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解説:震度5強、震源発表…時間かかった訳

2022年1月10日 21:29
解説:震度5強、震源発表…時間かかった訳
ここ最近の気になる地震活動について掘り下げる「週刊地震ニュース」。社会部災害担当キャップ・中濱弘道記者とお送りします。

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「NPO法人 環境防災総合政策研究機構」が公開している地図。こちらは今月3日から9日まで、先週1週間におきた震度1以上の地震の震源と、その深さを示したものです。「緑色」が震度1、震度3が「オレンジ」、震度4が「赤」と色が変わっています。

9日までの1週間に国内では、震度1以上の地震が35回発生しました。その中で今回注目したのが、今月4日に小笠原諸島で震度5強の揺れを観測した地震です。震源は父島の近海でマグニチュードは6.1、震源の深さは77キロでした。この地震による津波は観測されませんでした。

震度5強を観測した母島にある商店では、棚にある商品が倒れたり、一部が落下したりするといった被害がありました。震度4を観測した父島に住んでいる人によると「下から突き上げるような揺れのあとに、横揺れが15秒くらい続いた」ということですが、小笠原村役場によりますと「建物被害やケガ人はなかった」ということです。

――今回、緊急地震速報がテレビで流れ驚いたのですが、震源や津波の有無についての情報が出るまで長かったように感じました。

地震発生は4日午前6時8分、震源と津波なしの情報が出たのが8分後の午前6時16分でした。

地震情報の発表の流れになりますが、大きな地震がおこると「緊急地震速報」がテレビや携帯メールに届いて、揺れに対する警戒を呼びかけ、地震発生後1分半ほどで「震度速報」という震度3以上の揺れが観測された地域が発表されます。そして、地震発生後およそ3分で、「震源の場所」と「マグニチュード」、「震源の深さ」、そして「津波の有無」が発表されます。津波がある場合には「津波警報」や「注意報」が出されるというのが一連の流れになります。

では、なぜ今回は、8分もかかってしまったのか。気象庁地震津波監視課に長年勤務し、現在は環境防災総合政策研究機構の草野富二雄さんにポイントを解説してもらいました。草野さんによると、「今回の地震は震源近くの観測ポイントが少なかったため、震源を決定するのに時間がかかった」ということです。

地震発生後1分半ほどで、震度速報が発表されると説明しましたが、震度情報というのは人の手を介さず、震度3以上の揺れを観測した場所を、気象庁のシステムが自動的にテレビ局などに伝えています。ただ、震源というのは、24時間体制で勤務する気象庁の地震津波監視課の職員が「震源決定」という作業をしていて、今回のように小笠原諸島や南西諸島など島しょ部は、地理的に地震計の設置が制限されるので、地震がおきた場合、「震源を決めるためのデータが少ないため時間がかかることがある」といいます。

津波情報は、震源の場所と地震の大きさをもとに決めるので、「震源が決まらないと津波の有無も分からない」ということがいえます。

――海に囲まれた日本列島では、津波情報は一刻も早く知りたいですね?

1993年におきた北海道南西沖地震では、津波などによって奥尻島を中心に200人以上の死者がでました。このときは震源が島の近くであったため、地震発生直後には津波が到達していたとされていますが、津波警報が発表されたのは地震発生から5分後でした。

こうした教訓などをもとに、気象庁は「津波警報の発表を少しでも早くできるようにしたい」ということで技術改善をはかり、現在の3分程度で発表というところまでやってきました。

――ただ、今回のように、場所によっては津波情報の発表まで時間がかかることもあるかもしれない、ということを知っておくことが必要ですね?

今後、想定されている南海トラフ地震では、地震後2分程度で津波が到達する場所もあります。まだ強い揺れの最中に避難を開始しないと間に合わないということもあります。

津波情報を待つ姿勢にならず、海沿いなどにいるとき、海岸近くにお住まいの人は、これまでに経験したことのない大きな揺れのときには、津波を引き起こすような大きな地震の可能性があるので、「念のために高いところに避難行動を開始する」ということが大切かもしれません。

以上、「週刊地震ニュース」でした。