【特集】衆院選を検証 ”昨日の友は今日の敵” 新潟4区・因縁の三つどもえ ≪新潟≫
それぞれに因縁がからむ3人が顔をそろえました。
立憲民主党の米山隆一さん。
無所属で出馬した泉田裕彦さん。
一足遅れて自民党の鷲尾英一郎さんが会場に姿をみせました。
知事時代の米山さんをかつて支えた鷲尾さん……その鷲尾さんと泉田さん、同じ自民党の所属です。
本来であれば仲間同士です。
<泉田裕彦氏>
「好きな食べ物はバナナかなと」
<鷲尾英一郎氏>
「おにぎりが大好きでおにぎりばっかり食べています」
<米山隆一氏>
「妻の作ってくれる手料理が。おいしく食べております」
食べ物の好みも分かれるように袂を分かち、別々の道を歩む3人。
ときには闘牛場で……またあるときには新年を祝う場で鉢合わせ。そしてついに衆院選で相まみえました。
12日間にわたった選挙戦。米山さんのそばにはいつもこの人がいました。
妻で作家の室井佑月さんです。写真の撮影係は候補である米山さん……選挙中のおなじみの光景です。
抜群の知名度を誇り米山さんを公私両面でサポートします。
<室井佑月さん>
「嫁いでまいりまして4年が経ちました。米山・泉田・鷲尾いろいろいますけれども地元にいっぱいいるのは私であります」
米山さんは3年前の前回選、野党統一候補として無所属で出馬し初当選。その後、立憲民主党に入りました。
医師や弁護士という多彩な経歴を誇る米山さんのもう一つの肩書が……「前・県知事」です。
2016年の県知事選で初当選しました。
新潟の県政史上初めて誕生した野党系の知事……米山県政を支えたのがこの人でした。
<鷲尾英一郎さん(当時)>
「新潟県下の諸課題が沢山ございますが支えていくつもりでおりますので」
当時の民進党県連代表代行を務めていた鷲尾英一郎さんです。
かつて手を取り合った2人……議席をめぐってライバル同士となりました。
集会を終えて会場から出てきた米山さんの両手には大きなバッグが……つかの間の休憩時間。
バッグから取り出したのはノートパソコンです。
選挙期間中に米山さんが力を入れたのがSNSの発信です。
街頭演説やミニ集会の様子。さらに室井さんとの夕食の一コマなど情報をこまめにアップしていきます。
<米山隆一氏>
「一番インパクトがあってかつ親しみをもてるように(写真を)選んでいます」
いわゆるネット選挙・・その効果について米山さんは。
<米山隆一氏>
「街頭演説は大事だがどんなに聴衆が集まっても300人集まったらけっこうなもんですよ。それをSNSで流すことで2000、3000の方に見てもらうことが可能なわけですからそういう意味で非常にいいツールとして使わせていただこうと思います」
米山さんが“SNS”ならこちらは“足”で勝負。自民党の鷲尾英一郎さんです。ヘルメットを被り気合十分です。
より近くで有権者と触れ合い人柄や政策を伝えたいと自転車での街宣活動です。自転車選びには鷲尾さんらしいこだわりが……
<鷲尾英一郎氏>
「電動付きだと楽じゃないですか。楽なのはダメです」
その言葉ににじむ政治家としての信念。地元でのあいさつ回りを「ご縁結び」と語る鷲尾さん。旧民主党出身で無所属をへて2019年に自民党に入党しました。
自民党入りの後ろ盾となったのがこの人でした……
<鷲尾英一郎氏>
「官房長官(当時)、パンケーキが好きだった言うじゃないですが本当に好きなんですよ」
菅元総理です。信頼は厚く、菅政権のもとで外務副大臣を務めました。
選挙期間中も鷲尾さんの応援のため出雲崎町を訪れました。
<菅元総理>
「鷲尾英一郎を皆さんの手で今回も国会に送ってください。私どももしっかりと後押しをさせていただきます」
さらにこの人も……党内きっての知名度を誇り、選対委員長を務めた小泉進次郎さんです。
自民党の総裁選で鷲尾さんは小泉さんの推薦人代表を務めました。
<小泉進次郎氏>
「それだけお世話になっている鷲尾さんだからきょうの日程は鷲尾さんのこの会の日程を決めてからほかを組んだんです。私は総裁選で負けましたがこの衆議院選挙で鷲尾さん負かすわけにはいきません」
党の重鎮、幹部の応援を受け分厚い組織戦を展開した鷲尾さん。3年前の前回選は比例代表での当選……自民党の候補として小選挙区で戦うのは今回が初めてです。
選挙戦の最終日……最後の訴えです。
<鷲尾英一郎氏>
「とくに自民党の裏金問題。疑念の目を向けられて大変厳しい。私自身は迷惑な思いだがやっぱり全部一緒くたにみられてしまう」
自民党への逆風のなか、地元選出の国会議員として地域が抱える課題を解決する……そう決意を語ります。
<鷲尾英一郎氏>
「知名度が劣るからなんだ。私はみなさんにむかって長岡じゅうに向かって叫びたい気持ちです。なぜならば政治の本質をしっかりと追求し、みなさんのためになるのはこの私だけだと確信しているからだ」
ただ、その言葉には焦りがにじみます。
<鷲尾英一郎氏>
「本当は勝ちが分かっている選挙を戦いたかった。準備ができていればそういう姿をお見せできたでしょう。しかしそういうことにはならなかった」
手を取り合った仲から選挙戦でライバル同士となったふたり。吉報が届いたのは……
立憲民主党の米山さんでした。2位の鷲尾さんに2万2000票あまりをつけて2回目の再選を果たしました
<米山隆一氏>
「今回の勝利はここにいらっしゃるみなさん、 応援してくれた有権者の皆さん。全4区であり全体すべての人の勝利・気持ちの結果だと思っております」
一方の鷲尾さん。比例代表での復活当選にも届かず涙をのみました。
出口調査の結果をみると米山さんは無党派層のおよそ5割の支持を集めた一方鷲尾さんは1割あまりにとどまりました。
さらに、注目すべきは無所属で出馬した泉田さんが3割の支持を集めた点です。
<米山隆一氏>
「割に泉田さんは与党支持者からも野党支持者からも(票を)取っていてこちらに有利だった」
三つ巴のもう一人、無所属で出馬した泉田裕彦さん。自民党の候補としてこれまでに2回衆院選で当選していますが今回は公認が得られず無所属で出馬しました。
<泉田裕彦氏>
私2021年前回の総選挙で某県議からですね、裏金の要求を受けました」
裏金政治の根絶を訴え草の根の選挙戦を展開しました。
泉田さんは鷲尾さんと同じ自民党の一員……その結果鷲尾さんと泉田さんは支持層が重なり票を奪い合う結果になりました。さらに県知事を12年務めた実績があり知名度も高い候補です。
<鷲尾英一郎氏>
「結果から言えばもう少し分析が必要ですけども 影響はあったと思いますし、保守系で一本化できるところが分裂した動きはあろうかと思います」
選挙結果を左右するキーマンとなった泉田さん。長岡市の選挙事務所で落選という結果を見届けました。
<泉田裕彦氏>
「非公認に自民党から2000万円支部に支給されたと……私には1円もきてません。つまり裏金をやった人には支援がいって、裏金を告発した人には1円もこない構造になっていました。12日間大変お世話になりました。ありがとうございました。」
泉田さんは今後の政治活動については「相談して決めたい」としています。
三つ巴の争いが繰り広げられた新潟4区。また新たな因縁がここから生まれていくのでしょうか。