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スーダン邦人退避は本当に「うまくいった」のか?専門家が指摘する“ある能力”の欠如

2023年4月25日 17:06
スーダン邦人退避は本当に「うまくいった」のか?専門家が指摘する“ある能力”の欠如
外務省提供

情勢が悪化しているアフリカ・スーダンの首都ハルツーム市内で、退避を希望していた全ての日本人の退避が完了した。政府内からは「まずは退避計画はうまくいった」という安堵の声が出ているが、自衛隊によるオペレーションは本当に「うまくいった」のか、25日昼、2人の専門家に話を聞いた。

■河野克俊 元統合幕僚長

――スーダンからの邦人退避オペレーションをどう評価する?

空港への秘密保全も含めて、しっかりオペレーションされていたと思う。首都においては希望する邦人全員が救助できたのであれば、外務省と防衛省の間の連携がうまくいっていると思うので、オペレーションはよかったと思う。

――2021年アフガニスタンでの邦人退避オペレーションでは初動の遅れが批判されたが?

(今回は)そこでの教訓が生かされたと思う。ジブチに拠点があったことはものすごく大きな利点だったが、とにかく早めにジブチまで(自衛隊を)前進させて、タイミングを見計らっていたということを見ても、アフガニスタンの時の教訓が生かされてると思う。

――各国が同様の退避オペレーションをする中で、各国との連携という面では?

他国との連携もうまくいったと見ている。国連も含めて各国との情報収集・共有をし、そして今回のポートスーダンが適当なところだということで、そこを指定してオペレーションの拠点にしたということだと思うので、情報共有はうまくいったと思う。

■笹川平和財団 小原凡司 上席フェロー

――スーダンからの邦人退避オペレーションをどう評価する?

昨年4月に自衛隊法が改正されて、いくつか変わった点はしっかり改善されて、その通りにオペレーションできたんだと思う。一つは、民間と同じレベルの安全を求めるわけじゃないというのが明確になった。「安全に実施」するとの規定を見直して、自衛隊として危険を回避するための措置が取れるのであれば行くんだ、となった。それは、しかも防衛大臣の判断事項であって、余分な時間をとらない。だから防衛大臣はすぐに(自衛隊を)ジブチまで前進させて準備をさせて、ということまではできていた。そこまではアフガニスタン等の教訓の多くが生かされたと思う。

ただ、そこから先は、「海外で情報をとる能力」を元々日本が持ってないことによって、なかなか他の国のように早く動けなかったところがあるのではないかと思う。日本は元々アメリカやフランス、イギリスのように、中東や中央アジアで軍事作戦を行っていたわけではないし、そもそも自衛隊は海外に出て活動することを想定されていない。海外でオペレーションする時の情報を取る能力は日本にはないということ。もちろん大使館などは情報を取れるが、軍事的な情報が取れない。

例えばアメリカは、必要に応じて軍事力を展開できる状態にあるので、そうすると今の状況だと、どういったビークル(車両)を使って、どのタイミングで、どういうルートを使った方がいいか…というのは、おそらく情報として取れると思うが、日本だけではそういった情報をとるのが難しい。そのため、アメリカやフランス等の国と協力をしながら、ジブチで情報を共有しながら情報を取ったと思うので、若干のディレイ(遅れ)があったかもしれないが、そんな環境の中でもうまくいったのでは。

――できない部分もある中、日本としてはベストを尽くせたと?
しかし、「できない」ままでは困る。今までは専守防衛というあまり、日本の自衛隊が外で活動すること自体が忌避されてきた。PKOを出すときも相当もめた。しかし、邦人退避を他国のようにするには、やらなければいけないことが残っていて、それができていない、という現実があるということではないか。

もちろん戦闘しに行くのでなくても、こうした退避作戦というのは必ずこれからも色々なところで出てくるはずなので、そういった時にどうやって情報を集めるのかといったことも考えておく必要があるということなんだと思う。日本にはMI6のような情報機関がなく、そもそも情報が取れない国であるという現実がある。そのため、そういった情報を取るための仕組みというのを作っていく必要があるのではないかと思う。

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