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カップルで妊娠前の健康考えるセミナー

2022年1月21日 17:52
カップルで妊娠前の健康考えるセミナー

1月18日、国立成育医療研究センターが「プレコンセプション(妊娠前)ケア=女性やカップルを対象として将来の妊娠のための健康管理を促す取り組み」について、オンラインセミナーを開催しました。セミナーでは、性教育、HPVワクチン(子宮けいがんワクチン)、意識していない不妊について専門家が解説しました。

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「プレコンセプションケア」とは、「女性やカップルを対象として将来の妊娠のための健康管理を促す取り組み」のことです。

東京・世田谷区にある国立成育医療研究センターでは、プレコンセプションケアセンターが開設されています。荒田尚子医師は、なぜこのケアが必要なのか、「日本は、体外受精が世界でナンバーワンといわれています。一方で、意図しない妊娠、栄養障がい、月経関連疾患などが増加しています。その背景には、若い男女の健康、および次世代の健康対策が不足している」と指摘しています。

■性教育は“人権を学ぶこと”

埼玉医科大学産婦人科助教・高橋幸子医師は、中高生などに性教育を行っています。高橋医師は性教育について「被害者にも加害者にも傍観者にもならない教育」だとしています。

世界での性教育について、先進国では「性的同意」(性的な行為について当人が同意すること)や「性の多様性」など人権教育のことを、発展途上国では「避妊」や性感染症などのことを指し、「その人がその人らしく生きる権利」を学ぶことだと話しました。

「子どもを持つか持たないか、持ちたいなら何歳のときに何人持つか、それをかなえるのは個人の自由」だとした上で、インターネットなどの間違った情報から、将来子どもが欲しいと思ったときに、子どもが持てないからだになってしまう可能性について指摘し、性教育の重要性を訴えていました。

例えば、性感染症による不妊や、思春期から間違った方法でのセルフプレジャーを続けることで、膣内射精ができなくなってしまうケースなどがあげられました。また、国内では、幼少期からの包括的な性教育が欠如していると指摘しました。

性教育の国際標準であるユネスコの「国際SEXUALITY教育ガイダンス」では、5歳から8つの主なコンセプト(「人間関係」、「価値観、人権、文化、セクシュアリティー(性のあり方、性的指向や性自認など)」、「ジェンダーの理解」、「暴力と安全確保」、「健康とウェルビーイング(幸福)のためのスキル」、「人間のからだの発達」、「セクシュアリティーと性行動」、「性と生殖に関する健康」)について、段階的に積み重ねて学習していくといいます。

日本では性交同意年齢は13歳です。それまでに性教育の知識を与え、性交同意年齢以降は、性行動にともなうサポートが必要だといいます。若者むけクリニックのような所を増やし、費用を支援したり、受診のハードルを下げたり、保護者や学校の先生など、何かあったときに相談できる大人を3人見つけておくことが重要だというアドバイスがありました。

■子宮けいがんを予防しよう

昭和大学医学部産婦人科学講座・小貫麻美子医師は、子宮けいがんについて解説しました。

子宮けいがんは、HPV=ヒトパピローマウイルスが主な原因となる子宮の入り口にできるがんです。毎年1万人が子宮けいがんと診断され、2800人が亡くなっているということです。ワクチンで予防が期待され、今年4月、中止されていた積極的勧奨が再開されます。また、がん化する前に前がん病変がみられるため、定期検診が効果的です。

検診受診率は世界各国と比べ低い水準で、アメリカでは83%、日本は42%にとどまるということです。子宮けいがん発症のピークは30代で、妊娠・出産を迎える年代にあたります。一部の例外を除いて、手術や抗がん剤治療の影響で自力での妊娠が不可能になるといいます。

小貫医師は、「命を落とさないことはもちろん、安全に妊娠・出産をするためには子宮けいがん予防は非常に大事だ」と話しました。

■男性の「アンコンシャス不妊」

気が付かないうちに不妊になる「アンコンシャス不妊」について、不妊治療にあたる梅ヶ丘産婦人科の齊藤英和医師は、生活習慣が不妊につながっている可能性を指摘しました。不妊の原因は男女、五分五分だとして、セミナーでは男性の不妊について取り上げられました。

齊藤医師は、男性の「アンコンシャス不妊」と関連する可能性がある要因に「たばこ、多飲酒、運動不足、サウナや長風呂などの温熱」などがあるといいます。近年のサウナブームについて聞くと「サウナ好きの男性が全員不妊というわけではなく、ケースバイケースだが、なかなか妊娠しないという人はサウナをやめてみるのはいいかもしれない」と話しました。

また、診療にあたる中で、避妊をやめればすぐに妊娠すると思っている人が多いことを指摘し、「妊娠の能力は年齢によって変わることも知ってほしい」としています。「生活習慣は気をつければ、結構変えることができるため、できるだけ不妊の要因を取り除き、妊よう性を高めることだ」と呼びかけました。

思春期など若いころは、妊娠・出産について考える機会はあまりありませんが、将来、子どもが欲しいと思ったときに手遅れにならないよう、知識をつけることは必要だということです。運動不足など生活習慣を見直し、健康的な生活を送ることは、子どもを持たない選択をした場合でも、充実した人生になるのではないでしょうか。