国内シェア8割「萬古焼の土鍋」生産中止の危機 中国企業の”鉱山"買収で原材料の輸入止まり…
耐熱性に優れ、割れにくい「萬古焼」の土鍋は、国内シェアの8割ほどを占めているといいます。しかし、その原材料の輸入がストップし、土鍋が生産できなくなる危機に直面しています。原因は、土鍋の原材料の4割から5割を占める鉱物「ペタライト」を産出する鉱山を中国企業が買収したことです。
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食欲の秋。お米がおいしくなる季節です。
都内にある飲食店「三代目 米蔵」の名物は、土鍋を使った炊き込みご飯です。特に土鍋にはこだわっていて、三重県の「萬古焼」という陶磁器を使っています。
三代目 米蔵 高橋直行店長
「炊きあがり、お米の蒸れ加減、(お米の)立ち具合がいいですね。甘みも引き出される感じがします」
「萬古焼」の土鍋は耐熱性に優れ、割れにくいとされます。国内シェアの8割ほどを占めているのが萬古焼なのですが、その原材料の輸入がストップ。土鍋が生産できなくなる危機に直面しているというのです。(※萬古陶磁器工業協同組合による)
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いったい何が起きているのか。26日、萬古焼の産地・三重県四日市市へ向かいました。工場では、鍋の需要が増えるこれからに向け、土鍋の製造が行われていました。
そして、この土鍋つくりに欠かせないというのが、土鍋の原材料の4割から5割を占める鉱物「ペタライト」です。
萬古陶磁器工業協同組合 熊本哲弥理事長
「ペタライト、これがジンバブエから(輸入されてくる)」
粉状にしたものを加えると、急激な加熱や直火に強い土鍋になるといいます。しかし――
萬古陶磁器工業協同組合 熊本哲弥理事長
「去年の2月にジンバブエの鉱山が中国の会社に買収されまして、まさか、ペタライトの入手がこんなに難しくなるのは想像していなかった」
去年、中国の企業がアフリカのジンバブエにあるペタライトの鉱山を買収。その狙いが「ペタライト」に含まれるリチウムだというのです。
近年、中国は電気自動車への転換で世界をリードしています。その蓄電に重要なリチウムを狙い、世界的観光地・ボリビアの「ウユニ塩湖」でも採掘を進めています。
こうしたリチウムを巡る世界的な争奪戦のあおりを受け、「萬古焼」の土鍋はジンバブエからの輸入に頼っていましたが、去年以降それが完全にストップ。今手元にあるペタライトだけでは、年内で生産が精いっぱいという危機に陥っているのです。
萬古陶磁器工業協同組合 熊本哲弥理事長
「(土鍋の製造に)60年使っているので、入手できればペタライトでつくっていきたいんですけど」
この危機的状況に三重県知事も、ペタライトが輸入できるよう、国への働きかけを要請していくとしています。
三重県 一見知事(定例会見、21日)
「外交ルートを使ってということになりますけど、なんとかペタライトを輸入できないかというところ」
それと同時に――
三重県 一見知事(定例会見、21日)
「ペタライトの配合量が少なくても、今までの萬古焼と同じ品質が確保できないか」
県をあげて「ペタライト」に頼らない「萬古焼」づくりも進んでいます。
内山製陶所 内山貴文専務取締役
「これが弊社でつくった新しいシリカでできた土鍋です。粘土部分にペタライトは一切使われていません」
企業秘密のため撮影はできませんでしたが、「シリカ」という代替の原料でつくった土鍋です。今年1月から販売を開始し、価格は以前より少し割高になりますが、セラミックコーティングを施し、鍋に具材がひっつきにくいという付加価値をプラスしています。
内山製陶所 内山貴文専務取締役
「撥水(はっすい)効果のある土鍋なんですけど、性能をあげるということで価格の上昇をご理解いただいた」
「萬古焼」の協会は新たな技術の開発を進める一方、「ペタライト」の輸入再開を引き続き求めていくとしています。