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薬物事件で数々の有名人を逮捕 警視庁組織犯罪対策5課がなくなる!?

2022年1月29日 13:33
薬物事件で数々の有名人を逮捕 警視庁組織犯罪対策5課がなくなる!?
組対5課捜査員らの家宅捜索

警視庁で薬物捜査などを担う組織犯罪対策第5課、通称「組対(ソタイ)5課」。数々の有名人を逮捕し、厚生労働省麻薬取締部、通称「マトリ」と共に薬物に手を染めた人には恐れられる存在だろう。この組対5課が19年の歴史に幕を下ろすことになった。一体どういうことなのか。

■「5」へのこだわり

数々のヒット曲を世に出してきたシンガーソングライター。球界を代表する強打者として活躍した元プロ野球選手。多くの映画やドラマに出演してきた俳優。違法薬物を所持したなどとして警視庁の組織犯罪対策第5課が逮捕した人物だ。

数々の有名人を逮捕し注目を浴びてきた組対5課だが、実はこの春になくなってしまうという。

現職の組対5課の幹部は――
「19年の歴史があるから4課みたいに『5』っていうナンバーにこだわりもでてきてしまったね」

“ナンバー”とは、各課にふられた数字のこと。1課から5課まである組織犯罪対策部のほか、刑事部も捜査1課から3課まであり、とにかく警察はナンバー課が多い。

実は、暴力団の捜査を担当していたかつての刑事部捜査4課は、組織犯罪対策部に移った際にも「4」というナンバーにこだわり組対4課になったという。

■警視庁組織犯罪対策部改編へ

いま、警視庁では、この組織犯罪対策部がその姿を変えるべく着々と準備が進められている。

そもそも、組織犯罪対策部とは暴力団や不良外国人、薬物事件など組織的な犯罪を取り締まる部署。2003年に発足したが、担当課ごとに分散している情報を集約し捜査を効率化しようと、ことし4月1日、発足以来初めて改編されるのだ。

この改編では、新たにマネー・ロンダリングを捜査する「犯罪収益対策課」が新設されるほか、外国人の犯罪を捜査する組対1課と2課を「国際犯罪対策課」に、暴力団の対策や捜査を行う3課と4課を「暴力団対策課」に統合する。

そして、薬物や銃器の捜査を担う5課は「薬物銃器対策課」に変わるため、こだわりのナンバーがなくなってしまうのだ。5課の捜査員の人数を増やし増加する薬物の密輸入事案の取り締まりや若年層の大麻対策を強化するという。

■組対5課ってどんな部署?

警視庁に薬物の捜査を担当する課ができたのは、いまから60年前の1962年のこと。当時は、防犯部の麻薬課という名称だった。

この麻薬課は、その後、保安第二課、薬物対策課と時代と共に名を変え、1995年には、防犯部の薬物対策課から生活安全部の薬物対策課となり、この年に銃器の捜査を担う銃器対策課も新設された。そして、2002年、薬物対策課と銃器対策課は銃器薬物対策課に統合された。

しかし、それからわずか半年。犯罪の種類を問わずに組織的な犯罪に対応しようと組織犯罪対策部が発足。これに伴い、銃器薬物対策課は「組織犯罪対策第5課」として再出発し、有名人の薬物事件はもちろんだが、過去最多となるおよそ1トンもの覚醒剤を押収したり、国内最大規模の密売グループを摘発したりと、数々の事件を“あげてきた”。

■銃器薬物?薬物銃器?

今回、19年の歴史に幕を下ろしことし4月から始動する「薬物銃器対策課」。組対5課になる前は、「銃器薬物対策課」だったが、今回は「薬物」の文字が「銃器」の前にあることに気づいただろうか。

全国の警察のホームページを見てみると、「薬物」の前に「銃器」がくる「銃器薬物対策課」という名称なのは宮城県警だけで、「薬物銃器対策課」や「組織犯罪対策課」としている警察が多かった。ちなみに、全国の警察を指導する警察庁も「薬物銃器対策課」だ。

今回の改編で従来の「銃器薬物対策課」に戻すのではなく「薬物銃器対策課」とした理由について警視庁は、「『薬物銃器対策課』が全国的にスタンダードなことから『薬物』を前にした」としている。

■現職の組対5課員は

今回の改編について現職の組対5課の捜査員はどう思っているのか。

ある捜査幹部に聞いてみると、こう話した。

「組対5課って名前がなくなってしまうのは寂しい。当初は他部署に電話して『組対5課です』って名乗っても『はい?なんの部署?』って言われてたけどこの19年で全国的にも浸透してきたので」

さらに、別の捜査員はこうつぶやいた。

「バッジを作ったばかりなのにどうなるんだろう…」

実は、おととし、組対5課では、「V」と書かれたバッジが作られていた。この「V」の文字にはローマ数字で5課の「5」とグローバル化した犯罪組織を壊滅させ勝利する=「Victory」を掛け合わせた意味があるという。

このバッジについて、組対5課幹部は、「5課じゃなくなってもVictoryという意味ならこのまま使うことはできるが、改編後も使い続けるのか現時点では未定」としている。

およそ2か月後に行われる組対部の改編。

「やることは変わらないが、名前も変わり心機一転、改めて銃器や違法薬物の取り締まりを強化していく」(組対5課幹部)