“異次元”の少子化対策 京都大学柴田悠准教授に聞く 2025年のタイムリミット 「親ペナルティー」脱するには

政府は「こども・子育て予算倍増」「次元の異なる政策」を掲げ、実施する政策のたたき台を3月中にまとめる予定です。子育て支援策の効果を研究してきた京都大学の柴田悠准教授は、政策実行のタイムリミットは2025年と提言していて、子どもがいる人の幸福感が低い、いわゆる「親ペナルティー」を軽くしていくことも必要だと言います。どうすればいいのか、聞きました。
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京都大学大学院の柴田悠准教授は、2025年頃から、20代、つまり出産を考えるような若い世代の人口が急激に減るため、出生率が低いままだと、生まれる子どもの数が大幅に減り続けるとして、2025年までに、児童手当の拡充や学費負担軽減などを実行すべきと提言しています。また、雇用の安定、賃金の上昇、働き方改革も必要で、特に長時間労働を減らすことで、親の幸福感の低さ(=「親ペナルティー」)をいかに減らすかも重要だと主張します。
■「親ペナルティー」のある国、ない国
「親ペナルティー」とは、子どもを持つことで、経済的・身体的・心理的負担が増し、幸福感が下がることで、出産・育児と個人の幸福感についても研究してきた柴田さんは、これが少子化の要因のひとつと考えられると話しています。日本で1997年から2007年までに第一子を出産した女性約200人を調べた研究によると、主観的幸福感が、少なくとも出産後数年は下がっていたということです。
また、社会学の分野で有名な研究によると、日本以外の欧米18カ国を調べたところ、アメリカやオーストラリアなどでは、子どもがいる人は、いない人に比べ、幸福感が有意に低い、つまり「親ペナルティー」が観察されたということです。
一方、北欧諸国やフランスでは、子どもがいる人と、いない人で幸福感に違いがなく、国民全体の幸福感も他の国に比べて高いという傾向がみられたといいます。
「親ペナルティー」がみられる国とない国、その違いは、私生活と仕事の両立を支援する国や企業の制度(フレックスタイム制、有給休暇、育休)が充実しているかどうかだったそうです。
両立支援策が充実していると、働く母親は両立がしやすい上、父親も家事育児を担うことができ、本人の「父親ペナルティー」やパートナーの「母親ペナルティー」が減る可能性があり、子どもがいても、幸福感が下がらないとみられるということです。
そして、国民全体の幸福感が高い国では、両立支援が「育児」だけでなく、「プライベートと仕事の両立全般」を支えるものなのだといいます。
つまり、子育て中の人だけが制度の恩恵を受けるのではなく、有給休暇取得やフレックスタイムの理由が、(アイドルなどを応援する) 推し活も含めた趣味、友人関係、恋愛関係など、何でもいいのです。
「両立支援の予算確保のため、国債や税金も必要かもしれませんが、多少負担が増えても、みんなの多様な生活を守ろうという国が、幸福感が高く、出生率が比較的高い」と柴田さんは指摘します。