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コロナ5類“引き下げ”5月8日から…政府「決断の裏側」

2023年1月27日 7:30
コロナ5類“引き下げ”5月8日から…政府「決断の裏側」

政府は、新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけを季節性インフルエンザと同じ「5類」への引き下げを5月8日からとする方針を固めた。政府が決断した「裏側」を3つの「ナゼ?」に答えながら解説する。

■「ナゼ?1」なぜ、5月8日からスタート

先週、岸田首相が新型コロナウイルスの「5類」への引き下げを「春」に行うことを指示。スタート時期が最大の焦点となった。政府内では3案を中心に検討が進んだとみられる。4月1日案 、5月1日案 、5月8日案だ。

「切りがよい」という理由で、当初検討された4月1日案。ある政府高官が「自治体の準備が間に合うかが重要」と話すなど、4月1日案は早々に検討から外れたとみられる。また、ある政府関係者によると、4月の実施について地方自治体から「統一地方選挙と一緒に対応をするのは厳しい」という声が届いていたという。

次に検討された5月1日案。この案が消えた理由について、ある政府関係者は「ゴールデンウイークで感染が広がるリスクがある」と指摘した。仮に感染が拡大した場合、岸田首相肝いりの5月中旬に予定されている広島サミット前に感染が拡大し、政府の「引き下げ判断」に批判が出るリスクを考えたとみられる。さらに、総理周辺は「5月1日だと、切り替えた後に医療機関が休日で対応できないのはまずい」と連休前の「切り替え」案が消えた理由を説明した。

結果、「5類」への引き下げは5月8日からに決まった。首相周辺は「医療機関側から移行にはこれぐらいの時間がかかる」と言われたと話すなど、医療機関・自治体が必要な準備時間を確保することが決め手となったとみられる。

■「ナゼ?2」なぜ、マスク使用ルールは継続

「5類」引き下げと同時に検討された「マスク使用ルール」の見直し。「屋外」でのマスク使用は「原則不要」となる中、今回「屋内」でのマスク使用ルールの緩和についても検討が進んだ。

当初、政府内では「引き下げ」と同時にマスクの使用緩和をすすめるべきとの声が出ていた。しかし、その流れが変わったのは厚生労働省の感染症部会で出た専門家の意見だった。委員の一人から「類型見直しと同時に、マスク着用ルールを緩和するのは時期尚早」という意見が出たのだ。こうした意見も踏まえて政府内でも“先送り”論が強まっていった。

そして、もう1つ。政府与党内で声があがったのが「小中学生のマスク着用の緩和」だ。卒業式に間に合うように3月にも緩和すべきという意見が出た。ある自民党幹部は「大人は飲み会をやっているのに、子どもはマスクで黙食はかわいそう」などと指摘していた。総理周辺も「教育の現場からは“マスクで子どもの表情がなくなった”といった切実な悩みが届いている」と明かす。

しかし、マスクの使用ルールの緩和については、専門家からの慎重な意見も多かったことなどから、引き続き調整が行われることになった。

■「ナゼ?3」なぜ、ワクチン接種は無料のまま

最後のナゼ?は、ワクチン接種や医療費の負担について。政権が最も心配したのは「現在、個人負担のない新型コロナの医療費やワクチン費用、検査費用などが一気に負担する方向に変わることで受診控えが起こること」(首相周辺)

こうした心配から、ワクチン接種の費用については当面は無料、医療費の公費負担については段階的に縮小する方向で最終調整されている。“激変緩和”が必要ということで「段階的な措置」となる方向だ。

国内での最初の感染確認から約3年が経つ中、日本のコロナ政策が大きな転換点を迎える。