「8割」が不登校を経験――“特例校”の独自授業とは? 授業は紙1枚、漢字は「ルビ」…「これなら自分でも分かる」達成感に
生徒の約8割が不登校を経験しているという、「不登校特例校」の横浜市内の高校では、独自の教育が行われています。1年生の授業では教科書を使わずワークシート1枚で、漢字にルビが振られています。悩みの相談体制も充実。教員や生徒の思いを取材しました。
■高校は3校のみ…「不登校特例校」
神奈川・横浜市にある星槎高校を訪ねました。
教室の風景は一見、どこにでもあるものですが、「中学校3年生までずっと不登校でした」「本当に全く学校に行けなくなってしまっていて…」と1年生たちは言います。生徒の約8割が不登校を経験しています。
ここは不登校の生徒などに合わせた独自の教育を行える「不登校特例校」と呼ばれる学校で、全国で21校ありますが、高校は3校のみです。
■授業の終わりを明確化して「達成感」
どんな工夫を行っているのか、1年生の英語の授業を取材しました。
生徒の机の上には、筆箱と1枚のA3サイズの紙がありました。この高校ではほとんどの授業で教科書やノートを使用していません。
不登校を経験した生徒の中には、勉強に苦手意識を持っている生徒も多く、教科書ではなく1枚のワークシートにすることで授業の終わりを明確化し、達成感を得られるようにしています。
小中学校で不登校を経験した1年生は「授業にも出ていなかったし、授業に出ることすらも怖くて…」と言います。苦手意識を克服できるようにするための工夫です。
■ワークシートにも工夫 漢字にルビ
そのワークシートにも工夫があり、全ての漢字にルビを振っています。
1年生の担任は「漢字にはルビを振っています。漢字がだーっと並んでいると、それだけで読むのが難しいとなる子もいますので、『これなら自分でも分かるかも』という感覚を1年生の皆さんには大事にしてもらっています」と話します。
■学校と家庭で生徒を見守る体制も
さらに授業後には、担任の教諭が生徒に話しかける場面がありました。
教諭
「今日の学習はどうでしたか?」
生徒
「楽しかったです」
教諭
「本当に? いま引っかかっちゃってるとこなさそう? 全体的にいま順調? 試験も近いけど」
生徒
「まあまあ大丈夫」
教諭
「内容も大丈夫そうだね。理解度もOKということで、この調子で続けていきましょう」
授業や学校生活で悩みがないか、相談できる時間を確保しています。面談以外にも、生徒が専用の投稿フォームで担任に学校生活の悩みなどを相談できるようになっていて、ここでの内容は保護者にも共有され、学校と家庭で生徒を見守っていく体制が取られています。
■保健室にいてもタブレットで授業把握
ただ、ある1年生が「学校に着いて少し嫌なことがあったりとか、そういうことがあって(体調を)崩してしまった時は保健室に行きます」と言うように、中には毎日教室には来られず、保健室などで過ごす生徒もいます。
その場合でも、1人1台持っているタブレット端末でワークシートが見られるようになっていて、授業内容を把握できます。
■新たな一歩踏み出した1年生の思い
1年生の担任
「(生徒に)自信をつけていってもらいたい、というのはすごく私たちありますので、やっぱり自信をつけることで登校にもつながるし、勉強へのモチベーションだったりとか、たくさんの仲間をつくっていこうとか、モチベーションになっていきます」
中学校で不登校を経験し、新たな一歩を踏み出せた1年生の生徒に聞きました。
「勉強もかなり遅れてしまっていて、本当に高校で取り戻せるかなっていう、すごい不安はあったんですけど、友達もすごくできましたし、安心できる居場所というか、そういう所があるというのが、自分が前向きになれたところだなと思っています」
■瀧波さん「取り戻す姿勢だと負担に」
瀧波ユカリさん(漫画家)
「とても素晴らしい取り組みだと思いました。私も子どもを育てているので想像ができますが、不登校などを経験すると、どうしてもお子さんも親御さんも『遅れを取り戻そう』という焦りが出てきてしまうと思います」
「学校も同じように『取り戻そう』という姿勢だと、負担が重くなって続けられなくなるという子も出てくると思います。そこで学校が『自信をつけてあげる』という観点でやってくれると、とてもいいバランスが取れるのではないかなと思いました」
岩本乃蒼アナウンサー
「生徒さんにとっても保護者の方にとっても、負担が軽くなるような形が続いていくといいですよね」
(2月10日『news zero』より)