【解説】今後の政権運営どうなる…石破政権がぶつかる「3つの壁」
石破首相は11日午後、衆議院本会議で決選投票のすえ、改めて内閣総理大臣に選出されました。石破政権が今後ぶつかる「3つの壁」について政治部官邸キャップの平本典昭記者が解説します。
1.「国民民主の壁」首相決定権なし?
2.「自民党の壁」“石破おろし”
3.「野党の壁」いつ?内閣不信任案
──まずは1つめ。石破首相の政権運営に、国民民主党はどんな壁となりそうでしょうか?
11日、首相指名選挙が行われましたが決選投票でなんとか再選を果たした形です。選ばれた瞬間、笑顔はなく厳しい表情が象徴的でした。石破首相自身も周辺に「無事に選ばれるといいんだが…」と不安な様子をのぞかせていたそうです。
なぜかと言えば、与党で過半数を割ったため、野党がもし仮に一致結束したら選ばれないリスクもあったからです。そこで、手を差し伸べたのが国民民主党でした。国民民主が同じ野党の立憲民主の野田代表に投票せず、結果的に、自民党の味方をしたことで、再選が確実になった形です。なので、ある閣僚経験者は「今後、石破総理は大事な判断について国民民主の意向は無視できないだろう」と話しています。
──その国民民主党の玉木代表は11日、不倫報道がありました。この報道は今後、国会運営に影響が出そうでしょうか?
いくつか影響が出るのか取材しました。まず一報が出たあと、玉木さんの進退はどうするのか、国民民主は首相指名選挙で玉木さん以外の名前を書くのかどうか、などの懸念も出ました。しかし、玉木さんは続投の方向、首相指名選挙への影響もありませんでした。では、今後、何もないかと言えば、与野党の議員から「影響はある」との見方が多く出ています。
国民民主党は自民党側にこれまで「高いタマ」を投げてきましたが、ある自民党議員は「今後は強気に出にくくなるだろう」と。別の立憲民主党の幹部は「玉木さんの発言力は低下するだろう」と指摘しています。まさにこれから政策の議論、「103万円の壁」の問題などでは、国民民主党は「178万円まで引き上げたい」と、ただ、与党側は「178万は高すぎる」と、どこでラインを引くかなどの協議が本格化します。この協議にどう影響が出るかが今後のポイントになります。
──2つめの壁は「自民党の壁」。先ほど石破さんが首相に選出されたばかりですが、今後“石破おろし”の動きはあるのでしょうか。
先週開かれた自民党の選挙の反省会で石破首相に辞任を求める声が複数出ました。ただ、「石破おろし」の動きは広がっていません。
なぜか?カギを握る数字があります。1つめが「34%」。これは選挙直後に行った緊急世論調査での石破政権の支持率です。9月の政権発足直後から17ポイント急落し、政権への失望感が広がったと言えると思います。
カギを握る数字がもう一つあります。「56%」。これは、石破首相が辞めるべきかどうか聞かれ「辞任するべきと思わない」と答えた人の数字です。「半数以上が辞める必要なし」と。「支持しないけど今、辞める必要はない」、これが、世論の温度感という見方が自民党内でも多いんです。
この「奇妙なバランス」の背景にはいくつかの理由があります。ある自民党ベテラン議員は「次に今、総理になろうという議員がいない」とか、自民党議員からは遅くとも「3月の予算成立まで、もしくは夏の参院選の前まで石破総理でいくべき」という声が多いです。今は「石破おろし」の動きがありませんが、党内の不満のマグマがいつ噴出してもおかしくない状況とも言えます。
──そして3つめの壁が「野党の壁」。今後、内閣不信任案という動きが出てくる可能性もあるのでしょうか。
多くの国会議員が「国会の景色が一変した」と言っています。予算委員会の委員長など複数の委員会を仕切るポストが野党の手に渡りました。法案審議で与党が苦しむ場面がこれまでより多くなるのは必至です。
中でも少数与党になって一番影響があるのは、「内閣不信任決議案」をめぐる環境です。一言で言うとこれまでは「出しても与党に否決される内閣不信任決議案」が「出せば通る」可能性がある状況に一変したわけです。ある野党幹部は「これまでの国会では『伝家の宝刀』=最強のカードは首相の『解散権』だったが、この国会では野党の『内閣不信任決議案』だ」と話しています。
不信任案が可決され石破首相が内閣総辞職か、解散総選挙を迫られるリスクが高い国会になりそう、というわけです。
石破首相は周辺に「支持率が低くても政権運営を続けろという声に応えるには結果を出すしかない」と話しています。厳しい環境でどう結果を出していくかの戦略が問われています。