処理水海洋放出の決断…岸田前総理「福島の復興にとって先送りできない」 福島
震災・原発事故の発生から来年3月で14年です。「復興と廃炉」を進めるために時に不可欠なのが「政治の決断」。処理水の海への放出といった福島の復興にとって大きな決断をしたのが10月に退任した岸田文雄・前総理大臣です。そのとき、何を思い決断を下したのでしょうか。
■岸田 文雄 前総理大臣
「こんにちは、よろしくお願いします…」
野尻キャスター「こちらのお菓子、見覚えありますでしょうか」岸田氏「あーはいはい。覚えています。英国ジョンソン首相が持ってきてくれたお菓子ですね」
野尻キャスターが見せたこのお菓子。岸田前総理が2022年に臨んだイギリスとの首脳会談で、当時のジョンソン首相が持参し、絶賛したものです。外交の舞台で「福島のお菓子」が取り上げられたと、県内でも一躍話題になったそのお菓子が本宮市にあるぬか茂の「紅茶かりんとう」でした。
野尻キャスター「その時どんなやり取りがあったんですか?」
■岸田 文雄 前総理大臣
「日本産食品の輸入規制を解除するというのが最も大きな政治課題の内の1つだったわけですが、これは大変おいしい、素晴らしいと褒めてくれて様々な風評被害払拭に貢献してくれた。結果として、2022年に英国、2023年にはEUの規制が解除されるなど、各国のこの輸入規制の解除の動きが加速した。やっぱり外交、最後は人間の信頼関係だと思います」
岸田前総理、在任中は福島にとって大きな政治決断を下しました。
■岸田 文雄 前総理大臣
「避けて通ることができない重要な課題だと認識していました」
福島第一原発にたまる処理水の海への放出です。
野尻キャスター「非常に難しい決断だったかと思うのですが、どのような点を重視して決断したんでしょうか?」
■岸田 文雄 前総理大臣
「まずおっしゃるようにALPS処理水の処分は福島第一原発の廃炉、さらには福島の復興にとって先送りできない。なんとしても私の政権の時に前に進めなければいけない。こういった強い思いを持って取り組みました」
IAEA=国際原子力機関も処理水は安全だとする一方、海を生活の糧とする漁業者らを中心に、海への放出は避けて欲しいと反対の声もあり調整は難航。長年、先送りされてきた問題でした。
■岸田 文雄 前総理大臣
「ちょうどアメリカから帰国した直後だったと思います。すぐその足で福島第一原発を視察させてもらって説明を聞き、自分自身の目で安全を確認をし、強い責任と覚悟を持って取り組んでもらいたいと、対応に万全を期してもらいたいという指示を行いました」
事が大きく動いたのは去年の8月。岸田前総理は、処理水の海洋放出の開始を決定したのです。ただ当時は、漁業者から放出そのものや安全性への理解は十分に得られておらず、その判断が「急すぎる」といった声もありました。いまも、県漁連は処理水の海洋放出にそのものに反対の立場は変わりませんが…。
■岸田 文雄 前総理大臣
「(県漁連の)野﨑会長から、政府の取り組みについて「評価する」というお言葉をいただいた。このことは大変私としても感激した。大変ありがたい言葉をいただいた。これを強く感じた次第です」
政府の漁業者支援に評価する声もありました。思わぬ問題となったのが中国の存在です。処理水の放出後、日本産の水産物の輸入を禁止にした中国。全国の漁業に大きな影響を及ぼしました。1年あまりもつれ込んだこの問題ですが、岸田前総理の退任間際の9月、輸入の再開に向け、一定の道筋をつけることができました。
■岸田 文雄 前総理大臣
「直接、中国に対しての働きかけも行いましたが合わせて周辺の国々、太平洋島嶼国をはじめ周辺の国々が科学的知見に基づく日本の説明について理解を示してくれてきた。このことも大きかったと思います。多くの国々に対して働きかける。こうした努力が結果につながったと思っています。」
総理在任期間の3年であっても福島の復興の動きがめまぐるしくありましたが、それでも「福島復興」は道半ば。岸田前総理は、これからの福島復興にどう向き合うのでしょうか。
■岸田 文雄 前総理大臣
「復興、もちろん大事なことですけど、やはり未来に夢が広がるような、希望が持てるような「復興」。より大きく福島や東北が花開くような「復興」、こういったものを目指していきたいと思いますし、それをみんなで応援したい。このように思います。」