議会のことを、英語でparliamentではなく、Dietと呼ぶのか」と問われました。
確かに、ほとんどの国は、議会を英語でparliamentと呼ぶようです。
調べてみたところ、Dietの語源は、「集まる日」という意味を持つラテン語でした。
国民の負託を受けた我々議員が、まさに、本日、この議場に集まり、国会での議論がスタートいたします。

政治とは、慎重な議論と検討を積み重ね、その上に決断し、その決断について、国会の場に集まった国民の代表が議論をし、最終的に実行に移す、そうした営みです。
私は、多くの皆様の御協力の下、様々な議論を通じて、慎重の上にも慎重を期して検討し、それに基づいて決断した政府の方針や、決断を形にした予算案・法律案について、この国会の場において、国民の前で正々堂々議論をし、実行に移してまいります。

「検討」も「決断」も、そして「議論」も、全て重要であり必要です。
それらに等しく全力で取り組むことで、信頼と共感の政治を本年も進めてまいります。

■2歴史の転換点

近代日本にとって、大きな時代の転換点は2回ありました。明治維新と、その77年後の大戦の終戦です。そして、奇しくもそれから77年が経った今、我々は再び歴史の分岐点に立っています。

ロシアによるウクライナ侵略。
世界が堅持してきた「法の支配による国際平和秩序」への挑戦に対し、国連安保理は機能不全を露呈しました。
さらに、この機に乗じて、ロシアとの連携を強める国、エネルギーなどで実利を追う国、核ミサイル開発を進める主体など、国際平和秩序の弱体化があらわになっています。

そして、もはや待ったなしとなっているのが、深刻さを増す気候変動問題、感染症対策などの地球規模の課題、世界中で生じている格差問題など、広い意味での持続可能性の問題です。
不安定で脆弱なサプライチェーン、世界規模でのエネルギー・食料危機、さらには、人への投資不足など、世界の一体化と平和・繁栄をもたらすと信じられてきたグローバリゼーションの変質・変容も顕著です。
こうした現実を前に、今こそ、新たな方向に足を踏み出さなければならない。
これまでの時代の常識を捨て去り、強い覚悟と時代を見通すビジョンをもって、新たな時代にふさわしい、社会、経済、国際秩序を創り上げていかねばなりません。

先々週、G7議長として訪問した国、全ての首脳も、私と同様の認識を示しました。
日本は、5月の広島サミットの成功はもちろん、G7議長国として、強い責任感をもって、今年一年、世界を先導してまいります。
私は、皆さんと一緒に、この歴史の大きなうねりを乗り越え、次の世代に、この日本という国を着実に引き継いでいきます。
力を合わせ、共に、新時代の国づくり、安定した国際秩序づくりを進めていこうではありませんか。

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■3防衛力の抜本的強化