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3.11大震災シリーズ「さらば、じじい部隊 老いてなお…原発のまちで」

2022年5月27日 13:25
3.11大震災シリーズ「さらば、じじい部隊 老いてなお…原発のまちで」
福島県大熊町で、 福島第一原発の事故後、役場OBなど6人で結成された「じじい部隊」。全町避難で無人となった町を守り続けてきました。

原発事故で時が止まったままの故郷を取り戻すため…。じじい部隊は立ち上がった。

「ハゲと白髪の集まりの、じじい部隊」

消防士や役場の職員など、町に尽くしてきたOBが臨時職員として集結。

いまだに立ち入りが制限される、帰還困難区域を、空き巣や野生動物から守る。

リーダーは鈴木久友さん。

「町内に帰還できるようにすると」

大熊町役場の元総務課長。定年後、故郷のために働こうと、仲間に声をかけた。ユニホームは白い防護服。

鈴木さん「私たちも希望を絶やさず、大熊を取り戻すと」

鈴木さんのかつての職場、大熊町役場も時間は止まったまま。原発マネーは、町に活気をもたらし、人々の生活も潤った。町と共存していた原発。しかし…。

鈴木さん「発電所の方向からパーンと乾いた爆発音が聞こえたの」

原発と共に歩んできた人々は、事故によって故郷を追われた。更に追い討ちをかけるように、国は、放射性廃棄物を保管する『中間貯蔵施設』の建設を計画。

鈴木さんの自宅は原発から、わずか300mほどにある一軒家。息子や孫と暮らすために建て替えた家は壊され、放射性廃棄物にのみ込まれてしまう。

鈴木さん「思い入れっていうかね、愛着があるんだよ。俺の人生そのものだな」

先祖代々400年以上、ここで暮らしてきた。

鈴木さん「ある程度中間貯蔵施設もやむを得ないとは思うんだけど」

故郷のためにじじい部隊と汗を流す時間は、鈴木さんの心を少しだけ軽くしてくれた。ようやく国の担当者が、避難している家にやってきた。

国の担当者「買取という形でやらせていただいて、 環境省のほうで解体をして…」

鈴木さん「私も復興のためには中間貯蔵は必要だということは理解しています。すぐ住めないにしてもまず1回は国の責任で町内全域を(除染する)、それ約束していたわけですから」

任務開始から5年。除染が済んだ一部の地域では、初めて避難指示が解除されることになり、人が戻り始めた。

新しい役場や住宅も完成した。ここが、じじい部隊の引き際。解散することを町に告げた。

鈴木さん「我々6人のじじい部隊の思いは、託されたのかなと思います。じじいになってくると涙腺が緩んできて涙もろくなって、本当にありがとうございました」

土地の提供は、苦渋の思いで決断した。

鈴木さん「自分の家でありながら、いまは自分の家じゃないです、環境省に渡しました。もう終わりだね…」

でも、全域除染は始まらない。任務を終えた時に思いの丈を込めた桜は、今も故郷を見守っている。

「早えなあ」

「あっという間だ」

「あれから3年、頭もずいぶん薄くなったし、白くなったし」

「ハゲと白髪の集まりだ」

桜よ、俺たちの夢はかなうのだろうか…。

NNNドキュメント2022年3月20日放送「さらば、じじい部隊 老いてなお…原発のまちで」を再編集しました