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【解説】終盤に“大逆転”で八冠達成 将棋担当記者に聞く藤井八冠の“圧倒的強さ”の理由

2023年10月12日 21:30
【解説】終盤に“大逆転”で八冠達成 将棋担当記者に聞く藤井八冠の“圧倒的強さ”の理由
11日に「王座戦」五番勝負の第4局が行われ、藤井聡太竜王が勝利し、前人未到の八冠独占を達成しました。終盤の大逆転はなぜ起きたのか、日本テレビ将棋担当記者の内田記者とお伝えします。

■「八冠の誕生だ」 敗色濃厚からの逆転劇

藤井貴彦キャスター
「藤井八冠が獲得した八大タイトルですが、『棋聖』のタイトルを17歳11か月で獲得したのをスタートに『王位』『叡王』『竜王』と獲得していき、11日に21歳2か月で『王座』を獲得しました。前人未到の『八冠』を達成しました」

陣内貴美子キャスター
「藤井八冠はなぜこんなに強いんでしょうか」

内田慧記者
「本当に藤井八冠はとにかく終盤に強いです。11日も終盤の大逆転でドキドキしました。今回の『王座戦』の全体を振り返っても、何度も敗色濃厚と苦しい状況にたたされて、対局中に藤井八冠ががっくりうなだれるような姿も見られました。そんな状況でも冷静に相手のミスを見逃さず、最終的に勝利に結びつけていました」

藤井キャスター
「11日は京都から内田記者も中継していて、敗色濃厚のような表情でずっと伝えていましたが、その後に大逆転しました。そのとき『もしかすると負けるのかな』という予想だったんですか」

内田記者
「私たちは報道控室にいました。藤井八冠の負けが確実だというところで、対局室に移動し始めようとしていたところにまさかの大逆転が起きて、その瞬間に『八冠の誕生だ』ということになりました」

■「AIを活用した勉強」から身につけた「藤井聡太の一手」

藤井キャスター
「まさに大逆転の記事、そしてニュースになりましたが、普通は終盤戦で持ち時間が少なくなるとミスが出るものですけど、藤井八冠はなぜ後半に乱れたりせず強いんでしょうか」

内田記者
「もともと、藤井八冠は持ち時間が少なくなることをあまり苦にしていないところがあります。さらに終盤力に定評があります。持ち時間が少ない中でも正確に最善手を指し、相手を追い詰めることができるという強さがあります」
「藤井八冠は小学生の頃からプロ棋士が出場する詰め将棋の大会にも出ていて、その中で5連覇という成績も残しています」

藤井キャスター
「藤井八冠というと、よく『AI』という言葉が出てきて、AIと比較されることが多いです」

内田記者
「藤井八冠は普段、『AIを活用した将棋の勉強をしている』と語っています。自分がいいと思った指し手とAIが考えた最善手を比べてみて、違いがあった場合、(AIが考えた最善手は)なぜこれがいいのかということを自分が納得いくまで考えるそうです。将棋の中で『普通ならこう指す』という常識にとらわれない考え方を身につけているのだと思います」

藤井キャスター
「『AIがこういう手を考えてきた』というのをスタンダードにして、そこからオリジナルの『藤井聡太の一手』をひねり出そうとしているのが訓練になっているのかもしれません」
「藤井八冠は今後、どこを目指したらいいんでしょうか」

内田記者
「今後はタイトルの防衛戦がメインになります。この防衛を続けていくと『永世称号』の資格が得られます」

藤井キャスター
「現役で『永世称号』を取得している棋士は5人しかいません」

【現役棋士の永世称号保持者】
谷川浩司 十七世名人
羽生善治 永世七冠
佐藤康光 永世棋聖
森内俊之 十八世名人
渡辺明  永世竜王・永世棋王

内田将棋担当
「この『永世称号』というのは、原則として引退後に名乗るものです。八冠を達成しただけでも歴史的な偉業ですが、このタイトルを長く持ち続けるということは、将棋の中で一時代を築いた人たちということになります」