559人の患者に“着床前スクリーニング”
不妊治療を専門に行っている神戸市のクリニックが、体外受精させた受精卵の段階で染色体に異常がないかを調べる「着床前スクリーニング」を実施していたことが明らかになった。
「着床前スクリーニング」は、流産経験者が流産を繰り返さないようになどの目的で、体外受精させた受精卵の全ての染色体を調べて、異常のない受精卵だけを子宮に戻す不妊治療の一つだが、「命の選別」につながるなどの批判もあり、日本産科婦人科学会では実施を認めていない。
26日に開かれた日本遺伝カウンセリング学会で、神戸市の大谷レディスクリニックは、2011年から2014年までの間に、559人の患者に対し着床前スクリーニングを実施したことを発表した。559人の平均年齢は40歳で、全員、体外受精しても妊娠しなかったり流産した経験がある人だという。
大谷レディスクリニックによると、着床前スクリーニングを行って妊娠したのは246回で、このうち9.8%に当たる24回が、その後、流産したという。クリニックは、「流産率を下げるのには有効な手段だが、全ての人が出産できるわけではない」としている。
日本遺伝カウンセリング学会は、「認められていない着床前スクリーニングを勝手に行うのは問題だ」とした上で、「今後、関連学会で有効性や生命倫理について議論を重ねる必要がある」としている。