難民受け入れ、日本で少ないワケ 偽装も…
キーワードでニュースを読み解く「every.キーワード」。22日は「難民の受け入れ」について日本テレビ・小栗泉解説委員が解説する。
【シリアから欧州へ 難民47万人超】
今年、中東のシリアなどから、ドイツやフランスなど、ヨーロッパに到着した難民や移民は47万人を超えた。EUでは、難民を各国が、どう分担して受け入れるか、協議は難航している。
また、アメリカのケリー国務長官は20日、難民の受け入れ枠を現在の7万人から、来年度は少なくとも8万5000人に増やす、と表明。難民をめぐる問題は、今月末の国連総会でも主要なテーマとなる見通しだ。
そこで22日は、日本の難民受け入れの現状について考える。
【難民申請5000人→認定11人 日本の現状】
去年、日本に難民として認めて欲しいと申請した人の数は5000人だったが、実際、難民と認められたのは11人だった。海外メディアからは、日本の難民受け入れが少ないとの批判が出ている。
難民認定が厳しい理由のひとつに“難民”の定義がある。難民として認められるのは、「人種、宗教、国籍、特定の社会的集団の構成員であること、または政治的意見を理由として迫害を受けるおそれがある」ケース。これは、難民条約によって国際的に決められているのだが、日本は、これを他の国に比べて厳格に守っている。このため、シリア難民など「紛争」を理由に避難してきている人は、日本では基本的に難民とは認められないことになる。
難民認定が厳しい理由は、まず難民の定義を厳格に捉えているということ、そしてもう1つ、難民と偽った人たちが、日本に多く入って来ている「偽装難民」への対策がある。
【偽装難民とは?】
例えば、難民申請している人の中には、「借金が返済できなかったため、帰国すれば、債権者から危害を受けるおそれがある」といった申請理由をあげる人もいるという。お金の問題が理由だと難民の定義には含まれないのだが、実は、こうした申請は、日本で働くことを目的としている場合が多い。
というのも、日本では、2010年から、外国人が難民申請した場合、6か月たてば、自動的に日本で働くことができることになった。つまり難民と認定されなくても、再申請を続けていけば、事実上、日本で働き続けることができるようになっている。こうした制度を利用した難民ではない外国人、いわゆる「偽装難民」が、難民申請するケースが多くあるという。
【増える難民申請】
このため、ここ5年の難民申請数を見てみると、この制度が出来た2010年以降、徐々に増え始め、今年は6000人を超えると想定されている。申請者が増えるにつれて、その対応にも時間がかかる。
申請の処理にかかった期間を見てみると、申請者がおよそ1900人だった2011年には5.7か月だったものが、今年は8.2か月となっていて、申請数が増えるにつれて、その対応に時間がかかっていることがわかる。
これでは本当に困っている難民の許可にも時間がかかることになる。NPO法人「難民支援協会」の石川えり代表理事によると、「実際に、難民に認定された人の待機期間は平均6年弱になる。その6年もの間、厳しい生活を続けながら審査結果を待つことになる」という。
【難民認定の運用 見直しへ】
こうした実態を受けて法務省は15日、「偽装難民」を減らす対策を強化して、難民申請の処理を迅速化すること、そして、シリアなどの紛争を理由にした申請者に対しては、難民とは認められないものの、「紛争待避機会」として、日本での在留を許可する環境を整えることなど、難民認定の運用を見直すことを明らかにした。
【きょうのポイント】
きょうのポイントは「実態に即した支援」。今見てきたように、難民の受け入れを拡大することは、一筋縄で解決出来る問題ではない。ただ、行き場を失って困っている難民をいかに支援していくか、日本も傍観しているわけにはいかない。
難民認定だけではなく、在留許可や経済・人道支援など出来ることは何か、私たちも関心をもって、実態に即した支援を積み重ねていくことが求められている。