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中国軍機、初の領空侵犯なぜ──元空将「日本の反応を試す可能性も」 中国機へのスクランブル、年479回【#みんなのギモン】

2024年8月28日 10:06
中国軍機、初の領空侵犯なぜ──元空将「日本の反応を試す可能性も」 中国機へのスクランブル、年479回【#みんなのギモン】
26日、長崎・五島市の群島沖の領空に、中国軍の情報収集機が侵入。中国の軍用機による日本の領空侵犯が確認されるのは初めてです。中国側の意図を見極めるのは難しいですが、専門家は2つの可能性を指摘します。日中両国の政府はどう反応したのでしょうか。

そこで今回の#みんなのギモンでは、「中国軍機 初の領空侵犯なぜ?」をテーマに、次の2つのポイントを中心に解説します。
●日本上空で何があった?
●2分間の侵犯 中国の意図は

■「Y-9情報収集機」が数分間侵入

近野宏明・日本テレビ解説委員
「26日、中国軍機が長崎県沖の領空に一時侵入しました。中国の軍用機による日本の領空の侵犯が確認されるのは初めてです。その狙いは何なのでしょうか?」

「まず、そもそも何が起きたのか。防衛省によると、長崎・五島市の男女群島沖の日本の領空に、26日午前11時半頃、中国軍のY-9情報収集機1機が数分間侵入したということです。戦闘機や爆撃機などではありません」

■飛行ルートは…領空を出た後も旋回

「Y-9は中国の方向から飛んできて、午前10時40分頃、男女群島沖の上空で旋回を開始します。11時29分頃、東側から領空の内側に侵入して、約2分後に領空を出ました」

「ただ、その後も群島の南の上空で再び旋回した後、午後1時15分頃、中国の方面に向けて戻ったということです」

「航空自衛隊の戦闘機がスクランブル=緊急発進し、警告を発するなどして対応しました」

鈴江奈々アナウンサー
「24時間365日、警戒監視活動を続けている中で、スクランブルは日常的にあると思うんですが、中国軍機の領空侵犯に対してのスクランブルは初めてだったということで、現場は緊張が走ったでしょうね」

■林官房長官「全く受け入れられない」

近野解説委員
「こういった異例の出来事を受け、林官房長官は27日の会見で『我が国の主権の重大な侵害で全く受け入れられない』と強く非難し、『警戒監視・対領空侵犯措置に万全を期す』と述べました」

森圭介アナウンサー
「航空機だと国の中心部にあっという間に入ってくることもできますし、こういった行為は本当に許されません。日中両国の緊張関係が悪化しないといいなと祈るばかりです」

■領空侵犯の恐れがある場合、自衛隊は?

斎藤佑樹キャスター
「そもそも領空に侵入するというのは、どういうことなんですか?」

近野解説委員
「領空という範囲がどこなのか、おさらいします。領土の上空と、領海つまり海岸線から約22.2キロの範囲の上空を合わせたものです。領空の内側を許可なく自由に航行することは、国際法上認められていません」

「飛行プランが出されていない航空機が領空侵犯する恐れがある場合、航空自衛隊が戦闘機などを緊急発進させ、近寄らないよう通告します。それでも領空侵犯が発生した場合には、退去するように警告を発します」

■空自戦闘機の緊急発進、昨年度は?

河出奈都美アナウンサー
「緊急発進はどのくらい行われているんでしょうか?」

近野解説委員
「防衛省によると昨年度、航空自衛隊の戦闘機が行った緊急発進は669回でした。毎日1回以上はどこかで緊急発進している計算になります。ただ、これでも過去10年では最も少なかったそうです」

「内訳を見ると、中国機に対するものが479回と最も多く、全体の約7割を占めています。続いてロシアが174回、北朝鮮が2回です」

鈴江アナウンサー
「これだけ日常的に緊急発進が行われているということを私たちはなかなか感じにくいですが、こういった中で『主権を守っていますよ』、『入ってきたら大変なことになりますよ』と、外に対しても発信していく上ではこういった活動はとても重要ですよね」

近野解説委員
「重要なことになります。中国には実際、どんな狙いがあるのでしょうか? 木原防衛大臣は27日の会見で、中国軍機の行動の意図や目的について『現時点で確たることを答えることは困難』と述べ、分析を進めるとしています」

■元空将に聞く…考えられる可能性

近野解説委員
「専門家はどうでしょうか。麗沢大学の特別教授で元空将の織田邦男さんによると、可能性は2つ考えられるそうです。1つは偶発的なミスで、もう1つは意図的に少し領空に入り、日本の反応を試すというものです。後者を真剣に受け止めないといけないということです」

「今回領空侵犯があった空域の周辺には、自衛隊のレーダーサイトがあります。中国軍がそういった自衛隊側の情報を取るために偵察機を飛行させているのは日常で、これ自体は当たり前の活動といいます。この近くには、海上自衛隊の訓練海域もあるということです」

「ただ織田さんによると、もしパイロットのミスだとすると、領空から退去後すぐに中国側に帰るのが自然だと考えられます。ただ今回は相当に強い警告を受けているはずなのに、領空を出た後も周辺で長く旋回しているため、わざとなのではと疑ってしまうといいます」

森アナウンサー
「航路を見てみてもそうですし、中国が東南アジアで威圧行為を強めていることも考えると、どうしても意図的に入った可能性を疑ってしまうのも仕方ないかなと思います」

「さらに織田さんは、今後中国のこうした行動が繰り返され、徐々にエスカレートしていくことは警戒しなければいけないとしています」

■中国政府、領空侵犯の意図は?

斎藤キャスター
「こういった行動に対して、中国側は何と言っているんですか?」

近野解説委員
「中国外務省が日本時間27日午後4時から会見をしていて、『その問題については中国側は現在、関連する状況について確認中である』と述べた上で、『中国は、いかなる国の領空も侵犯する意図はない』と説明しています。ならばなぜ? と思わざるを得ませんが…」

鈴江アナウンサー
「中国側としては現在のところ、意図したものではないと発表しているということなのですね?」

近野解説委員
「『いかなる国の領空も…』というのは、一般論のようにも読み取れますよね。今回の事案については確認中としています」

「中国側の意図を即座に見極めるのは非常に難しいものがあります。警戒を続ける一方で、意図せぬ衝突を避けるためにも、何か事が起きた時には冷静な対応も求められます」

(2024年8月27日午後4時半ごろ放送 news every.「#みんなのギモン」より)