【解説】上皇后さま“血栓症”と診断 無症状「8割」同じ姿勢で長時間過ごしがちな今…予防法は?
上皇后さまが「右足の血栓症」と診断され26日、検査を受けられました。私たちも注意が必要です。
・深部静脈血栓症とは
・無症状が8割
・身近な原因
以上の3つのポイントについて、詳しく解説します。
上皇后さまは26日午前10時すぎ、皇居にある宮内庁病院に到着されました。
側近によると、上皇后さまは、先週、右足ふくらはぎの「深部静脈血栓症」と診断され、26日はその経過を見るための検査を受けられたということです。
上皇后さまが診断された「深部静脈血栓症」とは、どのようなものなのでしょうか?
人間の体には、末端から心臓へと血液を戻す静脈がありますが、足から戻る静脈に血の塊(=血栓)ができて、詰まってしまう病気が「深部静脈血栓症」です。
この病気の危険度は、血栓の状態によって違います。
新潟大学の榛沢和彦(はんざわ・かずひこ)特任教授によると、血栓はひざよりも下、ふくらはぎにできることが多いそうです。
ふくらはぎに血栓がある状態だと「末梢(まっしょう)型」と呼ばれ、リスクが低い、いわば初期の状態です。上皇后さまの場合も、血栓があるのはふくらはぎなので「末梢型」にあたり、薬物治療は受けていないということです。
血栓が大きくなり、太ももあたりまで伸びていくと「中枢型」と呼ばれリスクが高い状態とされます。というのも、この状態では、はがれた血栓が心臓に向かってしまうと、脳梗塞や、肺の血管が詰まる肺塞栓(そくせん)症を引き起こす可能性があるからです。肺塞栓症は、呼吸困難や、場合によっては心停止に陥るケースがあるため、非常に怖い病気ともいえます。
「末梢型」のうちに血栓ができたことを自分で気づきたいところですが、なかなか気づきにくいものだということです。
上皇后さまの場合は、定例の健康診断で行った血液検査をきっかけに判明した、ということですが、症状がある場合だと、片足が赤黒く腫れて痛みがあらわれるといった症状が出ます。軽い場合は、筋肉痛のような症状だそうです。
ただ、怖いのは、血栓ができても無症状のケースが8割ぐらいあるということです。症状がないまま血栓がはがれれば、ある日突然、呼吸困難になるという可能性もあります。
血栓ができる原因は一般的には主に長時間同じ姿勢でいることだとみられています。
よく知られる「エコノミークラス症候群」は、長時間座っていて血栓ができてしまい、その後、立った時に血栓が血液で流され肺を詰まらせてしまうものです。
注目されたのは、2004年の新潟中越地震の時です。この時、車中泊が原因でエコノミークラス症候群になり、命を落とした人もいました。
血栓症は、エコノミークラス症候群の前段階です。
血栓症になりやすい年代について、榛沢特任教授によると、だいたい50歳を超えるとリスクが高まる傾向があるそうです。
年齢を重ねれば重ねるほどリスクが高まっていくわけですが、新潟中越地震の時にエコノミークラス症候群で亡くなった人は40代、50代がほとんどだったということです。若い人も含めて、誰にでもリスクはあるということは覚えておく必要があります。
そして、注意したいのは、日常生活でも起こりうるということです。
今はコロナ禍で、何時間もリモート会議をしているとか、1つの部屋にこもって仕事している人もいると思うので、ぜひ気をつけてほしいところです。
エコノミークラス症候群について、座ったままでいることはもちろん、立ち続けていることも良くない、つまり同じ姿勢でずっといるのが良くないということです。
さらに、血栓ができる原因は1つではありません。水分不足も原因になります。
今は特に、暑い時期ですから、体から水分が逃げていきやすく、水分不足が引き金となって、血液がどろどろになるのもよくありません。血栓ができやすい状態の今の時期は、特に注意が必要だということです。
次のような予防方法があります。
・適度な運動
数分歩く程度の軽いものでもOKです。ずっと同じ姿勢でいる人は、途中に適度な運動をはさんでください。
ただ、仕事などで、どうしても長時間同じ姿勢でいなければならない人がいます。座っている場合には、座ったまま、つま先を上げたり、かかとを上げたりします。この時、できるだけ、ふくらはぎを意識してください。さらに、ふくらはぎを手でもむのもいいそうです。
これだけで、かなり予防につながるということです。
・水分補給
熱中症対策で意識している人も多いと思いますが、寒くなっても水分補給は忘れずにします。
・正しい食生活
バランスの良い食生活も大事です。
上皇后さまも現在、医師のすすめで水分を多めにとり、適度な運動をして過ごされているということです。
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今は、暑さや大雨で家の外に出られない、コロナ禍で長らく家にこもりがち、じっと動かずテレワーク…と、誰もがリスクの高いご時世です。予防が重要ですので、テレビを見る時も麦茶を飲みながらごらんください。
(2022年8月26日午後4時半ごろ放送 news every. 「知りたいッ!」より)